南三陸町の海鳥の不思議!第27回南三陸自然史講座

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海鳥について解説を受ける参加者の皆さん

南三陸町の海鳥に関する講座が開かれ、南三陸町出身の佐藤賢二さんによる研究結果が報告されました。普段何気なく見かける鳥たちはどこから来て、町のどこで生活しているのでしょうか。実は知らなかった「海鳥にとっての南三陸」について深く知る機会となりました。

観測が困難な海鳥たち

1月18日(木)に南三陸の海鳥についての講座が生涯学習センターで開催され、講師である佐藤賢二さんによって多くの興味深い情報が提供されました。実は南三陸地域での海鳥の観察は難しく、特定の場所で確実に見られるというわけではないためその存在場所は未だ不明確です。「南三陸の志津川湾海溝は暖流と寒流がぶつかることで良好な漁場となっていますが、海鳥が集まるとされる場所の特徴が南三陸町の志津川湾海溝には見られません。」生息場所や観測条件が難しいなか、佐藤さんはどのようにして研究を進めたのでしょうか。

志津川湾で見られる海鳥を解説する佐藤さん
この日の参加者は町内外合わせて約20名

変化する生息区域

講座では、主要な海鳥の種類やその特徴についても詳細に説明されました。ミズナギドリ類は比較的よく見られ、その中でもオオミズナギドリが最も一般的で年間を通じて観察されています。

目にしたことはあるが名前までは知らなかった鳥たちが数多くいました

アホウドリ類やウミツバメ類も南三陸で観察されるが、特にウミツバメの行動については日中の行動が不明瞭で、沖に船で出ても見つからないこともあるそうです。この点について佐藤さんは「天敵であるカモメに食べられないよう、遠くに行っているのかもしれません。また、地球温暖化の影響なのか昔は見られなかった時期、種類の鳥も南三陸町で確認することが増えました。」と説明し、鳥同士の生息範囲や行動の把握も難しいことが報告されました。

観察のための新たな取り組み

その後、南三陸での海鳥の観察方法についても言及され、志津川湾では海鳥が見かけにくいため餌を使用して海鳥を誘引する方法を実施。すぐに効果はでなかったが2時間もすると130羽近いアホウドリが集まってきたという報告がされました。

餌に釣られ瞬く間に集まったアホウドリ

「観察して分かったこととして、他の鳥(カモメなど)が餌に来るのを見て、アホウドリが集まったこと、えびせんなどはアホウドリにとってはあまり美味しくなかったこと、アホウドリはサメの肝に一番集まるが入手が困難でさらに非常に臭いので注意が必要でした。」当時を振り返り、佐藤さんは餌の有用性と扱いの難しさに苦労したと話します。

未開拓領域の多い自然環境

さらに、南三陸地域での海鳥の繁殖に関する問題点も議論されました。特に、ウミツバメとオオミズナギドリの営巣範囲が重なり、繁殖地の競合や環境への影響が懸念されていることが明らかに。

「生息区域が最南、最北のものが多いがそれらがここにいる条件すら分かりきっていません。調査を進めたいのですがそれが難しい理由が多くあり、簡単に解決できるものでもありません。」

生息分布もわかる範囲で細かく示され、昔とは異なる時期に見られることも分かりました。

そんな中でも佐藤さんは南三陸町が秘めている可能性として次のように述べました。「南三陸町では他の海域で海鳥が集まるとされる条件とは合わなくても海鳥がいる。これには南三陸町特有の条件、例えば浅いところで暖流と寒流が交わるなどが可能性としてあります。また、海鳥の繁殖地の多くは無人島で、町内には数多くの無人島があるため繁殖地としてのポテンシャルも高いです。」

一概にカモメといっても種類によって生息区域は大きく異なる
素人目にはとても分かりづらいが実は多様なカモメたち

佐藤さんが挙げた調査の難しい点としては、船が必須であること、島への上陸許可などの申請、そもそも島が岸壁のため船付場がないなどがありました。加えて、海鳥の繁殖を阻害してしまうドブネズミが椿島でも観測され、鳥以外の植生物への影響も懸念されます。そのためにも生息状況の調査が必要だと強く訴えました。

まだまだ調査の壁が厚い状況

多くの謎と魅力が残る南三陸の海鳥

最後に参加者との質疑応答のセッションでは、ドブネズミが南三陸町内の海鳥の繁殖地に影響を与えている可能性や、海鳥の繁殖地がなぜ地下に作られるのかといった疑問について議論されました。これらの情報は、南三陸地域における海鳥の生態やその保護に向けた取り組みを理解する上で非常に重要なポイントで、佐藤さんらも原因と実態の究明のために少しでも多くの調査を実施したいと述べました。

ウミネコとカモメの現状について

研究地としてまだまだ未知の部分が多い南三陸ですが、これらが解明されたときに南三陸町として新たな魅力になることが期待されています。

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