11月4日(土)に松原公園にて町内の小中学生を対象にしたマラソン教室が開催されました。講師として仙台大学の陸上部の学生とコーチが参加し、子どもたちは本格的な練習と楽しく走る経験が出来ました。
12年前からの約束
秋の寒さが少し感じられる11月4日(土)。志津川地区の松原公園にて、小学生と中学生の部に分かれてマラソン教室が開かれました。マラソン・陸上好きな小学生12名と中学生7名が集まり、講師として仙台大学陸上部駅伝チームの大学1年生3名と川中コーチがこの日のために駆けつけました。
このマラソン教室は南三陸町総合型地域スポーツクラブ主催で、クラブのスタッフを務めるホップキッズクラブ南三陸体操教室の阿部純子さんが仙台大とのご縁を繋いでくれました。川中コーチと阿部さんは仙台大学時代の先輩と後輩。卒業後東日本大震災をきっかけに繋がりました。「あの時、純子先生と約束したんですよ。子どもたちに陸上教える機会があれば駆けつけるよって。10年以上経ってしまったけれど、こうして開催出来て本当に嬉しいです」。川中コーチと阿部さんとの間でずっと温められていた約束が12年の時を経て果たされることになったのです。
マラソン教室小学生の部
まずは小学生の部からスタート!元気よく挨拶をして準備運動を念入りに行います。
ウォーミングアップとしてタグラグビーをすることに。大学生は川中コーチから「本気で追っかけていいぞ」と言われつつも「いやいや小学生が相手ですし大人気ないですよ」と余裕の表情ですが、始まってみると小学生の全力ダッシュに追い詰められる場面が多数。肌寒い気温だったのですがすでに軽く息切れするくらいには身体が温まったみたいです。
ここからが本番。大学生からラダーやミニハードルを使った練習を教わり、脚の動かし方やリズム感を鍛えます。はじめてのメニューにも関わらず、1回、2回と取り組むうちにどんどん動きも良くなってきました。大学生も普段コーチから言われている指導方法を子ども達向けにアレンジしつつ、見本を見せながら楽しく教える経験値を積んでいきます。
覚えた動かし方を忘れないうちにグラウンドを周回して身体に馴染ませます。「自分のペースでいいからね!」という阿部さんと川中コーチから言われますが、1人がダッシュし始めるとあっという間にみんなで全力ダッシュ!2〜3周どころか4周目に入る子もいて、走ることがより楽しくなったのが伝わってきました。
集まった保護者からは「うちの子は走ることが大好きなので他のスポーツ教室には参加していませんでした。こういう機会が定期的に続いてくれると嬉しいです」と笑顔で走るお子さんを見て話してくれました。
マラソン教室中学生の部
小学生の部が終わり、一息ついて中学生の部が始まりました。
参加者は歌津中学校の生徒7名で、それぞれ部活はバラバラですが走ることを学びたい!とモチベーションがなかなか高いメンバーが集まりました。
中学生のメニューはミニハードルを使った練習と、走る際の股関節の動きや足の着地を意識したトレーニングを教わります。教えてくれる大学生にアドバイスを求め質問をするなど積極的な姿勢が見えました。
最後は大学生、川中コーチも混ざっての襷リレー対決をすることに。初めて本物の襷を見た中学生たちは歓声を上げ大興奮。そして襷を目にするだけで喜ぶ中学生を見て思わず笑みがこぼれるコーチ陣。「襷を見るだけでこんなに喜んでくれるなんてね。見るだけじゃなくて実際にこれを使って走るよ!」川中コーチや大学生から襷の掛け方や渡し方、そして混合チームを作るじゃんけんが行われいよいよ本番です。
手加減なし!全力疾走した襷リレー
走る順番を決めていよいよ第1走者のスタートです。手加減無用、大学生も本気で走ります。「手を抜かずに本気で走ることで、子どもたちに“こんなに速く走れるんだ!”と思ってほしいですね。ガチンコでやることでやる気の底上げに繋がったら嬉しいですが、負けちゃったらどうしましょう」と競争することの意味を語りつつも、自身がアンカーになったことを少し不安に思う川中コーチですが、各チーム大学生と中学生が交互に走るため勝負は最後まで分かりません。
そして待ちに待ったアンカー対決。序盤はリードしていた川中コーチでしたが最後の最後に逆転負け!しっかり本気で向き合ったことで、どのチームも全力で走る楽しさを味わうことが出来ました。最後の組がゴールするまで残りのチームみんなで応援する姿も見られ、ただ走ること以外にも大事なスポーツマンシップや相手へのリスペクトを忘れないことを学べたのだと感じました。
いつか同じユニフォームを着て。
今回のマラソン教室に大学生を連れて来たことについて川中コーチは「学生にとって、ほんといい経験ができました。自分が不自由なく走れる環境下で、思い切り走れる。幸せな事やありがたいという事がわかったと思います。大事な事は、継続していく事。走る事だけでなく、身体を動かす事が気持ちいいとか、楽しいってつながっていってくれれば、うれしいです」と話してくれました。普段なかなか接することのない年代と一緒に走ることや、勝ち負けを抜きにして陸上に触れる機会としてとてもいい時間になったそうです。
大学生らも「初めて来ましたが今日1日での子どもたちの成長にびっくりしました。継続的に訪れたいなと思います」と話し、この後は町内で美味しい海鮮を食べるのを楽しみにしていました。
参加した中学生らを普段から見ている阿部さんは、偶然にも仙台大陸上部のジャージの色と中学生らが来ていたシャツが同じ色だったことに注目し「もしかしたらここから仙台大に進む子が出てくるかもしれないし、未来の後輩だと思ってこれからもぜひ一緒に練習できる機会を作れればと思います。これを機に町内にまだない陸上クラブを作ってみたいなと思うようになりました」と、自身が繋いだ襷を受け取る子どもたちの未来を作っていくことを新たな約束として刻みました。