東京で南三陸に出合う。「三陸ワカメまつり2019」

2019年3月30・31日に、東京・上野で「三陸ワカメまつり2019」が開催されました。今年で4回目となるイベントで、南三陸町で活動するNPO法人「ウィメンズアイ」と「さとうみファーム」が共催。多くの人でにぎわいました。

生わかめ、パン、手仕事の品々… 南三陸の逸品が集合!

「三陸ワカメまつり2019」の会場は、日暮里の谷中霊園近くにある「上野桜木あたり」。1938年築の日本家屋をリノベーションしたショップ&レンタルスペースの複合施設です。1日目午前中に訪れると、続々と来場者が。「路地のマルシェ」や「食べる・飲む 美味しいコーナー」をめぐり、思い思いに楽しんでいました。

会場の「上野桜木あたり」の入り口には、「三陸ワカメまつり」と「南三陸応縁団」の「のぼり」も

会場入り口から通路沿いにブースが設けられた「路地のマルシェ」には、南三陸産の海産物やパン、藍

染めグッズ、羊毛グッズなどが並びました。来場者は各ブースで足を止めて、塩蔵わかめを購入したり、藍染めグッズを手に取ったりと、出店者との会話も楽しみながら買い物をしていました。

入り口すぐには、「たみこの海パック」の海産物や「南三陸おふくろの味研究会」の缶詰などが並んだ 写真提供:ウィメンズアイ
入谷の「パン菓子工房oui」のパンは大人気で、飛ぶように売れていった
「でんでんむしカンパニー」のブースでは、南三陸町から駆けつけた中村未來さんが藍染めグッズや藍のお茶を販売 写真提供:ウィメンズアイ
「さとうみファーム」のブースには、帽子や織物、ブローチ、ポーチなどの羊毛グッズが 写真提供:ウィメンズアイ
「さとうみファーム」ブース横には糸紡ぎ体験ができるコーナーが設けられ、子どもたちに人気だった 写真提供:ウィメンズアイ

奥の座敷にはわかめおにぎりや蒸し牡蠣を東北の日本酒とともに味わったり、わかめしゃぶしゃぶを楽しんだりできるイートインのスペースが。来場者は、くつろぎながら南三陸の旬の味を堪能していました。

2~4月にしか食べられない南三陸の旬の味、生わかめのしゃぶしゃぶ。お湯にくぐらせるとわかめが鮮やかな緑色に変わる様子に、感嘆の声が上がることも 写真提供:ウィメンズアイ

町民によるお話会で、南三陸のストーリーを伝える。

今年のワカメまつりの目玉企画は、南三陸町民をゲストに迎えてのお話会。

「南三陸応縁団」団員主催イベントへの町民派遣制度によって実現しました。1日目は、上山八幡宮の禰宜・工藤真弓さんが、住民が主役となる復興のストーリーを伝えました。立ち見が出るほどの盛況で、50年かけて育つ椿の種を拾い、椿の花が咲く避難路をつくろうというビジョンに込められた、世代を超えてつながり続けることこそが防災という視点にはっとさせられる人も多かったようです。

椿をモチーフとした復興のストーリー「南三陸椿ものがたり」について話をする工藤真弓さん(左) 写真提供:ウィメンズアイ
「南三陸椿ものがたり」にちなんだ、椿をモチーフとしたグッズや椿油なども「路地のマルシェ」に登場 写真提供:ウィメンズアイ

2日目のお話会では、南三陸町に移住した中村未來さんが、古民家再生と無農薬の藍の栽培・商品開発の取り組みについて話をしました。参加者のなかには、「染色を学ぶ学生を連れて訪問したい」「古民家改修ワークショップに参加したい」という人も。イベントを企画した「ウィメンズアイ」の塩本美紀さんは、「南三陸町の方に会って直接話をしてもらうことで、より深く伝わるものがあると思います。南三陸町の“今”を知ってもらえたのではないでしょうか」と手ごたえを感じていました。

熱心に語る中村さん(左)と、企画者の「ウィメンズアイ」塩本さん(右) 写真提供:ウィメンズアイ

また、2日目には「南三陸町移住支援センター」の國枝万里さんがやって来て、移住相談にあたりました。これは昨年度からはじめた取り組みです。

「南三陸町移住支援センター」の國枝万里さん(写真中央) 写真提供:ウィメンズアイ

イベントは、つながりを生み、防災を意識するための場。

盛況に終わったワカメまつりを、「ウィメンズアイ」の塩本さんは次のように振り返ります。

「他団体との共催は初めてでしたが、連携すると相乗効果を上げることができ、とてもよかったです。被災した地域ですばらしい取り組みが形になってきたので、そのことを少しでも知ってもらえたのではないかと思います」

