歩いて旅する南三陸。「みちのく潮風トレイル」南三陸ルート開通

青森県から福島県まで、約700キロのロングトレイル「みちのく潮風トレイル」。「南三陸ルート」の約38キロの開通を記念し、ウォーキングイベントが開催されました。満開のつつじが咲き誇る田束山から里山の入谷地区に抜けるトレイルコースの雰囲気を写真たっぷりでレポートします。

世界中で人気を集めるロングトレイル

「ロングトレイル」という言葉をご存知でしょうか?

健康と自然志向のライフスタイルへの関心が高まっていることを背景に、アメリカやニュージーランド、ヨーロッパなどでは、この「ロングトレイル」の整備が進み、多くの人々を惹きつけています。また、国内においても長野県と新潟県にまたがる信越トレイルなど、コースが次第に整備されてきています。

観光旅行などと異なり、ゆっくりと歩きながらその土地の自然に触れ合い、さらにはそこで暮らしを営む地域の人々と交流を育むロングトレイル。数時間のコースから数日、数カ月を要するコースもあるなど目的やスキルにあったコースを選べることから老若男女問わず人気を高めています。

南三陸のトレイルコースを楽しむ参加者

青森から福島までつながる「みちのく潮風トレイル」

「みちのく潮風トレイル」とは、青森県八戸市から福島県相馬市までの海岸線を中心に設定される700キロを超えるロングトレイルコースです。環境省が復興支援の目的で整備をすすめています。

その最大の魅力は、海の景観をダイナミックに感じるスポットが豊富にあること。複雑に入り組むリアス式海岸ならではの美しい景観、恵み豊かな三陸沖の漁場、その豊かな漁場を支える里山など、見どころがたくさんあります。

そこにある、森、里、川、海のつながりから生まれた美しい自然と、そこで紡がれてきた物語。厳しい寒さの冬に耐え、幾度も自然の驚異にさらされながらも、立ち上がってきた人々の暮らしに触れ、「人と自然」「人と人のつながり」を感じることができます。

コースのポイントには周辺環境を邪魔しないようにひっそりと目印がある

38キロに及ぶ「南三陸ルート」が4月に開通

現在「みちのく潮風トレイル」は、全700キロのルートのうち、現在500キロほど開通しています。宮城県内においては女川町、石巻市の一部がすでに開通していましたが、2017年4月30日に「南三陸ルート」の約38キロが開通しました。

「東北といえども700キロ移動すると楽しめる景観がまるっきり変わってくる。岩手の北部などは崖の上を歩くようなルート、岩手県南部から宮城県は半島を歩くようなルートが楽しめるのが特徴」と環境省職員の黒田和真さんは話します。

「南三陸ルート」は、気仙沼から石泉地区に抜けるポイントを起点とし、かつて修験者が歩いていた「行者の道」の登山道から南三陸最高峰の霊山「田束山」を経由し、のどかな里山の景観が広がる入谷地区へ。さらに志津川に抜け海岸線に沿って戸倉地区の景勝地・神割崎へとつながっていくルートです。複雑に入り組むリアス式海岸の海を楽しむだけでなく、豊かな山林を楽しむことができます。

田束山からは太平洋を一望できる
マップを片手にトレイルコースを楽しむ参加者

開通記念ウォーキングイベントを開催

5月21日(日)には「みちのく潮風トレイル開通記念ウォーキングイベント」(主催:南三陸町、環境省)と題したイベントが開催され、南三陸ルートの一部を体験しました。参加者は「すでに開通している他の『みちのく潮風トレイル』ルートも歩いたことがある」というベテランから、「数年ぶりに山にきました」という方まで、町内外から25名ほどの参加者が集まりました。

雄大な太平洋を眼下に望み、満開のつつじが楽しめる田束山山頂からウォーキングイベントはスタート。美しい新緑の山を下っていきながら、入谷地区を目指す約12キロの道のりを楽しみました。

満開のつつじを背に、田束山からウォーキングイベントはスタート
美しい新緑のもとではさまざまな草木や、生き物との出会いを楽しむことができる
町指定の天然記念物「千本桂」。根元から無数に株立ちしている様子が圧巻
イベントでは地域住民がおもてなしのお菓子をふるまった。こうした地域住民との交流もトレイルの魅力だ
山林を抜けると、豊かな里山地区へ。生活の知恵や暮らす人々のライフスタイルに触れることもできる

歩くことで気付く、南三陸の新たな魅力

「田束山からの景色は『お見事!』のひと言だし、道中もさまざまな草木があっておもしろかった」と感想を話す参加者。ゆっくりと歩きながら旅することで、普段気にしていなかった小さな生き物や花、かすかに聞こえる鳥の鳴き声などに気づくようになります。

