南三陸 里山の恵み 4season 〜夏〜

南三陸には、海だけでなく自然豊かな里山もあります。町の三方を山に囲まれ、一方は海に面しているため、町に降った雨はすべて町内の山や大地を通り、志津川湾へと流れていきます。豊かな海をつくる源となっている南三陸の里山。そんな里山の魅力を、シーズンごとにお伝えしていきます!第二弾は夏です。

南三陸 里山の恵み 4season 〜春〜

わたしの夏は梅の実狩りから始まります。

6月終わり〜7月頭頃、近所のおんちゃんちの梅の木3,4本から梅の実をもいできます。

とってきた梅は、ヘタを1つずつ丁寧に取り、梅ジュース、梅酒、梅干しにします。

梅ジュースは、梅と氷砂糖を交互に重ねしばらく放置。

梅酒は、梅と氷砂糖を交互に重ねたところに焼酎をいれ放置。

梅干しは、梅ジュースや梅酒より少し黄色く熟した梅を使い、5日ほど塩漬けにしてしわしわになった梅を、塩揉みした赤紫蘇と漬けます。しばらくつけた後、天日干しをして、また紫蘇と漬ける。これ。3回ほど繰り返して梅干しの完成!

赤紫蘇は塩で揉んだ後に、少し梅の実を入れてもむと、とっても鮮やかな赤になります。

昔の人は、どうやって梅干しづくりを考えたんだろう。自分たちで考えながらやっていたと思うと、昔からのこの習わしに感動します。

お母さんに「なんで面倒なのにこんなに毎年やるの?」と聞くと、

「都会は買えばなんでもあるけど、田舎はお店も近くにないし、あるものを有効に食べるためには自分たちで作らなきゃ」と話してました。

自然にあるものを、自分たちで加工して、おいしく1年中食べる。素敵な風習です。

夏の田んぼと生きもの

5月下旬に植えた稲は、夏に青々と大きくなります。

南三陸の田んぼは生きものが多くいます。トンボの羽化する瞬間を見ることができたり、アカハライモリを見つけたり。子どもたちと一緒に、地域の環境を生きものを通して一緒に勉強できます。

 

6月の終わり、山際の水辺に行くと、小さいふわふわとした明かりが舞っています。ホタルが飛んでいるのです。

また、入谷地区にはまだザリガニがいません。どこからも持ち込まれていないからです。

そして夜は、カエルの大合唱。いろんな種類のカエルが、たくさん鳴いています。

豊かな自然が守られ、維持されているのです。

 

夏野菜、果物

多くのおうちで夏野菜が育てられています。

トマト、なす、きゅうり、などなど。もらいものだけで数日暮らせます。

地元で作られたもの、作った人の顔がわかる野菜は本当に美味しいです。

また、入谷地区では桃も旬を迎えます。薄いピンクとクリーム色のつるんとした桃。

木から採ってそのまま食べたときの感動は忘れられません。とってもジューシーで、皮ごとかじれます。

夏ネギ

南三陸の新たな名産として、「南三陸ネギ」が栽培されています。

ネギの旬は冬ですが、比較的涼しい南三陸では、夏でもネギが作られ、一年中栽培されています。中でも夏ネギは、畑の景色が最高です。青と緑のコントラスト、青い海を背に、まっすぐ伸びて育つネギはかっこいいです。

台風に負けてしまうこともありますが、ネギは一度折れてもまた自力で真っ直ぐに戻ります。

そんな南三陸のネギは、他のネギより甘い!!!丸焼きにして食べるのが最高に美味しいです。

自然の生命力を感じられる季節

南三陸の夏と言えば海!どこまでも続く青い海と空。最高の眺めです。

その海に流れる水の源となっている里山の自然を最高に感じられるのも夏です!

青々と生い茂る草木と、生き生きと命が輝いている生きものたち。

生命力をたくさん感じ取ることができる季節な気がします。

 

2021年2月28日/定点観測

南三陸町市街地の復興の様子を定点観測しています。戸倉地区、志津川地区、歌津地区の3箇所の写真を公開しています。

戸倉地区

撮影場所 [38.642969, 141.442686

パノラマ

志津川地区

撮影場所 [38.675820, 141.448933

歌津地区

撮影場所 [38°43’5″ N 141°31’19” E

パノラマ

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大正大学生による震災追悼イベント オンラインで開催

震災から10年が経ち、復興が進む一方、当時の記憶の風化も危惧されています。そこで、大正大学では、震災後から現在に至るまで南三陸とともに歩んできた10年を振り返り、南三陸の新たな魅力を学生の視点から発信する震災追悼イベント「復興祈 11-21」を2月27日(土)13:00からYouTube Liveにて配信します。

なぜ追悼イベントを大学が行うのか?