ワカメまつりでは、イベント自体が盛況になることではなく、イベントを通してつながりが生まれること、風を起こすことを目指しているそうです。また、いつ・どこで災害が起こるかわからないので、災害を忘れず防災を意識するために、毎年3月にイベントをやることが大事だと考えています。

東日本大震災を、災害を、“忘れないため”、というのもワカメまつりの目的 写真提供:ウィメンズアイ

「規模や場所にこだわらず、これからも細く・長く続けていけるようにがんばります!」と塩本さんは意気込みを語りました。来年はどんなワカメまつりになるのか、楽しみです!

「三陸ワカメまつり」の名物、極上の塩蔵わかめ 写真提供:ウィメンズアイ

平成最後のお花見?!「ひころの里は春のころ」

南三陸町入谷界隈、国道398号を東に折れて小高い丘に上ると、旧武家住宅の「松笠屋敷」と入谷地区の養蚕の歴史を伝える「シルク館」があります。平成7年に当時の旧志津川町が、この両施設と周辺の山林農地を含めて「ひころの里」と銘打ち、郷土の歴史を体験できるエリアとして開設しました。

町指定文化財松笠屋敷

南三陸町バーチャルミュージアムでは、この建物を次のように紹介しています。

「中世にこの地を治めた葛西家旧臣である須藤家の邸宅で、建築の技法・様式などから文化・文政(十九世紀前半)頃の建物と考えられます。旧伊達藩の在郷の武士住宅として、また武士住宅と農民住宅の関連を知ることのできる数少ない実例として、建築史上貴重なものと評価されています。現在は周辺も含めて『ひころの里』として整備されており、地域活性化の拠点として、また故郷の原風景を味わえる施設として活用されています」(原文のまま)

平成7年に本格的な整備がなされて以降、地元入谷地域住民を中心に定期的に除草や清掃活動をしながら、イベント(グラウンドゴルフや秋まつり・シルクフェアなど)を開催しています。

東日本大震災後は、ボランティアはじめ多くの方々が「ひころの里」を気に入り、「ひころマルシェ」や「屋外結婚式」など賑わいの機会を作ったり今後の在り方を話し合ったりしています。

広場の反対側(西の丘)に行ってみよう

ふれあい広場の西側に「アスレチック施設」という案内板があります。

登りきると、「松笠神社」という看板が掲げられた小さな祠があります。頂上エリアは、開放的でとても気持ちが良く、山桜がきれいに咲いていました。

アスレチック施設とは言うものの、遊具はローラー滑り台があるくらい。時折子どもたちが遠足に来ているようですが、もっと多くの方がピクニック感覚で楽しめるとうれしいですね。

分水嶺に囲まれた南三陸を見渡す

丘の頂上付近からは360度ぐるりと見渡せます。一番高いところは、このローラー滑り台の上。

遠く戸倉翁倉山・大盤平から志津川の霊峰・保呂羽山などを望むことができます。眼下には災害公営住宅(入谷桜沢)。三陸自動車道を走る車も確認できるので、走行中の車窓からこの遊具を発見できるはずです。

東日本大震災後、実に多くの方々が復興支援に訪れていますが、「この丘を花見山のようにする!」という熱い気持ちで桜の木を植樹した団体もあります。近い将来、ここからピンクのじゅうたんが楽しめるようになるかも知れませんね。

公園の北側に足を延ばすと、入谷を代表する三つの山(童子山・神行堂山・惣内山)を眺めるポイントにたどり着きます。もちろん紅葉の時期も素晴らしい景色となりますので、ぶらり散策に立ち寄ってみてはいかがでしょうか?

第6話 実際いくらかかるの?気になる出産費用を公開!