歩いていると普段は見過ごしてしまうような小さな花にも気づくことができる。キンラン(上)、ニリンソウ(下)

四季の移ろいのなかで、日々姿を変えていく植物、大自然に生きる野生動物の姿。豊かな恵みをもたらす三陸の海。そして、南三陸に暮らす人々の知恵。東日本大震災の被害と復興の状況を垣間見ながら、歩いて旅する南三陸。これまで南三陸を訪れたことがない方はもちろん、何度も南三陸を訪れている方、そして南三陸に住む人々にとっても、歩くたびに新発見があるのが「みちのく潮風トレイル 南三陸ルート」なのかもしれません。

地域住民の協力もトレイルコースには欠かせない

動画でイメージ

インフォメーション

みちのく潮風トレイル HP
http://tohoku.env.go.jp/mct/

トレイルマップ(タイトル面)
トレイルマップ(マップ面)

●みちのく潮風トレイル 南三陸ルート 問い合わせ

南三陸町商工観光課 0226-46-1385(代表)
一般社団法人南三陸町観光協会 0226-47-2550

県立志津川高校に「震災資料室」完成。伝承の場へ活用

県立志津川高校に震災資料室が完成しました。発災直後、避難所として活用された学校の様子や資料、震災からこれまでの取り組みなどがまとめられています。今後は一般住民や視察、学校交流などで活用。震災の風化を防ぎ、次の世代へと語り継いでいく場をめざしています。

震災時、避難所として活用された志津川高校に震災資料室が完成

東日本大震災発生時、高台にあった県立志津川高校は避難所としての役割を果たしました。生徒はもちろん、近隣住民などが身を寄せ合い、不安な時を過ごしていました。震災翌日の報道で流れた志津川高校のグラウンドに大きく「SOS」と書かれた写真を覚えている方も多いかもしれません。

東日本大震災から6年がたち、町なかでは高台造成などの復興工事が進み、震災の状況を知ることは難しい状況になっています。そんななか志津川高校では空き教室を活用し、震災時の様子を伝える物品や震災後寄贈されたもの、震災からの志津川高校の歩みがわかるものなどを展示する資料室を設置しました。震災の記憶の風化を防ぎ、次の世代へ今後も語り継いでいけるように活用していくとのことです。

震災当時の貴重な資料が残されている

サッポロホールディングス(株)が「設備一式」を贈呈

この「震災資料室」設立にあたっては、サッポロホールディングス株式会社が大きな役割を果たしました。サッポログループが恵比寿ガーデンプレイス(東京都渋谷区)で2009年から毎年9月に開催している「恵比寿麦酒祭り」。

震災があった2011年からはこのイベントで販売した生ビールの売上相当額を東北復興の取り組みに活用しています。志津川高校生徒の取り組みに賛同し、また震災資料室設置の想いに共感したことから「震災資料室設備一式」を贈呈されました。

「サッポロホールディングスとしては、現地の人としっかりと話し合い、寄り添って、想いに共感したものに対して応援するという活動を行ってきました。そのなかで志津川高校の取り組みを支援することになりました。資料室は各地にあるけれども、ここの特筆すべきは、高校生自らが学び、経験したことを伝える場として活用していく、ということです。弊社の次世代育成、情報発信といった理念に合致していたことが決め手となりました」と話すのはサッポロホールディングス株式会社コーポレートコミュニケーション部部長梅里俊彦さん。

「せっかくできた施設なので、今後どんどん活用して、震災の教訓を伝えていける場としてほしい。これまでの活動を継続してほしい」と話しました。

資料室の設置はゴールではなく、スタート

「現在の高校生は、大震災発生当時小学校3年生から5年生でした。当時の記憶を少しでも後世に伝え、東日本大震災から学んだことを、未来に生きる人びとの教訓とできるようにと震災資料室が志津川高校内に設置されました」と話すのは志津川高等学校校長の山内松吾さん。

震災直後からこのような資料室を設置したいという思いがあったそうです。それが震災から6年以上たって、さまざまな支援もいただきながら空き教室を活用した資料室が完成しました。

「資料室の設置は、ゴールではなくスタートであると考えています。志津川高校の生徒たちや、地域の皆様とともにこの教室を共に育てていきたい」と期待を胸に抱いています。

感謝状を読み上げる志津川高等学校校長山内松吾さん

志津川高校では震災前から、志津川高校情報ビジネス科による「南三陸モアイ化計画」という南三陸町の活性化の取り組みを行ってきました。オリジナルのモアイ缶バッヂやストラップを製作・販売し、その収益金によって町民の足となる「モアイバス」を昨年12月に寄贈するなど、震災後にも地域に多大な貢献をしてきました。この資料室も「地域とともに」歴史を重ねていくことになるでしょう。