皆さん、こんにちは! 大正大学心理社会学部4年の石橋郁乃です。大正大学には地域連携・社会貢献の実践を目的とした「サービスラーニング」という授業があります。この授業の一環で、私たちは2017年から継続的に南三陸町に足を運び、復興の現状や地域の魅力を東京で伝える活動をしています。これまで、南三陸での復興支援活動をまとめたドキュメンタリー映画の制作や、自宅から南三陸の食を味わえるオンラインスタディーツアーを行ってきました。

大学生による南三陸4日間のドキュメンタリー映画 オンラインで初公開【寄稿】

今回イベントを企画するにあたって、その原動力になったのは、私たちが町民の方から何度も聞き、絶対に伝承しなければならないと感じた「震災の経験を風化させたくない」という想いでした。東日本大震災発災から10年の月日が経ち、町の復興が進んでいくなか、震災を境に何が変わったのか、当時幼かった子どもたちなど知らない世代が多くなってきているのも事実です。このイベントを通して、震災以降、変化を恐れず未来に向け常に進んでいく町の良さを大学生の目線から伝えたいと思います。

「復興祈11-21」の内容

このイベントは、「東京からの追憶~被災地との10年~」「変化する復興~震災と震災から10年~」「うちで祈ろう~復興祈念追善法要」「未来へ歩む人々~震災からの10年とこれから~」と4つのコンテンツに分かれています。

1つ目の「東京からの追憶~被災地との10年~」では、2011年4月から現在まで大正大学が南三陸町で行ってきた活動を振り返ります。この10年のかかわりを4つの時期に分け、それぞれの時期に現地で活動した大学職員、OB、学生からお話を伺います。当時の様子や活動を通して見た南三陸など、ここでしか聴けないような話が盛りだくさんです。

2つ目の「変化する復興~震災と震災から10年~」では、南三陸町震災復興祈念公園から生中継いたします。現在の町の様子や、当時の状況について語り部の方にお話を伺います。

3つ目の「うちで祈ろう~復興祈念追善法要~」では、仏教系の大学である大正大学にあるさざえ堂と全国各地のお寺を繋ぎ、追悼法要をお送りいたします。YouTube Liveでの開催なので、ご自宅からどなたでもご参加になれます。

4つ目の「未来へ歩む人々~震災からの10年とこれから~」では、町を元気にするために立ち上がり活動を行っている「Yes工房」「ウィメンズアイ」の方々に、それぞれの復興ストーリー、これまでの歩みと今後の展望についてお伺いします。

イベントはオンライン開催!

復興祈(ふっこうき)11-21は、2021年2月27日(土) 13:00~15:30まで YouTube Liveにて開催します。新型コロナウイルスの影響により、現地を訪れたり、共に集まったりすることが難しいのが現状ですが、どこにいても南三陸町とのつながりが思い起こせるよう、そして心の距離が少しでも近くなるよう誰でも参加できるオンラインイベントにいたしました。

あの震災から10年が経った今、皆さんは何を想うでしょうか。このイベントを通じて南三陸町とのこれからのつながりを感じていただけたら幸いです。当日は皆さまのご視聴をお待ちしております!

「復興祈 11-21」は、2月27日13時よりこちらの大正大学公式チャンネルからご視聴いただけます。
大正大学 – YouTube

▼イベントの詳細はこちら

https://note.com/arukimedia/n/n5d8a6a1f4b06

南三陸 里山の恵み 4season 〜春〜

南三陸には、海だけでなく自然豊かな里山もあります。町の三方を山に囲まれ、一方は海に面しているため、町に降った雨はすべて町内の山や大地を通り、志津川湾へと流れていきます。豊かな海をつくる源となっている南三陸の里山。そんな里山の魅力を、シーズンごとにお伝えしていきます!第一弾は春です。

春告げやさい

南三陸は、冬に雪が少なく、日照時間が長いため、甘みと栄養がぎゅっとつまった野菜が育ちます。

寒さ厳しい季節に一足早い春をおすそわけしたいという思いを込めて、「春告げやさい」と名付けて生産・販売しています。

春告げやさいと呼ばれるものは1〜3月に出荷されるものだけで、古くからこの地域で作られていた、ちぢみほうれんそう・春立ち菜・菜花・アスパラ菜・ふきのとう・ちぢみ小松菜・ちぢみゆきなの7種類。

南三陸キラキラ丼春限定の「春告げ丼」にも春告げ野菜がのっています!