今回はズバリ、出産前後にかかるお金の話です。

新しい命を授かるというときに、数万の負担がどうこうなんて言ってられない!とは言いつつ、実際には自分自身の収入も一時はストップするし、ただでさえいろいろと要り用だし、まあ、わかるもんなら事前に知っておきたいですよね。

最初に私の実感を言うと、現代における妊娠、出産に関する支援はとても手厚いです。自分が経験してみて初めて、日本の保険制度ってすごい!と思いました。

これに関しては、南三陸町だからどうこうという話はほとんどなく、全国的にほぼ同じかと思います。が、私自身、雑誌やネットでいくら調べても、実際私のお財布から出て行く額はいくらなの?ってはっきりしたところは本当にわからなくて、ドキドキしていました。なので、なるべく具体的な数字までお伝えしていこうと思います。

妊婦健診。びっくりするのは最初の2回だけ。

さて、私が妊娠したとわかった日のことは、以前の記事「第1話 決断の時は意外と早い!どこで産むか問題(前編)でも書きましたが、だいたいの場合、妊娠検査薬とかで陽性反応を見てから産婦人科を受診して、「ご懐妊です」となるのでしょうが、私の場合は自分が妊娠してると思わずに受診したので完全な不意打ちだったんですね。人生の急展開にあれやこれやと考えが巡って、ふわふわしている時にお会計に呼ばれて、私は衝撃の事実を知ることになります。

「お産は病気ではないので、保険外診療になります」

え、そうなの??まぁ、そう言われればそうなのか・・・。

で、この時請求された金額、8,120円。「え、高っ!」と思いましたよ。全然そんなつもりで来てないし。あれ、今日お財布に現金入ってたっけ?って若干不安になりながら支払った覚えがあります。

そして2週間後、出産予定日を確定させるために再度受診した際の金額、7,990円。えー、高くない??この先、月に1度とか2週間に1度のペースで検診あるのに、毎回この金額??

と、一瞬不安になったものの、ご安心ください。びっくりするのはこの時まででした。

出産予定日が決まると、役場に母子手帳を交付してもらいに行きます。その時に、「母子健康手帳別冊」というものも一緒にもらえます。そこに「妊婦健康診査助成券」というものが綴じられていて、その後の検診の際は冊子ごと窓口に出せば、ほぼ自己負担なく検診が受けられるのです。

出産までには12〜14回程度、検診を受ける必要がありますが、助成券は14枚もらえるので、何か特別なことがない限りは、足りると思っていいでしょう。これは町の制度ですが、多くの自治体でこのような制度はあるようです。

下記は、私の実際に支払った金額です。ご覧のように、ほぼお会計はゼロ円。いやー、ありがたいですね。

(南三陸病院は分娩は行なっていないため、石巻赤十字病院と気仙沼市立病院でセミオープン制度をとっています。妊婦健診は、週数によって南三陸病院か連携病院で受けることになります)

妊娠週数 金額 内容 日赤/南三陸
8,120 妊娠発覚 南三陸
11 7,990 出産予定日決定 南三陸
13 2,820 日赤初診療 日赤
16 0 南三陸
16 730 日赤
19 540 母親学級参加費 日赤
23 0 日赤
26 0 南三陸
28 0 南三陸
30 0 日赤
32 0 南三陸
34 0 日赤
36 80 日赤
38 0 日赤
39 0 日赤
40 0 日赤

 

出産費用、いくらになるかはタイミング次第!?

さて、先ほど「お産は病気ではないので、保険外診療」と書きましたが、じゃあ実際の分娩時っていくらかかるの?と思いますよね。一回の診療ですら7,000円もかかるのに、入院や場合によっては手術も伴う分娩って相当高額なんじゃ・・・と不安になると思います。

しかし、ここはさすが日本の手厚い保険制度。「出産育児一時金」という制度があり、健康保険に加入している人、あるいは健康保険に加入している人の配偶者もしくは扶養家族であれば、一律42万円が支給されます。しかも、「直接支払制度」と言って、健康保険組合から直接病院に支払ってくれるので、高額な出産費用を建て替える必要はなし。つまり、病院で請求されるのは、出産費用から42万円を引いた分だけになります。ちなみに、多胎児(双子や三つ子)の場合は、「子供の数×42万」が支給額になるので、出産費用が支給額より少額な場合、余った分は後からもらえるそうです。へー!!