資料室を活用し、世界にメッセージを発信し続けたい

避難誘導や避難所運営の協力など志津川高校の生徒が発災時に果たした役割は決して少なくありません。開室式では、震災前の南三陸町の様子、震災発生時の志津川高校周辺の様子、震災後の志津川高校の取り組みなどが志津川高校生徒会のみなさんにより発表されました。

「震災後、全国、世界中の学校と交流を行ってきました。交流会では私たちが経験したことを語り継いできました。志津川高校では、今後も震災に関する取り組みを伝えていく義務があると思っています。今後はこの震災資料室を利用してメッセージを送り続け、震災を風化させないようにしたいです」と生徒らは意気込みを話しました。

志津川高校の震災後の取り組みなどを発表

資料室の開室式が開催された5月24日は昭和35年のチリ地震津波から57年目にあたる日です。地震や津波の被害を少しでも減らすために次世代へ語り継ぐ場となっていくことを期待しています。

写真や動画などが多く展示されている

スキルを活かして、町の描く未来に貢献!/佐藤和幸さん

南三陸に生きる⼈を巡り、⼀巡りしていく連載企画「南三陸ひとめぐり」。第13弾は、この春、南三陸町に移住をした佐藤和幸さん。スキルを活かし、南三陸の新プロジェクトの事務局を担う佐藤さんに迫ります。

法科大学院在籍中に東日本大震災が発生

南三陸町にこの春移住した佐藤和幸さん。福島県新地町の出身だ。大学は東北学院大学の出身と東北にも縁が深い。

「同世代の人が抱いているような『地元を出たい!』という想いはそこまで強くなかったですね。家業が八百屋をやっており、それを継ぎたいと思っていたくらい」と話す佐藤さん。大学卒業後は地元にある大手電力会社の発電所に勤めた。経理・財務・総務・防災危機管理などのバックオフィスを各種経験した佐藤さん。

「よりいろいろなことに挑戦してみたい」と会社の早期退職制度を使って退職。その後独学で行政書士の資格を取得したのち、さらに法律を学ぼうと法科大学院へと進学した。

行政書士として仕事をしながら司法試験の勉強をしていたときだった。東日本大震災が発生した。地元新地町も大きな被害に見舞われた。

「正直、勉強なんかしている場合ではない、と学校を休学しました」

震災後、行政書士のスキルを活かし各地で活躍

「自分になにができるのか」を考えていた時に出会ったのが、故郷福島県に関わる仕事だった。東京電力福島第一原子力発電所事故を受けての、原発被害者に対する損害賠償請求書の作成支援を行った。

故郷福島県で苦しむ人への想い、そして自らの行政書士としてのスキルを活かせる仕事に出会った佐藤さん。震災後の混乱のさなか、佐藤さんのもつ、経理、財務、総務、法務といったスキルは、誰しもが求めるものであった。それを一手に引き受けることのできる佐藤さんはまさに、引っ張りだこだった。

宮城県名取市の六次産業化モデルファーム「アタラタ」の立ち上げ支援、福祉施設や食品工場、温浴施設の立ち上げ、仙台で実店舗の企画立案、運営など、震災後各地で起こるスタートアップの右腕として活躍の場を広げていた。

今年2月、フィールドリサーチツアーで南三陸を訪れる

そんな折に出会ったのが、南三陸町だ。

「宮城県に縁があったとはいえ、南三陸町は非常に遠いところというイメージでした。実際に訪れたこともなかったですし」

今年2月に「フィールドリサーチツアー」として南三陸を訪れた。周ったのは南三陸の循環型の取り組みを行うキーパーソンたちだ。

かつて、大手電力会社で働いていたこともあり、震災がきっかけとなり再生可能エネルギーに興味をもった。そうしたときに、南三陸が町全体でめざす循環型の取り組みに出会った。

「正直、循環って南三陸に来るまで意識したことはなかったです。それでも、この町の人たちは当たり前のようにそれをやっている。それってすごいことだと思ったんです。

ツアーを通して出会った、熱い想いをもつ町民といっしょに仕事ができたらとても面白いのではないかと感じました」

ツアーでは南三陸の森里海の各フィールドを周った(提供:南三陸町移住支援センター)

南三陸に移住し、プロジェクトの立ち上げサポートを担う

わずか2カ月後、佐藤さんは南三陸に移住した。

「会う人みんな親切で、田舎特有の暮らしにくさなどは感じません。町自体に活気があり、やはりその活気を作っているのは、南三陸に生きるポジティブな人の雰囲気なんだろうなと感じています」