山菜採り

南三陸に来て驚いたのは、みんなそこら辺から食べ物をとってくること。山菜やタケノコ、梅や柿、様々なものを取りに出かけ、その四季折々のものを楽しみます。たくさんとれた時は近所にお裾分けをする。保存できるものは加工して保存する。

特に春は、一番季節の訪れを感じられる時だと思います。

寒い冬を乗り越え暖かい日差しに変わる頃、「あ、ばっ出てきた!」と山菜採りが始まります。

中でも毎年楽しんでとるのが「たらっぽ(たらの芽)」。
じぃちゃんの畑にあるたらっぽの木を、芽が出た頃から毎日のように見張り、いい頃合いを見計らって収穫。高枝切りバサミで切り落とします。

チャンスを逃すと通りすがりの人に取られてしまうので、毎日大事に見張ります。

仕事中、上司と車で出かけていても、「ほれ、そこにたらっぽあっぞ。」と車を止めて確認。山菜を見つけたら思わず止まってしまうほど、暮らしの中に当たり前にある習慣なのです。

他にも、ばっけ(ふきのとう)、こごみ、こしあぶら、わらび、ぜんまいなど。たくさんの山菜をいただきます。春の訪れを感じられる素敵な時期です。

 

フキ

南三陸はフキの名産地でした。

高齢化により生産者の方が激減してしまいましたが、いまでも栽培されています。

栽培されているフキは4月の終わり頃から、そしてその後はそこら辺から出てくる野ブキを楽しむことができます!

フキとふきのとうは同じ植物で、地下で繋がっています。花の部分が「ふきのとう」、葉の部分が「フキ」。

春先のとれたてのフキはえぐみが少なく、薄くスライスして水にさらして、サラダとして食べられます!とってもシャキシャキでおいしい!

 

たけのこ

たけのこのシーズンになると、家の前にドサっとたけのこが置かれています。近所の方々が山からとってきて届けてくれます!

5月頭ごろ、竹林を除くとタケノコの頭が出てきてます。そこを鍬でガッと根元から掘り取ります。

掘ったあとは皮を剥いて、米糠であくとりをして、あとは毎日たけのこパーティーです!

我が家の定番メニューは「たけのこの肉巻き」

タケノコの食感を楽しみながらたくさん食べられる人気メニューです!

いちご

南三陸町内には4件のいちご農家さんがいらっしゃいます。

作られている品種は様々で、とちおとめ、もういっこ、紅ほっぺ、にこにこベリー。

特に南三陸は朝晩の寒暖差が激しく、いちごにたくさん栄養が流れるので、おいしさがぎゅーっとつまったいちごです。

そんなに生産量は多くないので、ぜひ見かけた際は食べてみてください!

自然と共に生きる南三陸の人々

春になったら山菜とって、じゃがいも植えて、たけのこ掘って、そして5月中頃に田植えをする。

この町に住む人たちには、季節の流れが当たり前のように体に染み込んでます。

自然と季節と共に過ごしています。

最近はスーパーに年中同じような野菜が並び、なかなか季節を感じられないのではないでしょうか。

昔からの慣わし。季節のものをいただく、その季節にあった暮らしをする。

とっても豊かで、体も元気になる気がします!

受験生を町内産タコが入った、オクトパス君カレーで応援!