ここまではなんとなく理解はできるのですが、じゃあ実際窓口でいくら払うことになるの?と言うと、これが最後までわからなくてドキドキしたんですよね。日赤の場合、出産に関する情報が一冊にまとまった教科書のような冊子をもらえるのですが、そこにはこう書いてあります。

出産費用について
一般的な費用(概算)
初産婦・自然分娩 55〜57万円程度
初産婦・帝王切開 50〜55万円程度
経産婦・自然分娩 53〜55万円程度
経産婦・帝王切開 50〜55万円程度

※入院日数、出産した曜日・時間帯等により異なります

いやいや、結構な開きがあるじゃんって思いませんか?しかも初産婦の自然分娩一番高いなんて・・・。一般的に初産婦のほうが経産婦よりリスクが高く、長引く場合も多いからということでしょうか。自然分娩より帝王切開のほうが安いのは、帝王切開は手術ということで健康保険の対象となり、3割負担で済むからだそうです。そして、出産費用が不確定な一番の理由が、これ。「※入院日数、出産した曜日・時間帯等により異なります。」つまり、出産が日曜・祝日や深夜帯にかかると、その分の割増料金が加算されるということらしいのです。こればっかりはコントロールのしようがないので、まさに赤ちゃんのタイミング次第なんですね。私の場合は1月17日が予定日だったので、お願いだから年末年始にはかからないでくれと祈っていました。

で、気になる実際にかかったお金はというと、

請求額479,966円ー出産一時金420,000円=支払額59,966円

意外に安く済みました!土曜日の昼過ぎという、絶妙なタイミングで生まれてきてくれた我が子を褒めたい。

促進剤を打ったり吸引したりということもなく、早朝入院して昼過ぎには生まれていたという安産だったので、安いほうなのかもしれません。

お産は病気じゃないなんて言われますが、当然様々なリスクも伴うわけで、病院では万全の体制がとられています。万が一のときのために常に点滴の針を入れられ、いろんなセンサーをつけられて、専用の部屋もあてがわれた上に、分娩時は医師1人に助産師2人がつきっきり。入院中も医療的なサポート以外にも、沐浴の仕方や授乳の仕方も懇切丁寧に教えてくれて、4人部屋とはいえ十分快適な環境で過ごすことができて、細かいことを言えば、入院中に使うパジャマやタオル代、赤ちゃんのオムツやおしりふき代等なんかも全部含まれたこの金額って、全然安いよ!って思いました。

知っておきたい。医療費の自己負担額には上限がある!

私の場合は自然分娩の安産だったので、この金額で済みましたが、当然母親や赤ちゃんの状態によっては、様々な医療処置が必要な場合もあります。妊娠中に切迫早産や切迫流産となって入院が必要になる場合もあります。そんな時でも、医療費の自己負担額が高額になってしまう患者さんをサポートするために、「高額療養費制度」というものがあります。

簡単に言うと、収入に応じて月々の医療費の自己負担額に上限があるのです。目安ですが、年収約370万円以下であれば、1ヶ月の自己負担上限額は57,600円。これ以上支払った場合は後で戻ってくるか、あらかじめ申請しておけば窓口での支払いを上限額内に収めることもできます。これは健康保険の制度の一部で、保険診療全般に対して適用されるので、帝王切開、吸引分娩などの費用や、妊娠中の入院費も対象となります。何も無いにこしたことはありませんが、知っておくと少しは安心ですよね。

退院時にかかる赤ちゃんのための費用

これまでは主に母親側の話。退院時にかかる赤ちゃんのための費用もあります。入院中に、任意で受けられる検査が二つあります。一つは、新生児聴覚スクリーニング検査という、赤ちゃんの「耳の聞こえ」を検査するもの。もう一つは、ガスリー検査と呼ばれる、先天性代謝異常症等の検査です。この検査料は県が負担してくれるので、採血料と送料のみの負担ですみます。この二つの任意検査の金額も、退院時に支払います。合計で9,184円でした。

お金に関して言えば、「案ずるより産むが易し」

「案ずるより産むが易し」。出産のどこが易いんじゃー!と言いたくもなりますが、お金に関して言えば、確かに心配していたよりは「安し」でした。それだけ、国も自治体も子育てを応援してくれているんだなというのを実感して、ありがたくなりました。次回は、気になるお金の話第二弾、出産後に受けられる支援制度について書いていこうと思います。

※記事中の金額は、あくまで2019年現在の、私個人の体験に基づくものです。詳細な金額は各機関にお問い合わせください。

志津川中央団地・いきものがかり!