南三陸で立ち上がった持続可能な社会作りに挑戦するプロジェクト「Next(ネクスト) Commons(コモンズ) Lab(ラボ)南三陸」。ワイナリーの建設や、レストランの立ち上げ、無農薬無肥料でのお米の栽培、山の未利用資源を活用した事業など7つのプロジェクトがある。その一つひとつが南三陸の循環の輪に入っている。プロジェクトの成功は、すなわち、南三陸がめざす「持続可能な循環型社会」に近づくことを意味している。

佐藤さんはその事務局として全体のサポートを行う。

「私自身がプレイヤーになるというよりも、やる気ある人のサポートをするほうが楽しいんですよね。それぞれの足りないところに手助けできるようなプレイングマネージャー的な関わり方が理想です」

終始おだやかな口調で話す佐藤さんがもつ確かなスキル。頼もしい参謀を得たプロジェクトは、南三陸の目指す未来に向けて大きな一歩を踏み出した。

Next Commons Lab南三陸の事務局を担う株式会社ESCCAの山内亮太さん(左)と佐藤和幸さん(右)

インフォメーション

Next Commons Labの募集要項やプロセスの詳細は下記のHPをご覧ください。

南三陸

2017年05月30日/定点観測

南三陸町市街地の復興の様子を定点観測しています。戸倉地区、志津川地区、歌津地区の3箇所の写真を公開しています。

写真をクリックまたはタップすると大きくなります

戸倉地区

撮影場所 [38.642969, 141.442686

志津川地区

撮影場所 [38.675820, 141.448933

見晴台より北側

見晴台より東側

見晴台より南側

見晴台より西側

歌津地区

撮影場所 [38°43’5″ N 141°31’19” E

他の定点観測を見る

<5月31日放送>みなさんぽ

今週の「みなさんぽ」は、さんさん商店街の人気商品のひとつ果房山清の「たこプリン」をオープニングに取り上げ。本編では、いよいよ今週末に迫った「ひころマルシェ」についてウィメンズアイの中島綾子さんにお話しを伺いました。

オープニング

「さんさん商店街」を歩いていると、焼きたてのおいしそうな香りがふわっと漂うお店。果房山清さん。その香りの正体は、人気商品「たこプリン」でした。

焼きたてを食べられるこのお店では、大人気。焼きたてを買って、フードコートでつまみやおかず、小腹がすいたときの一品に大好評です。

インタビュー

いよいよ今週末に迫った「ひころマルシェ」。担当者のウィメンズアイ中島綾子さんに登場いただきました。

「ひころマルシェ」のコンセプトは”この土地で続く暮らし”。

楽しくおいしく健やかな暮らしを送ることを目指して地域の知恵を交換したりお子さんたちが元気に走り回れる遊び場があって、お父さんお母さんだけでなく地域の人たちが子育てを見守る雰囲気作りをしていきたいという目標のもと、開催されます。

聞き逃した方はradikoでお聞きいただけます

パソコンやスマホでラジオが聴けるradikoでは、過去1週間以内に放送された番組を後から聴くことのできます。残念ながら聞き逃してしまったという方はぜひこちらでお聞きください!

http://radiko.jp/#!/ts/DATEFM/20170531123000

<5月24日放送>みなさんぽ

今週の「みなさんぽ」は、行楽シーズン真っただ中、南三陸の景勝地「神割崎」からお送りいたしました。インタビューでは海の幸もたっぷりと使ったBBQを堪能、本編では今年度から始まった「手ぶらでキャンプ」の紹介をしてもらいました。

オープニング

南三陸の海の幸や肉など大好評のBBQを堪能しました!

日帰りでできる「手ぶらdeBBQ」もあります。

BBQセットの一例(一人前)

インタビュー

引き続き神割崎からお送りした本編。

フリーサイトからオートキャンプ場、コテージまでさまざまなキャンプスタイルを楽しめる神割崎キャンプ場に今年度から新たなプランが誕生しました!

その名も、「手ぶらでキャンプ」

手ぶらで来ても、テント、タープ、寝袋、BBQ用具、ご飯などがついてくる初心者にも安心のプランです。キャンプ経験者も重たい荷物を運んでこなくてもキャンプを楽しめる大好評のプランになっています。

テントをあければ、壮大な太平洋が目に飛び込んできます。大自然の中で日常とは違った素敵な体験をしてみませんか?

プラン料金:4才以上小学生以下4,000円 /  中学生以上6,000円(入村料、サイト使用料(フリーサイト)含む) ※お一人様の料金となります

さらに今なら新プラン誕生を記念して、モニター価格でご提供しています
なんと、おひとり様1,000円引き!(4月から6月末までのご利用の方限定)

詳しくは、神割崎キャンプ場HPをご覧ください

神割崎キャンプ場【手ぶらでキャンプ】プラン誕生!