合格祈願商品のオクトパス君グッズの制作を行っている南三陸復興ダコの会が、受験を控える町内の受験生を応援しようと新商品のタコカレーをプレゼントしました。南三陸産タコを使ったカレーを受け取った生徒からは、「地域の応援も励みに頑張りたい」と話しました。

受験生に寄り添って応援!人気のオクトパス君

震災後、地域の活性化と雇用の場として南三陸町の名産であるタコをモチーフにしたオクトパス君グッズの制作をしている南三陸復興ダコの会。「置くと(試験に)パス」をかけた合格祈願の縁起物として特に受験シーズンに人気の商品です。間もなく震災10年の節目を迎えるにあたり、南三陸の名産であるタコを使ったカレーを開発。今年度、新型コロナウイルスの影響がありながらも、受験勉強に励む町内の受験生を応援しようと新商品のカレーを受験生にプレゼントしました。

パッケージには、オクトパス君が大きくデザインされている。(写真:中辛)

地域の応援を励みに、志望校合格へ

今回、新商品のタコカレーを贈ったのは町内にある歌津中学校と志津川中学校の3年生と志津川高校の3年生。2月5日には志津川高校を訪れ、代表生徒4名がオクトパス君カレー120個を受け取りました。志津川高校では3年生の約半数が専門学校や大学への進学を希望しており、これから受験を迎える生徒も多くいます。今年度は新型コロナウイルスの影響により、授業開始が6月になるなど授業の遅れも生じました。しかし、教職員が協力して生徒達が学習面において不安にならないよう、オンラインでの学習環境を整える等対応してきたと言います。今回代表してカレーを受け取った生徒からは「こうして地域でも応援してくれている人がいることは励みになる。例年と違う形での試験に不安もあるが、これまでやってきたことを出し切りたい」と話しました。

「地元食材を使った食品を通して、夜食や願掛けに食べて前向きに頑張って下さい。」と生徒に贈った。

次の10年を見据えた”挑戦”

「地元の食材を活用した、商品開発には挑戦してみたかった」と南三陸復興ダコの会会長の大森さん。2月に発売されたタコカレーは南三陸産のマダコを使用した、甘口と中辛の2種類。3月上旬には、南三陸産の和牛も入った辛口のタコカレーも加わり、甘口、中辛、辛口の3種類になります。

左:辛口 中央:中辛 右:甘口 (写真提供:南三陸復興ダコの会)

震災10年を振り返って大森さんは「全国からの善意の気持ちによって前に進んでくることが出来た10年だった。これからは善意に頼ってばかりではなく、これからの10年で成長することを目指したい。カレーがそのきっかけになれば」とこれからの10年に向けた想いを話しました。

オクトパス君カレーはインターネット通販のほか、さんさん商店街・ハマーレ歌津の一部店舗で取り扱っています。南三陸産のタコが入ったカレーをぜひご賞味下さい。

▼取り扱い店舗
さんさんマルシェ(さんさん商店街)
マルタケ(ハマーレ歌津) 
わたや(さんさん商店街)
フレンズ(さんさん商店街)

▼WEBショップ
オクトパス君ショップ

高校生が有言実行した地域のエコシステムを体感する循環授業の様子をお届け

志津川高校情報ビジネス科で、2020年7月から始まったエコシステムを学ぶ循環授業の様子の後編をお届け。2020年2月に開催された「志高まちづくり議会」で「高校生らしいパンフレットを作り、町内各所に配る」と話した高校生。そこから1年足らずで実現した有言実行の取り組みを紹介します。

地域のエコシステムを学び、自分たちで実践する

志高まちづくり議会が起点 地域のエコシステムを体感する循環授業スタート

上記の前半の取り組みのあと、9月に行われた2回目の授業(エコシステム教育プログラム)では、3~4人の小グループに分かれ、プランターにほうれん草の苗を植える作業を行いました。それぞれのグループに2種類のプランターを用意。

生ごみを分別しメタン発酵させる過程で生まれる副産物である液体肥料を混ぜた土と、普通の土とで成長にどれほどの差があるのか、あるいは変わらないのかを調べる事にしています。