桜が町中で満開となった平成最後の春、新しい町・志津川中央団地内に地域住民が憩う場ができました。この地域内で暮らす方々が「なかよし会」というグループを作り、お茶会やミニ旅行などを楽しんでいますが、さらに笑顔になる機会が増えました!

中央団地のてっぺんで。

4月26日に全線開通する『復興拠点連絡道路』のほぼ中間点、中央団地の北側に小高い丘があります。杉林が伐採され、頂上付近には白梅・紅梅が広がっているのを観ることができます。所有者の許可を得てお邪魔してみました。

「先日、なかよし会のメンバーが集まって梅の花見会をやったんだよ!」

うれしそうに語るのは、この丘の所有者・仲松義也さんです。

「良いよ、入っても」と招かれたエリアではたくさんのニワトリが出迎えてくれました。

「伸び伸びと走り回っていますね。どれくらい飼っているんですか?」

「今は28羽かな、毎朝卵を産んでくれているよ」

今日はね、うさぎの引越しなんだ!

「この下(住宅地の道向かい)に小屋を作ってさ、これからウサギたちを移すんだ。仲間のみんなに集まってもらって歓迎会してもらうのさ」

仲松さんが満面の笑みで語ってくれました。

「へ~、それじゃあ、新天地に移住ということになるのですか?」

「まあ、そうだね。ウサギも住民との交流が一番大事だと思っているからね」

ウサギ小屋落成式&直会

なかよし会のメンバーが見守る中、これまで狭いケージのようなところにいたウサギたちは、広い新居にお引越しです。「あら~、めんこいごだ~」と、歓声が響きます。

「震災復興は人づくりだと思います。高台に移転し住民同士が楽しみながら交流しないとダメなんです。みんなが集まって来やすいようにここにウサギ小屋を作りました。なかよし会でもお世話してくれるというので、私たちも嬉しいですね」仲松さんは大きく頷きながら想いを語ってくれました。

みんなでウサギの世話をするそうです。【中央団地のいきものがかり】ですね。

住民たちが持ち寄った手作りの饅頭や漬物、卵焼きが振る舞われた新居完成式&直会(なおらい)は、まるでピクニックのようです。みんなで協力してウサギの世話しながら野菜作りも楽しみましょうとの案も出て、ますます楽しくなる暮らしが垣間見られた暖かな一日でした。

仲松さんは、「誰でも自由にウサギと遊べるし、斜面に植えたモモやレンギョウなども楽しんでもらいたいので、お友達やご家族にもPRしてお越しください」と挨拶、続けて「ここは坂のてっぺんなので、(車の)運転手からは見通しが悪い。道路を横断する際は十分に注意してほしい。」定年退職するまでは警察官だったこともあり、地域住民の安全を第一に考えて注意喚起も忘れません。

「ウサギは神経質な動物ですが、驚かさなければ大丈夫です」と仲松さんはおっしゃっています。みなさんも気軽に立ち寄ってみてはいかがでしょうか?!

お酒と笑顔のあるお店は、地域の拠り所。/ 佐藤裕さん

南三陸に生きる人を巡り、一巡りしていく連載企画「南三陸ひとめぐり」。第30弾は、ハマーレ歌津の元気印「佐藤酒店」の佐藤裕さん。老若男女が集うお店の秘けつは、店主の笑顔。地域の拠り所となる空間を営む佐藤さんの想いに迫ります。

「お酒」で地域に愛され、貢献する

「はいっ!どーもねっ!」

店主佐藤裕さんの、ひときわ大きな笑い声が外まで響いている。今月オープンから2周年を迎える南三陸ハマーレ歌津の酒屋「佐藤酒店」。

震災後まもなく、歌津中学校裏の仮設テント商店街で営業を再開し、2012年9月には伊里前福幸商店街に店を出した。震災直後から、地域の人々に欠かせない「お酒」と「笑顔」を提供する店として、地元に愛されていた。まt、ボランティアや視察、観光など町外のお客さんが多く南三陸を訪れていることから、地域のブランド商品を企画。隣接の登米市にある石越酒造の協力を得て、オリジナル日本酒の開発を行うなど、お土産品を通じた地域振興にも大きな役割を果たしてきた。