聞き逃した方はradikoでお聞きいただけます

パソコンやスマホでラジオが聴けるradikoでは、過去1週間以内に放送された番組を後から聴くことのできます。残念ながら聞き逃してしまったという方はぜひこちらでお聞きください!

http://radiko.jp/#!/ts/DATEFM/20170524123000

 

歌津中学校と三井不動産が防災の取り組みについて情報交換

防災・減災教育に力を入れる南三陸町。町立歌津中学校では「歌津中学校少年防災クラブ」を結成し、防災教育を推進しています。修学旅行先の東京で三井不動産を訪問し、防災の取り組みについて情報交換を行いました。

きっかけは歌津中学校で行われた避難所運営訓練

2017年4月20日朝、南三陸町立歌津中学校3年生の生徒16人が、齋藤先生の引率により、東京・日本橋にある三井不動産の「日本橋一丁目三井ビルディング」と、三井不動産が直営する「わたす日本橋」を訪れました。修学旅行の一環で、三井不動産の防災の取り組みについて学ぶとともに、歌津中学校の防災教育について発表することが目的です。

歌津中学校と三井不動産のご縁の始まりは、2016年10月に歌津中学校で行われた避難所運営訓練。以前より南三陸町と交流している「わたす日本橋」のプロジェクトメンバーと、三井不動産の防災対策チームが、訓練に参加したことがきっかけでした。

避難所運営訓練は、中学生たちが大人になったという想定のもと、生徒たちが主体となって避難所を立ち上げ、避難民の受け入れや対応、負傷者の救助、炊き出しなどを自分たちで行うという本格的なもの。わたす日本橋および三井不動産のメンバーは、町に慣れていない避難民の役で参加しました。その際に、先生たちから「修学旅行で上京する際に、防災の取り組みについて情報交換をさせてもらえないか」という相談があり、実現に至ったのです。

2016年10月14日に行われた避難所運営訓練の様子。担架で運ばれているのは、ケガ人の役を務めた「わたす日本橋」プロジェクトメンバーの安藤佑治さん

防災センターや屋上など、三井不動産の防災対策を見学

当日はまず、三井不動産が直営する、南三陸町とのご縁がきっかけで生まれた情報発信・交流拠点「わたす日本橋」を見学。それからコレド日本橋が入る日本橋一丁目三井ビルディングに移動し、映像を見ながら、三井不動産の歴史や事業、防災の取り組みについて説明を受けました。

三井不動産の歴史を紹介する映像を見る歌津中学校の生徒たち

続いて、地下4階の非常用発電設備を見学し、地下1階にある防災センターへ。ここでは毎日防災訓練を行っており、この日は火災訓練をデモンストレーションしてくれました。最後に、ビルの屋上にある緊急ヘリ用のホバリングスペースを見学。生徒たちは、屋上からの眺めに感嘆の声を上げつつも、担当社員の説明に熱心に耳を傾けていました。

地下4階、非常用発電設備の見学前に説明を受ける生徒たち
たくさんの計器やモニターが並ぶ地下1階の防災センター
防災センターで実際に行われている火災を想定した訓練を見学
20階建て、高さ121mの日本橋一丁目三井ビルディングの屋上。足元を覗き込んだり、風景を見回したりと、興奮が隠せない生徒たち

歌津中学校の防災学習についてプレゼンテーション

一通り見学を終え、最初の会議室に戻り、次は生徒たちが発表する番です。代表者2名が、用意していたスライドを使い、歌津中学校の防災学習についてプレゼンテーションを行いました。まず、三浦愛海さんが、歌津中学校防災学習のねらいや「歌津中学校少年防災クラブ」、防災学習の概要などを説明。続いて三浦百々香さんが年間を通して実際に行う活動内容を紹介し、最後に再び三浦愛海さんが、たくさんの写真を見せながら避難所運営訓練について説明しました。

歌津中学校では、2011年11月に全校生徒から成る「歌津中学校少年防災クラブ」を発足させ、総合的な学習の時間などを使って防災教育を推進している

発表者の三浦愛海さん(上)と三浦百々香さん(下)。三浦愛海さんは、防災クラブの有志で組織する代表委員のメンバーだ

互いの防災の取り組みについて理解を深め合う

発表後は質疑応答が行われ、生徒たちからは「避難訓練でリーダーとなる人はどうやって決めるのですか?」「災害時に避難者をどのくらい受け入れることができるのですか?」「津波対策は何か行っていますか?」といった質問が出ました。また三井不動産側からも「中学校を卒業した後も防災学習を行う機会はありますか?」などの質問があり、それぞれの防災の取り組みについて理解を深めました。