収穫、そして実食

11月、液体肥料で育った作物がいよいよ収穫をむかえました。

液肥による生育のよさにクラス全員、そして担任も驚きを隠せない時間になりました

「こんなに違うのか・・・液肥ってすごいな」ある男子生徒がつぶやきます。

授業終了後の昼食時間、収穫した液肥ほうれん草をみそ汁の具にして食べてみました。まちづくり議会で目標を語った生徒は「この成果を紹介したい」そう強く感じたそうです。

実感した成果・町のエコシステムを町民に伝える

12月、アミタ(株)を招き特別授業を受けた生徒が、遂にパンフレットを完成させました。

「たくさんの方々の協力と指導を仰ぎ、有言実行できました」

「生ゴミの分別を分かりやすく伝えるアイテムができました。ぜひ台所など目に付くところに置いて(貼って)役立ててほしい」

そう語る情報ビジネス科の生徒たちは、刷り上がった成果物を眺めながら感無量の表情です。

完成した『南三陸町の生ごみの出し方』というタイトルのパンフレットは、12月15日発行の『広報南さんりく』に折り込まれ、町内全戸に配布されました。出せない生ごみ(貝殻など)天ぷら油の正しい出し方のほか、志高生が学んだこと、伝えたいことなども詳しく掲載されています。町内のご家庭、事業所でご活用されますようお願いいたします。

2020年2月に開催された「志高まちづくり議会」で、志津川高校情報ビジネス科2年生(当時)が、提案したアイディアもきっかけの一つとなり、授業で地域のエコシステムを体感する循環授業。議会の場で「高校生らしいパンフレットを作り、町内各所に配る」と話した高校生。そこから1年足らずで実現した有言実行の取り組みを紹介しました。今後の活躍にもますます期待がかかりますね。

2020年度の「志高まちづくり議会」の様子はYoutubeでご覧いただけます

 

2021年1月31日/定点観測

南三陸町市街地の復興の様子を定点観測しています。戸倉地区、志津川地区、歌津地区の3箇所の写真を公開しています。

戸倉地区

撮影場所 [38.642969, 141.442686

パノラマ

志津川地区

撮影場所 [38.675820, 141.448933

パノラマ

パノラマ

パノラマ

パノラマ

歌津地区

撮影場所 [38°43’5″ N 141°31’19” E

パノラマ

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震災から10年の絆の証。松原公園に新たな憩いの場「レンドリーステラス」誕生。

震災直後から南三陸町に多大なる支援・サポートをいただいていたレンドリース・ジャパン株式会社から、移転復旧した松原公園に「あずまや」を寄贈いただきました。震災から10年の絆の証として町民の憩いの場が誕生しました。

松原公園に整備された「あずまや」

2019年夏に志津川中学校下に移転復旧した松原公園。野球場と陸上競技場、遊具も置かれ、スポーツ少年団や部活動の練習や試合、そして地域住民はもちろん、ペットを連れた散歩コースとしても人気になっています。

そんな松原公園の野球場と陸上トラックの境界に大きな三角形の「あずまや」が誕生しました。長さ約30メートルもある大きな「あずまや」は日光を遮って休憩するほか、中央の中庭からは2階の展望デッキに登って、南三陸町の景色を楽しんだり、野球場や陸上競技場で行われる試合を眺めることもできます。

「レンドリース テラス」と名付けられたこの「あずまや」は、建築コンサルタント業を行うレンドリース・ジャパン株式会社が整備し、南三陸町に寄贈いただきました。

600名以上が南三陸を訪れ、様々なサポートを行った10年間

レンドリース・ジャパンと南三陸町の出会いは2011年の震災直後までさかのぼります。

東日本大震災発生直後、南三陸町へ救助隊を派遣するなど様々な支援活動を行ったオーストラリア政府を後方支援するため、レンドリース・ジャパン株式会社代表取締役社長のアンドリュー・ガウチさんがオーストラリア大使館職員と共に南三陸町に入りました。

「その当時の状況を目の当たりにして、東北の人々が直面している困難な状況を乗り越えるために、可能な限りのことをしたいと強く思いました」とアンドリューさんは当時を振り返ります。

以降、震災復興支援としてオーストラリア・ニュージーランド銀行が南三陸町に寄贈したオーストラリア友好学習館(通称コアラ館)の建設時に設計支援を実施。

2013年からは「南三陸サポートプロジェクト」として、3~4ヶ月に一度の頻度で社員やその家族、関係者らが南三陸を訪れボランティア活動や交流活動を行ってきました。

南三陸での活動は、語り部による町の被災状況や復興の様子を視察するほか、漁業支援や、林業体験、間伐材を使ったモノづくり体験、仮設住宅での地域住民との交流会、コアラ館の花壇整備など多岐にわたります。