ラベルの文字は、歌津出身で歌津中学校の元校長先生、阿部友昭さんに書いていただいたという

「昼は酒屋。夜は飲み屋」

さらに、夜集まれる場を作ろうとBAR営業を開始。「昼は酒屋。夜は飲み屋」として営業を開始してから仮設商店街時代も含め丸3年がたつ。

2017年4月のハマーレ歌津オープン時には多くの観光客が集い、商店街は活気を見せていたが、その後の三陸自動車道の延伸や、長く続く国道の整備などハマーレ歌津を取り巻く環境はこの2年で大きく変化。

「ハマーレ歌津全体で考えると、観光でふらっと立ち寄るお客さんは減少しているので厳しさを感じていることは間違いない。三陸道も伸びたので、歌津で降りずに通過してしまっている現状もあると思う」と話す佐藤さん。

そんな厳しい状況のなか、佐藤さんのお店には20代の若い子たちから70近い世代まで、まさしく老若男女が集う店となっている。

「お客さんの95%くらいが地元の方です!地元歌津はもちろん、志津川や、小泉あたりからも来てくれていてうれしい限り」と話す店主の佐藤裕さん。

昨年末からの忘年会新年会シーズンの客足などはそれ以前の2~3倍となるほどだという。

地域の人の拠り所に

どんなお客さんが来ても、佐藤さんのフランクで明るい店のスタイルは変わらない。相手が年下でも偉そうにすることはないし、目上の人でもへりくだったり、もてなしたりするわけではない。いい意味でアットホーム。

「もともと酒屋をやっていてお酒はあるので、飲み屋をするというのは自然な流れだったんです。とくに震災後は仲間で集まれる場所ないよねって。日常的に集まれるような場所があればと思ったんです。店をするにあたって不安はあった。けれど、やらないより悪いことってあるんのかなって考えて。人と喋るのが大好きだし、そのスタイルを生かせば拠り所を作れる自信はあったんです!」と笑う。

これまでにも、歌津地区で集まれる場所を作ろうとハマーレ歌津の各店舗と協力して「ビアガーデン」を開催するなど、さまざまなイベントを開催してきた。

「イベントで初めて知ってくれたお客さんが、その後店を訪れてくれる。そうしたよい流れができているから、今年の6月あたりから9月後半にかけては毎週なにかイベントをやるくらいな気持ちで、ハマーレ歌津の各店舗と協力しながらどんどん盛り上げていきたい!乞うご期待です!」と意気込む。

お酒と笑顔に満ちた店

「若い人はもちろんですが、親父世代にも利用していただけるようになったのはうれしいっす。このお店で世代を超えたつながりができたり、お客さん同士がこの店で友だちになっていったりして、これからも店がみんなの架け橋になっていければよい」と話す佐藤さん。

高級料亭のようなご飯があるわけでも、ヴィンテージのお酒があるわけでもない。なにも特別なことではないけれど、ここには飛びきりの笑顔と、笑い声が満ちている。それが、この町で生きる人々にとって拠り所となる所以かもしれない。

「運ぶ」で町に貢献したい!新社会人の一歩。

春の訪れとともに南三陸町でも新社会人が新たな一歩を踏み出している。有限会社山藤運輸に入社した佐藤利輝さんもその一人だ。

登米市豊里出身の佐藤さん。高校は志津川高校の情報ビジネス科に進学。実家が農家で、小さいときから自然に親しんでいたことから、高校では自然科学部に入り南三陸の自然の調査や発表などを行ってきた。

山藤運輸との出会いは高校2年生のときに行われた、町内の企業が集う出前企業紹介事業でのこと。「もともと車が好きだったので運送業には興味がありました。さらに、部活動で南三陸BIOのバイオガスの実験などに関わっていたこともあり、山藤運輸が液体肥料の散布も行っていることを聞き、とても興味をもちました」と話す。卒業後、実家のある登米市での運送業なども考えたというが、最終的に志津川での就職を希望したのも、単なる運送業ではなく、液肥運搬など町の事業との関わりの多さも大きな要因だったと振り返る。

入社後すぐに先輩社員に同行しながら宅配業務で地域を周っている。「実際に仕事をしてみると覚えることが本当にたくさんあるな、と。地元出身ではないので、まずは地名も覚えなきゃいけないですね。『物流は地域の血液』と社長も話しているように、地域において重要な役割の一端を担っているという責任をもってやっていきたい」と意気込んでいる。

