2020年2月に開催された「志高まちづくり議会」で、志津川高校情報ビジネス科2年生(当時)が、家庭から出る生ゴミを分別回収して資源活用している南三陸BIOを紹介しながら、中高生にも生ゴミの分別の重要性や取り組みを知ってもらうアイディアを提案。その声もきっかけの一つとなり、授業で地域のエコシステムを体感する循環授業が行われました。
1時間目 生物基礎・生態系の保全
生物基礎科目・指導教諭の阿部秀也先生が「生態系とその保全」をテーマに掲げ、町内で事業を展開しているアミタ株式会社との連携を企画。これからの暮らし方にも関わる課題や対応策などを深堀りする循環授業が始まりました。
「私たちは、普段生活している中で、生物に対し悪影響を及ぼしているのではないか?」という先生の問いかけに、生徒から次々と具体例や解決策となる回答が出されました。
「廃棄されたプラスチックが大量に海岸(波打ち際)に流れ着いている」
「分解されないプラスチックごみを亀や鳥が飲み込むことがあり死んでしまう」
「それを改善するために自分たちはポイ捨てをしない」
「レジ袋はゴミにもなる。買い物にはエコバッグを使う」
「割りばしは国産材を使うべきだと教えられた」
「火力発電は石油を使うので環境に悪い。風力や太陽光をもっと増やすべきだと思う」
2時間目 メタン発酵による循環授業
「初めまして。私はアミタ株式会社の職員で野添(のぞえ)と申します。博士と呼んでください」
普段南三陸BIOに勤務している野添幹雄さんが白衣姿で登場。
「森里海ひといのちめぐるまち」という持続可能な循環型地域社会を目指す南三陸町で、生ゴミを一般ゴミと一緒に処分するのではなく、分別して再利用(バイオマス事業)していることや地域デザイン事業など、日々の取り組みを伝えます。
「本日はその重要な役割を果たすメタン菌を紹介します」と言って、濃いグレー色の液体が入ったペットボトルを手に取りました。
「この中には、お腹を空かせたメタン菌君がたくさんいます」と興味が湧くような優しい語り口調の野添博士。「大きさはわずか5マイクロメートルですが、人間が食べられるモノなら好物なのですよ。40℃程度の温かさが最も活発になります」そのような授業が続きます。
「実際に餌を与えてメタンガスを発生させてみましょう」グループごとに実験を促します。
小さく刻んだバナナの皮を入れたペットボトルに蓋をしてゆっくり振り混ぜます。
なかにはバーテンダーのように激しくゆする生徒もいましたが、「それはやりすぎ、もっとやさしく」と注意され笑いが起きるほど和やかに実験が進みます。次にチューブのついた蓋に代えてお湯の入った水槽に置くとチューブの先から小さな泡が発生してきました。
「これがメタン発酵を促してできたバイオガスです。みなさん、田んぼでプクプクと気泡が出ているの見たことありますか?原理は同じです」
2時間目後半 ホームバイオガス装置
次に、体育館と西校舎の間に設置した「ホームバイオガス装置」に移動しました。
「まず、投入口に餌となるバナナの皮を入れます。中には600Lのメタン菌が活動しており発酵分解されます。やがて、ガスは上部のチューブに溜まり、それ以外は後方のタンクに排泄されます。これが液肥と呼ばれる液体肥料で、農作物の栽培に活用されるのです」実際に班のリーダーがバナナの皮を投入してみました。
一連の授業が終了しましたが、この装置から生み出された液肥が夏休み後に行われる作物栽培に使われ、ガスはお湯を沸かす燃料になる予定だとの話もありました。高校生たちと地元企業とが一緒に取り組む循環授業は始まったばかりです。
志高まちづくり議会で発表した生徒たちの最終目標は、アミタさんの授業をもとに高校生らしい引き付けられるパンフレットを作り、町民に知ってもらうことでした。今後の取り組みや成果に期待したいものです。
ホームルーム
生徒からは「これからは生ゴミを分別し、メタン菌を活用できる良いリサイクルが必要だと思った」
「南三陸町は思っていた以上にゴミ問題に関わっているのだなと感じた」との感想がありました。
初めて高校生を相手に授業したという野添氏は「私にとって貴重な時間でした。身近なことで環境問題を考え、取り組むきっかけになってもらいたい」と感謝の言葉が述べられました。
「今世界中で起きている温室効果やプラスチック廃棄などの環境破壊問題は、一人一人の考えや行動によって解決に向かうかもしれない。人の手によって壊れかけた生態系を取り戻すことだってできるはず。それを『環境管理システム』と言います」と阿部秀也先生が語り、授業を締めくくりました。