「震災から10年という月日が経ちます。合計24回、600人を超えるスタッフ・家族がボランティア活動をしてきました。何年もかけて信頼関係が構築されて、私たちを温かく迎え入れてくれた南三陸町のみなさんとの関係は私たちにとってかけがえのない財産となっています」(アンドリューさん)

コアラ館の前にある花壇を整備するレンドリース・ジャパンのみなさん
町内各地でフィールドワークを実施しました

「回廊型」「展望デッキ」「町産材」がコンセプト

「震災から10年を迎えるにあたり、地元のみなさんに少しでも楽しい時間を過ごしていただける場所を作りたい、との想いでレンドリーステラスを計画しました」と話すアンドリューさん。

社内で設計コンペをして決まったというデザインは、あずまやとは思えないほど大きく、様々な機能が期待できるものとなりました。

「南三陸サポートプロジェクト」事務局のレンドリース・ジャパン株式会社の岡村一二さんはレンドリーステラスのコンセプトは大きく3つあると話します。

1つが「回廊型」であること。たんに休憩するだけではなくて、マルシェを開催したり、トレーニングで使えたり、さまざまな可能性がある場所となっています。

2つ目がシンボルとなる「展望デッキ」を有すること。大人15名まで登ることのできる高さ約5メートルの展望デッキからは東には志津川湾が見え、松原公園で行われるスポーツの観戦にも最適な場所となっています。

そして、3つ目が「南三陸産材」を使うこと。地元材を使用し、地元の建設会社が施工を担うことで、これから先もメンテナンスをしながら長く地元で愛される建物となることを目指しています。

イベントなどにも使い勝手の良いデザイン
大人15人が登れる大きな展望デッキ

「レンドリーステラスで待ち合わせしよう。レンドリーステラスでお弁当食べようよ。と町民の方の身近な存在になって、気軽に呼んでいただけたらうれしい」と岡村さんは話します。

震災直後から、レンドリース・ジャパンの皆様には大変お世話になりました。

新しく寄贈いただいたこのレンドリーステラスで、これから先の長い将来にわたって、町民が自然と笑顔になる時間をつくるのが最大の恩返しとなるのかもしれません。散歩がてら、遊びがてら、気軽に立ち寄ってみてください。

佐藤仁南三陸町長(左)とレンドリースジャパン代表取締役社長・アンドリュー・ガウチさん(右)

新たな町の象徴へ!南三陸町道の駅 安全祈願祭を実施

令和3年1月12日に「南三陸町 道の駅」の安全祈願祭が執り行われました。さんさん商店街のすぐ隣に建設され、来年2月の完成を目指します。道の駅内には、震災伝承施設も併設される予定です。

海が見える展望デッキ。南三陸杉も使用

さんさん商店街のすぐ隣に建設が予定されている「南三陸町 道の駅」の安全祈願祭が、1月12日に執り行われました。鉄骨造りを基本にしながら、壁材などで使用する木材は南三陸杉を使用。施設一部には2階展望デッキも設けられ、海を眺めることができるよう設計されています。さんさん商店街と中橋・復興祈念公園を1つに繋げ、これまでの復興の歩みを未来へ繋げる拠点施設を目指しています。

“伝承・観光・交通” 3つを束ねる複合施設

南三陸町道の駅は、伝承、観光、交通の3つの機能を併せ持つ施設としての運用を目指しています。伝承機能では、道の駅内に震災伝承施設が併設され震災や防災減災を学ぶ場としての機能が予定されています。観光と交通においては、24時間利用可能な駐車場や公衆トイレなどを設置。JR志津川駅など公共交通機関の発着場も併設することで、観光拡大と憩いの場としての利用に期待をかけています。

施設延べ床面積 1,417.59平方メートル

機能や空間をつなぐ“穴”

南三陸町道の駅はさんさん商店街側に抜けることができる、大きな穴が特徴です。設計をした隈研吾さんは「3つの機能を束ねることは、複雑で苦労しました。建物の真ん中に大きな穴を開けることで、この穴がいろいろなものを繋ぐ、鳥居のような役割を果たしている」と話しました。