人を「結」ぶ拠点「結の里」1周年

子どもから、高齢者まで誰でも気軽に集いふれあえる「みんなの居場所・ささえあいの拠点」結の里は4月で1周年を迎えました。1周年イベントには多くの来場者が集い、住民からも「この施設があってよかった」と喜びの声があふれていました。

「みんなの居場所・ささえあいの拠点」としてオープン

2018年4月1日の施設開所、そして4月27日に落成式が行われた「結の里」。

東日本大震災からの復興事業が進むにつれ、多くの住民が新しい環境での生活を始めています。2017年度にすべての整備が完了した災害公営住宅では、その多くがマンションタイプとなっています。これまでの生活から大きな変化を余儀なくされる新たな暮らしでは、周りに知り合いのいない高齢者や子育て世代の孤立化などの問題が懸念されていました。

そうした背景もあり、町内でも最も大きな高台移転団地となり、病院や役場が近いために高齢者がとくに多く入居している志津川東団地地区に、高齢者の在宅生活を支える介護サービス機能とともに、子どもから高齢者まで、町民の誰もが気軽に集い、地域での支え合い、助け合いが広がっていくような「みんなの居場所・ささえあいの拠点」が生まれました。それが「結の里」です。

施設の半分にはデイルームやデイサービス浴室などからなる定員17名のデイサービスセンター。残り半分は「えんがわカフェ」と名付けられたカフェラウンジ、社会福祉協議会のスタッフが常駐する「ささえあい支援オフィス」などが入っています。

「手と手を結ぶ 笑顔を結ぶ 心を結ぶ」という意味が込められた「結の里」。一年前の開所式の際、佐藤仁町長が「全国的にもあまり例をみない複合施設。これからの展開に期待したい」と述べたとおり、一年間でさまざまなチャレンジと取り組みがこの場所で生まれました。

右側に見えるのが「結の里」。向かいは、マンションタイプの災害公営住宅

賑わいを見せた一年間

いつでも誰でも気軽に立ち寄ってお茶っことおしゃべりを楽しめる場として期待されていた「えんがわカフェ」には、子ども連れのママさんが集まり、ママ友の交流の場に。さらにデイサービスに通う高齢者も交じって交流するなど、目標としていた多世代交流が自然と生まれています。

月に1回開催されていた「みんな食堂」では、子どもから高齢者まで地域の人々が集い、ともに夕食を作り、食卓を囲む姿が見られました。

また、公営住宅の中庭で開催された「走らないミニ運動会」や、集会所で開催された「映画祭」などさまざまなイベントがスタッフそして住民で構成される実行委員会で企画され、一年間を通じて盛り上がりを見せていました。

平成最後の夏、おどれ!!結の里で。

結の里・みんな食堂、開店。40名以上が集い、カレーづくりで交流。

かつて志津川にあった映画館が「新志津川みなと座」として一日限りの復活

「繋」Tシャツを着用する社会福祉協議会スタッフ。まさしく住民同士を「繋」げるのに欠かせない存在だ

老若男女が集った1周年イベント

桜も満開となった春の暖かな陽気のなか、「結の里1周年イベント」が4/21に開催されました。

「高齢者から子どもたちまで1年間の間大変多くの方にご利用いただけたことに感謝申し上げたい」と南三陸町社会福祉協議会会長阿部東夫さんは挨拶を行いました。

向かいにあるあさひ幼稚園の園児たちや地域住民が協力して作り上げた手作りの看板もお披露目されました。「結」の文字のなかに含まれている「糸」を藍で染めて、一つひとつの文字を作った、世界にひとつのオリジナルの看板です。

また志津川中学校の生徒が考案したオリジナルのキャラクターも発表されました。「地域の支え合いをモチーフにした」というように、結の里のコンセプトにぴったりのキャラクター。今後のイベントにも大活躍することでしょう。

「今日も多くの方に集まっていただきうれしい限り。子どもたちもいて、高齢者もいて、当初描いたとおりの多世代交流ができているように思います」とうれしそうに会場の賑わいを見つめる阿部東夫会長。今後の展開について伺うと「東団地に住む住民以外はなかなか集まりにくいというのが現状です。入谷や戸倉、歌津の住民なども足の問題が大きいとはいえ、集えるような工夫をしていきたい。またこういった場に出てくるのはやはり女性が多いので、男性高齢者が集まれるようなことも企画していければ」と話していました。