三井不動産の防災の取り組みについて質問をする生徒
「今日学んだことを持ち帰って、これからも地域の安全を高めるための活動を続けてください」と締めくくりの挨拶をする三井不動産 ビルディング本部 日本橋一丁目オフィスの佐伯所長
「いろいろと見せていただいてとても勉強になりました。今日学んだことを学校のみんなと共有し、一人ひとりが防災意識を高めていきたいと思います」と、生徒を代表してお礼を述べる阿部彩佳さん

生徒たちは、今回の訪問で多くのことを学んだ様子。今秋も行われる予定の避難所運営訓練をはじめ、防災学習へ意識がさらに高まったようでした。

「わたす日本橋」の前での集合写真。店名に込められた“東北と日本橋をつなぐ橋渡しに”という想いが、歌津中学校とのご縁にもつながった

集え、起業家!Next Commons Lab南三陸が始動。

持続可能な社会をつくるプロジェクト「Next Commons Lab」が南三陸町で始動! チャレンジする起業家を募集します。どのような取り組みなのでしょうか? 5月14日に東京・銀座で行われた説明会におじゃましました。

「Next Commons Lab」って何?

人口減少、長時間労働、格差の拡大……。急速に変化する社会において、さまざまな問題が顕在化しています。それらを解決するための方策がいろいろと取られていますが、なかなか変わらないのが現実。そうであれば、今あるものを変えようとするのではなく、「社会構造そのもの=オペレーティングシステム(OS)を新しくつくろう!」 ――この発想が「Next Commons Lab」(以下NCL)のスタートでした。

さまざまな領域で活動するメンバーが集まり、プロジェクトを通じて地域社会と交わりながら、“ポスト資本主義社会”の新たな共同体をつくる。そのプラットフォームとなるのがNCLです。具体的には、「地域おこし協力隊」の制度を利用して起業家を誘致し、個人・自治体・企業の協働により、地域においてイノベーションを多面的に進めることをめざしています。

NCLは、遠野を皮切りに、南三陸、奥大和など、今年中に全国10か所で始動予定。2020年までの3年で、100拠点・1000人の起業家を創出することが目標です。NCLに参画するということは、単なる起業ではなく、全国で水平展開するネットワークに参画するということなのです。

第一号NCLが立ち上がった遠野では、83名がエントリーし、現在15名がラボメンバーとして活動中。南三陸では、「あらゆる資源が循環する社会」をテーマとして掲げ、地域資源を活用したプロジェクトを担う10名の起業家を募集します。

NCLの全体像について説明する「Next Commons Lab」代表の林篤志さん

「Next Commons Lab南三陸」のめざすものは?

NCL南三陸は、南三陸特有の豊富な海洋資源や森林資源、そして東日本大震災とその復興の過程で地域に蓄積されたさまざまなリソースを活用し、それらの資源が循環する持続可能な社会づくりをめざしています。

NCL南三陸のビジョンを語る事務局の山内亮太さん(株式会社ESCCA代表)

NCL南三陸のビジョンは、「すべての生き物が活き活きと育つ持続可能な環境・自然循環型社会」というもの。これは、「森・里・海・ひと いのちめぐるまち 南三陸」という、第2次南三陸町総合計画で打ち出された町の将来像にもとづいています。NCL南三陸では、上記のビジョンを実現するため、アカデミックな要素も取り入れながら、起業家とともにプロジェクトの方向性を定め、事業創造を推進していきます。

循環型の取り組みをめざす南三陸のプロジェクトの相関図(引用:NCL南三陸WEBサイト)

NCL南三陸:森のプロジェクト

NCL南三陸では、8つのプロジェクトで10名の起業家を募集します。“森”に関連するプロジェクトは次の3つ。

①山からつくるまちのプラットフォーム

FSC認証の南三陸杉を活用して、小型店舗用のモジュールハウスを開発。建築家の隈研吾さんがバックアップし、1年目は隈研吾都市建築設計事務所にてインターン。

②エナジーフォレスト 森の力を活かしきる1

ペレットエネルギーの普及と低コストストーブの開発に挑戦し、エネルギーの地産地消を目指す。

③エナジーフォレスト 森の力を活かしきる2

杉の有効成分で新しい商品を開発するなど、山の素材の新たな可能性を事業化。

プロジェクトパートナーとして①~③で一緒に事業を立ち上げる、合同会社MMR代表社員の佐藤太一さん(写真提供:一般社団法人南三陸研修センター)

NCL南三陸:里のプロジェクト

次に、“里”に関連する3つのプロジェクトを見ていきましょう。

④サスティナブルワイナリー

南三陸産のブドウでオリジナルのワインを開発し、森里海を連携させた食文化を創造。1年目は秋保ワイナリーでインターンを行い、ブドウの栽培から醸造、販売までを学ぶ。2020年に南三陸町にワイナリーをつくることをめざす。