施設概要を説明する隈研吾さん。「節目とも言える道の駅安全祈願祭を迎えられ感慨ひとしおだ」と挨拶した。

佐藤仁町長からは「今の町が出来てきたのは、震災当時からは考えられない。全国の皆さんに震災伝承館にお越し頂き、隣の商店街では買い物や食事をして、祈りの場所で手を合わせていただきたい。この場所が新たな町の顔になって欲しい」と話しました。

安全祈願祭当日、大雪に見舞われた南三陸町。町長挨拶では「自然の神に見守られながら、復興の歩みを進めてきた」とこれまでの式典を振り返り話した。

来春オープンを目指す、町の新たな象徴

南三陸町道の駅の完成は、2022年2月を予定。施設のオープンは来春3~4月頃を目指しています。さんさん商店街がオープンしてから、観光客数が増加している南三陸町。そして今回、新たな南三陸町の象徴として建設が始まった南三陸町道の駅。さんさん商店街と中橋、復興祈念公園が連動した、新たな誘客が期待されています。

~令和2年度 成人式~コロナ予防策を徹底して開催。

1月10日(日)、南三陸町総合体育館にて「令和2年度 成人式」が行われました。今回、新たに成人を迎えたのは109名。新型コロナウイルス感染予防策を講じての開催となった成人式の様子をお届けします。

新成人を迎えた109名

令和2年度の成人式が1月10日、南三陸町総合体育館で行われました。今年、新たなに成人を迎えたのは、2000年から2021年に生まれた109名。東日本大震災時は、小学4年生だった新成人たち。町の復興も進み間もなく震災10年を迎える今年、新成人たちは人生の一つの節目を迎えました。

感染予防のため、会場内ではマスク着用。座席は一定の間隔を空け、式の合間には座席の消毒を実施。

新型コロナウイルスの影響により、自治体によっては成人式を取りやめる所もある中、検温やマスクの着用など徹底した感染予防策を講じての開催となった成人式。例年、式場には新成人の家族や多くの来賓が参列していました。しかし今年は、感染予防のため新成人以外の入場は規制され例年とは違った形での開催となりました。

式辞では「全世界で目に見えない敵と対峙しています。これからも想定できない困難な状況があると思いますが、強い信念と自信を持って未来を切り開いてほしい」と佐藤仁町長。

「震災で感じた日常の幸せ。繋がりを大切に町の復興へ携わっていきたい」

新成人を代表して誓いの言葉を述べたのは阿部夏実さん。冒頭、新型コロナウイルスの影響もありながらも、開催することが出来たことへの感謝の気持ちが読み上げられました。続けて「震災によって日常がとても幸せで、大切だということを身をもって感じた」と阿部さん。

「制限がある今の状況下でも繋がりを絶やさず、大切にして支え合いながら町の復興に携わっていけたらと思います」と誓いの言葉が述べられました。

新成人2人の抱負「町への恩返し」

新成人の抱負では、2人の新成人から抱負が述べられました。南三陸消防署に勤務している木皿和輝さんは、「社会人について多くのことを学んだ」とこの一年を振り返りました。防災にも興味があり、人の役に立つ仕事を目指していたことで消防士となった木皿さん。

「支えられる側でなく、今度は支える側として恩返しをしたい」と抱負を述べました。

続いて、抱負を述べたのは菅原真生さん。現在、南三陸町を離れ営業の仕事に就いている菅原さんは、「社会人になってから仕事の重みを感じている毎日」だと社会人生活を話しました。そして「一緒に新成人を迎えた仲間と共に、様々な形でお世話になった方たちと、この町に恩返しをしていく所存です」と抱負を述べました。

コロナ対策で迎えた成人式

記念講演では、ジャーナリストの伊藤詩織さんが「自分を信じる力」と題して、自身の体験を踏まえた講演を実施。「ちょっとコミュニティを変えるだけで世界が広まります。どんな失敗も恐れずに生活をして欲しい」と新成人にメッセージが送られました。

ジャーナリストの伊藤詩織さん。

新型コロナウイルスの影響により、例年よりも縮小した形での開催となった今回の成人式。それでも参列した新成人からは「一時はどうなるかと思ったが、みんなとこうして会うことが出来て何より嬉しい」と久しぶりの旧友との再会を喜んでいました。

まだまだ猛威を振るっている新型コロナウイルス。一日も早い終息と新成人のこれからの未来、社会が明るくなることを祈るばかりです。109名の新成人の皆さん、おめでとうございます。