この場所でこれから育まれる「結」。住民とともに、居心地のよい居場所を目指して、これからも歩みを続けていきます。

2019年4月29日/定点観測

南三陸町市街地の復興の様子を定点観測しています。戸倉地区、志津川地区、歌津地区の3箇所の写真を公開しています。

写真をクリックまたはタップすると大きくなります

戸倉地区

撮影場所 [38.642969, 141.442686

パノラマ

志津川地区

撮影場所 [38.675820, 141.448933

パノラマ

パノラマ

パノラマ

パノラマ

歌津地区

撮影場所 [38°43’5″ N 141°31’19” E

パノラマ

他の定点観測を見る

春は海藻シーズン♫ この時期、ぜひ磯の香りを食してみましょう。

野菜ソムリエ目線の情報を織り交ぜながら四季折々の旬をお伝えする連載企画。南三陸町では、この時期、春告げ野菜とともに春を告げる生の海藻類、「わかめ」「めかぶ」「ふのり」「あかもく」「ひじき」「まつも」などがズラリと店頭に並びます。今回はこの中の「まつも」をご紹介します。

獲れたての海藻の香りと食感に魅了されて

私の登米市から南三陸町への通勤生活は、もうすぐ満3年を迎えます。南三陸町が勤務先となってからというもの、が家での食卓のラインナップは、少しずつ変化し、すっかり海産物を食べる習慣が定着しました。

ほぼ毎日といってもいいほど海藻を食べるようになったきっかけは、春に獲れたばかりの海藻を食したときに、その磯の香りと食感のよさに魅了されたことでした。

海藻といえば、一般的には加工品の塩蔵や乾物等が知られていますが、2~4月にかけてのわずかな時期にのみ楽しむことができる「生食」のスタイルを、見逃すわけにはいきません。

調理も簡単。お手軽な「まつも」

今回は「まつも」をご紹介します。

松の葉に形が類似していることから「まつも」と命名され、特に海藻の中でも磯の香りが格別であり、シャキシャキとした食感とトロミを楽しむことができます。

南三陸町の住民にとっては、とても身近な食材なのですが、以前の私には「未知の食材」でした。

また、購入する際には、さすがは海の町!と思わずうなってしまうこともしばしば。時価は、驚くほど安価で、量が多いことにも驚かされてしまいます。お得で喜ぶべきですが、食べ方について無知な私は、余らせてしまうことが予想され買わずじまいでした。

課題は、「無駄なく美味しく食べ切る」こと。それは、やっぱり地元の方々に聞くことが一番。思い切って店員さんにおすすめの食べ方を質問してみると、

「湯通して、そのまま酢の物やお味噌汁などでどうぞ」

この教えに、思わず「簡単そう!毎日食べられそう!」と嬉しくなり、量の多いことを気にすることなくお買い物ができるようになりました。

そして、今ではすっかり我が家の定番献立となっているのが、『まつもの酢の物』です。

さっと湯がき、ポン酢または酢醤油をかけていただきます。シャキシャキとした食感と香りが楽しめる簡単酢の物です。

『まつもの味噌汁』

いつもの味噌汁にパッと海藻をはなすと鮮やかな緑色に。いつもの味噌汁が磯の香りたっぷりにグレードアップ!

『まつもの天ぷら』

サクサクとした中にトロっとした食感がやみつきに。

からだにもうれしい海藻をたっぷり食べてください!

さらにうれしいことに、海藻は低カロリーでありながら、栄養価も豊富な食材です。特にまつもは、骨や歯を形成するのに必要なミネラルが豊富で、カルシウムやリン、マグネシウムなどが含有されています。さらには、ビタミンAを多く含み、強力な抗酸化作用が期待できること、またカリウムも多く含まれており、塩分や老廃物の排出を促し体内のミネラルバランスを整えてくれます。

まつもをはじめ海藻類には、不足になりがちな水溶性食物繊維が豊富に含まれており、便秘を改善し肥満を予防したり、腸内での糖の吸収をゆるやかにして食後血糖値の急激な上昇を抑えます。毎日少しずつでもいいので様々な調理法やメニューで、ぜひ食卓に取り入れていただきたいオススメの食材です。

今がまさに旬の海藻、ぜひ磯の香りを存分に味わってみてください。そして南三陸町でのお買い物では、お店の方にどんどん食べ方を聞いてみてくださいね。とびきりの美味しい食べ方を教えてくれますよ。