「南三陸ワインプロジェクト」は今年4月にワインブドウ植樹祭を開催。500本もの苗木を全国から集まったボランティアとともに植樹した(写真提供:南三陸ワインプロジェクト)

⑤オーガニック3.0

無農薬ササニシキの栽培をベースに、オーガニックな農業経営モデルの確立をめざす。株式会社docomoとの連携により、ICT活用による低コスト&低リスクの有機栽培にチャレンジ。

内陸部に広がる里山をフィールドに持続可能な農業をめざす(写真提供:一般社団法人南三陸研修センター)

⑥巡る風土料理レストラン

循環型の食に関する取り組みを集約・発信するイタリアンカフェ・レストランをつくる。ASC認証の牡蠣やオーガニック農産物など、南三陸の素材を使用した独自のメニュー開発も。モジュールハウスやワイナリーのプロジェクトとも連携し、新たな南三陸の食文化の拠点作りに挑む。

ASC認証を取得した牡蠣(写真提供:一般社団法人南三陸研修センター)
1年目は、山形県鶴岡市のイタリアンレストラン「アル・ケッチャーノ」のオーナーシェフ、奥田政行さんのお店でインターンを行う。奥田さんは、5月14日の説明会で特別講演を行った
Special Kick Off Eventでは奥田シェフの手により、南三陸の素材がおしゃれにイタリアンに変身した。写真は「ホヤとシドケ」

NCL南三陸:その他のプロジェクト

その他のプロジェクトとして、サステナビリティセンターと自由提案枠があります。

⑦サステナビリティセンター

持続可能な地域社会をつくるための研究センターを立ち上げ、森、里、海、まちの連関や、地域資源の強みを科学的・経済学的な研究アプローチで調査・解明。NCL南三陸の各プロジェクトの推進サポートも行う。

海のイメージが強いが、森里海のそれぞれの資源が豊富にある南三陸町(写真提供:一般社団法人南三陸研修センター)

⑧プロジェクトの自由提案

設定された①~⑦以外で、独自のプロジェクト・事業計画を提案。NCL南三陸のビジョンに沿う内容で、独自の視点・経験・技術と、南三陸の地域資源やネットワークを活用してプロジェクトの設計を行う。(例:南三陸杉の高付加価値化、牡蠣殻の有効活用、インバウンドなど)

説明会では、各プロジェクトの紹介後に、関心のあるテーマに分かれて質疑応答の時間が設けられた

地域の未来をともに創造する仲間を募集!

NCL南三陸では、以上8プロジェクトで10名の起業家を募集しています。説明会には、「自分でワイナリーをやりたい」「日本の伝統文化を広めたい」「都会と地域の人材マッチングを手がけたい」など、さまざまな志をもった人が参加しており、質疑応答で各プロジェクト担当者に熱心に質問していました。

しかし、なかには「興味はあるけど経験がないので…」と不安な様子の人も。そんな人に向けて、事務局の山内さんは「バックアップ体制が万全なので、未経験でも大丈夫ですよ」と話します。

「大切なのは情熱と継続性。新しいチャレンジは大変なこともあるでしょうけれど、プロセスを楽しんでほしいですね」と山内さん。

また、NCL代表の林さんは、「明確なビジョンとパッションがあり、自分で何かをつくっていくことにワクワクできる人を求めています」と呼びかけました。

プロジェクトパートナーと直接話せたことで、「一歩踏み出す決心がつきました!」という参加者も

各プロジェクトの募集について

仮エントリーいただいた方に本エントリーのご案内をお送りします。

また、エントリーにあたっては各プロジェクトの方向性を自由に解釈、アレンジして自分なりの企画書にして提出していただくことも可能です。

1次募集のエントリー締め切りは5月31日(⑥「巡る風土料理レストラン」のみ5月21日)。応募の詳細はウェブサイトで確認できます。「南三陸に新しい価値を生み出し、ワクワクするまちを一緒につくる」ことに興味のある人・共感する人は、ぜひ検討を!

募集要項やプロセスの詳細は下記のHPをご覧ください。

南三陸

<5月17日放送>みなさんぽ

今週の「みなさんぽ」は、オープン以来大人気となっているハマーレ歌津のサプライズのひとつ、マルアラの「バウムクーヘン」の試食から始まりました。インタビューは4月30日に開通した「みちのく潮風トレイル」のコースの一部を、南三陸海のビジターセンターの大渕香菜子さんとともに歩きました。

オープニング

オープニングは丸荒及川商店から始まりました。

伊里前商店街のときから新鮮な海の幸や水産加工品がズラッと並び、好評だった本店。なんとハマーレ歌津のオープンを機に、「バウムクーヘン」を始めたのです。

デパ地下のようなおしゃれな店内には、甘~い香りがあふれています。ぜひみなさんも足を運んでみてくださいね!

