FSC認証の普及で次世代につなぐ山づくり! 地域おこし協力隊 渡邉陽子さん

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令和5年7月以降、南三陸町では新たに県内外から男女3名が地域おこし協力隊に着任しました。今回は、林業の道に進んで6年。南三陸の山林管理の取り組みに惹かれ移住を決意した渡邊陽子さんを、インタビューを交えながらご紹介します。

FSC認証取得の町。それでも残る課題。

2015年10月、国際的な森林管理認証「FSC認証」を南三陸森林管理協議会が取得しました。FSCはForest Stewardship Council(森林管理協議会)の略。責任ある森林管理を世界に普及させることを目的とする非営利団体で、国際的な森林認証制度を運営しています。
震災以前から、林業関係者の有志が集まり、今後日本でも森林認証の取り組みが必要になると考え、認証取得について検討されてきました。しかし、取得には至らないまま足踏み状態が続きます。震災が起こり、それまで利益優先だった競争の考え方から共に創っていく共創の考え方へと変化。町でも、自然を活かした、災害に強く安心・安全に暮らせる町づくりのビジョンを掲げ、官民共同で推進していく「南三陸町バイオマス産業都市構想」が国の認定を受けました。

南三陸町バイオマス産業都市構想 概要図

このような背景から、再び認証取得に動き出し、議論を重ねていきます。そして、町の未来を考え、1つの会社だけではなく、グループ認証という仕組みを使い、「南三陸森林管理協議会」として仲間を作り、FSC認証取得へと動いていきました。
町の総面積16,340haの76.9%を森林が占める南三陸町。そのうち、認証林は公有林、私有林2,481haとなります。持続可能な林業を目指し、より適切な森林管理を積極的に追及する動きがある一方で、多くの放置山林も存在。山の働きによってもたらされる恩恵は、適切に管理することで生まれます。

最初から最後まで見届けたい!

より多くの方に、この考えを広めていくことが必要であると声をあげるのは、今回協力隊に着任した渡邊陽子さん。宮城県白石市出身の渡邊さんは、大学卒業まで宮城県で生活していました。大学では、水文学を専攻。水文学は、山に降った雨が、川を流れ、町へ流れ、海へ出ていくという、大きな水の流れの関係を扱っている学問で、土木に寄った学科に在籍していました。渡邊さんは、今ある資源を活かしていけるような仕事がしたいと思い、林業関係の道に進むことを決意。山の管理をする国の機関「国立研究開発法人 森林整備センター」に就職しました。愛知、兵庫、山形を転々としながら経験を積むこと6年。現場の作業は森林組合や林業事業者に依頼をし、管理の大元として働く中で、長い時間をかけて育つ木々を、最初から最後まで見届けたい、1つの場所で山づくりというのをどこかで腰を据えてやってみたいと思うようになりました。学生時代に研修で町を訪れ、FSC認証取得の取り組みなどが印象に残っており、今回所属する株式会社佐久に相談。佐久で感じていた山の課題を解決していけるよう、協力隊制度を使い転職することになりました。

ミッションはFSC認証の継続化と普及で次世代につなげる

協力隊の活動として掲げられているのは大きく3つ。
①担い手の育成・強化
②認証山林の拡大
③認証山林拡大にあたり、さらにFSCを普及していくための商品開発やイベントの企画運営
メインとなるのは、FSC認証の継続化と普及で、個人の負担が大きかった作業を会社が事務局として行えるよう、教えてもらいながら、取り組んでいきます。「消費者への普及と併せて、山主の方にも山に関心を持ってもらえるような活動をしていきたい」と話す渡邊さん。

今ある山の資源を整備した状態で次世代に渡したいと、熱い思いを持った渡邊さんに、力を入れて取り組みたいことや将来について伺いました。

渡邊陽子さんにインタビュー

FSC認証を扱うにあたり着任前後でギャップは感じた?

「ハードルが下がりました!持続可能な林業経営や環境に配慮した山づくりというのは、FSC認証だから初めてやります!大幅に変えます!というものではなくて、これまでやられてきた丁寧な山づくりというのがそのままFSC認証につながりました。ここに来る前は認証の基準に合ったものをやらないといけないのではないかと、すごいハードルが高いものだと思っていました。ではなく、これまでやられてきた丁寧な山づくりというのが、そのままFSC認証につながったと分かり、高いと思っていたハードルがそうではなかったと気づかされました。それは、先人たちがしっかりした山づくりや山仕事をしてきたことの地続きなんだなと。なので、認証取得はこのような過程の証明であると感じます」

特に力を入れて取り組みたいことは?

「山主や地元の人に対してもFSC認証の普及をしていきたいです。消費者にFSC認証を知ってもらい、認証材が入ったものを使ってもらうということも、持続可能な山の管理とか環境への貢献になると思いますが、山の所有者の方がそういう認証だったりとか自分の山を管理していくというところに関心を持ってもらうことが、よりちゃんと管理された綺麗な山を次世代に残していくというところにつながっていくと思うので、ここに力を入れて取り組んでいきたいです」

協力隊卒業後に見据える姿は?

「普及とかの関係だと、少しでも実績としてここまでできましたっていう数値化みたいなのができるかは分かりませんが、こんな取り組みをしましたとか、そういう実績はこの3年間で残していきたいと思います。100%全てはできないかもしれませんが、残った分は今後こういう流れで達成していきますみたいなところを言えるような形で終えられるといいかなと思います」

信念を持って挑戦する若き山人

移住後はシェアハウスで生活しており、「いろいろ揃っていたので引っ越しはしやすかったです。ゴミ出しのルールや日常のちょっとしたことなんかを共有スペースで誰かに会うと聞けたりしますし、町に関する情報交換もできたりするので、移住した直後の生活空間としておすすめです!」と生活について移住者の目線で説明。
今後の意気込みについて、「年配の方々が一番山を持っていて、どうするか悩んでいると思うので、地元の方が来てくれるようなイベントを仕掛けたり、地元の方に向けた説明会であったり、FSC認証に則った森林管理があるというのを、地道な普及によって少しでも山に関心を持ってもらえる地主さんを増やしていくのが、私が活動していく1歩目です!」と話していました。
山を通じて、町の未来が作られていく大事な役割。渡邊さんがその未来に向けて引っ張っていく姿に、注目です。

※地域おこし協力隊

地域おこし協力隊は、地方自治体から委嘱を受け、地域の魅力発信や特産品の開発、住民の生活支援など、さまざまな方向から地域を活性化させる活動に取り組む都市部からの移住者です。南三陸町では隊員が地域の生活になじむことができるよう、また起業・事業継承に向けたノウハウを学びながら活動に取り組めるよう、町内で活動している事業者・団体が隊員を雇用する形をとっています。今回新たに3名の隊員が加わり、2024年1月現在、町には12名の隊員が活躍しています。

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