インタビュー

環境省が整備する青森県から福島県までのロングトレイル「みちのく潮風トレイル」

その南三陸ルートが4月30日に開通を迎えました。

山も海も楽しめる南三陸の自然の魅力について、「南三陸海のビジターセンター」の大渕香菜子さんに紹介してもらいました。

南三陸町の森林の魅力について
「海岸線から常緑樹林があって、関東の山だと、上にいかないと見られない森林が、海のすぐ近くの山で広がっていること。コンパクトに植生の変化が見られるのが魅力だと思います」と教えてくださいました。

聞き逃した方はradikoでお聞きいただけます

パソコンやスマホでラジオが聴けるradikoでは、過去1週間以内に放送された番組を後から聴くことのできます。残念ながら聞き逃してしまったという方はぜひこちらでお聞きください!

http://radiko.jp/

南三陸の産品も常時出品。巣鴨にアンテナショップオープン

東北の特産品販売と地域の“人・物・町”をつなぐ、アンテナショップ「座・ガモール」が5月14日、西巣鴨にオープンしました。南三陸町のこだわりの産品も常設されるなど、都心にいながら東北を楽しめる空間として期待されています。

6市町が連携してアンテナショップを運営

「座・ガモール」を経営するのは、大正大学と巣鴨地域の3商店街が連携して設立した「一般社団法人コンソーシアムすがも花街道」。

宮城県南三陸町をはじめとして、宮城県登米市、山形県最上町、山形県庄内町、山形県新庄市、山形県長井市の6市町が参画する共同アンテナショップです。都電荒川線「庚申塚駅」から徒歩1分、JR巣鴨駅から徒歩15分ほどにあるお店には、約300アイテムもの地域産品が並び、東京にいながら地域の旬な味わいを楽しめる場所となっています。

豊富な海産物や豊かな野菜。食べ継がれている郷土料理や、ご馳走、お茶っこで楽しまれるお菓子など豊かな東北の台所の逸品が勢ぞろいしています。

さらに、店内奥にはカウンター席も。近いうちに、東北の地酒とつまみに舌鼓を打ちながら「ちょい飲み」を楽しむことができるようになるとのことです。

店内では各地のプロモーション映像など地域の魅力を伝えるための工夫が凝らされる
県をまたいでセレクトされている商品はそれぞれ特性があり、見ているだけでも楽しくなる
お土産としても大好評の南三陸の海産物は初日から大人気

大正大学の学生がショップ運営に参画

この事業は、昨年度開設された大正大学地域創生学部の学生のフィールドワーク(地域実習)活動の場として産学共同で推進していくものです。実際に地域に滞在しながら学んだことを発信していく場としても期待されています。学生自身が、売り子やレジ係を担当するのはもちろんのこと、企画や経営にも積極的にかかわっていく予定です。

単なるアンテナショップとしてではなく、商品が生まれた背景や想い、つながりなど地域資源を総合的に発信していき、「地域ブランド化」を推進する拠点となることが目標とされています。さまざまな地域に赴き、学び、活動する大正大学地域創生学部の学生たちの活躍に期待がかかります。

元気な大正大学の学生とのコミュニケーションもお店での楽しみ方のひとつ

大盛況だったグランドオープン

大きな期待を背に、ついに動き出した「座・ガモール」。5月14日に開催されたオープニングセレモニーには、各地の代表者が集いました。南三陸の最知副町長も、巣鴨のゆるキャラ・すがもんとともにお客様をお迎えしました。

オープニングセレモニーに駆け付けた最知明広副町長

店頭には来店サービスのカーネーションと100個限定の福袋が用意されました。オープンと同時に地元の女性客がつめかけ、福袋は一時間弱で売り切れてしまうほどの盛況ぶり。

年間800万人もの人が訪れるという、巣鴨の商店街。通称「おばあちゃんの原宿」と言われた巣鴨ですが、近年はそのレトロな商店街の雰囲気に誘われてか、若者や外国人が目立つようになるなど、人の流れに変化が見られます。

そんな巣鴨の商店街の一角にある「座・ガモール」が、東京の下町から東北への窓口として愛されるお店になっていくことを期待しています。

インフォメーション

座・ガモール

  • 所在地  東京都豊島区西巣鴨2-7-9
  • 電話番号 03-6903-7067
  • 営業時間 11:00~18:00
  • 定休日  水曜日

 

●アクセス

都電荒川線「庚申塚」駅より 徒歩1分

都営地下鉄三田線「西巣鴨」駅A1出口より 徒歩8分

都営地下鉄三田線「巣鴨」駅A3出口より 徒歩12分

JR「巣鴨」駅より 徒歩15分

 

すがもプロジェクト情報サイト「すがもかも」

http://sugamokamo.com/