ひころの里 リニューアルオープン&ひころマルシェ開催

入谷の里文化が体験できる「ひころの里」がリニューアルオープンを迎えました。記念すべき再オープン日には、豊かな自然の中で健やかに生きる人たちのためのイベント「ひころマルシェ」も開催されました。

入谷と養蚕の歴史

海が注目されがちな南三陸町。そんな中、山里の地域にあり、町内でもひときわのどかな空気が漂うのが入谷地区です。かつては産金でたいへんに栄え、「入谷千軒」と称されるほど家々が立ち並んだと伝えられます。花崗岩の巨石が至る所に点在し、また数々の民話が残り「宮城の遠野」と呼ばれることもあります。

沿岸部が漁業中心であるのに対し農業や畜産業が主産業となっており、土地の大部分を占める山林と田園が、四季折々さまざまな表情を見せてくれる、とても美しい地域です。

産金の衰勢後は、山内甚之丞により養蚕と製糸技術が伝えられ、仙台藩の養蚕発祥の地として県内の養蚕業の拠点を担っていました。かつては志津川地区に製糸工場も存在し、ここでつくられたシルク生糸「金華山」は、パリの万博でグランプリも受賞しています。

現在でも入谷に古くから残る旧家には、養蚕業を営んでいた造りや器具が残されている事が多いです。

ひころの里リニューアルオープン&「ひころマルシェ」開催
南三陸町入谷地域 花見山から眺めた初夏の風景

入谷の文化を伝える「ひころの里」

養蚕を中心に入谷の里文化と歴史を伝え、新たな地域再生の力にするべく、町が平成7年に設置したのが「ひころの里」です。

「ひころ」とは、地域の言葉で「光」の意味。

町文化財に指定され旧家のくらしぶりを色濃く残す「松笠屋敷」や、養蚕文化の伝統を伝える「シルク館」などがあり、地域活動の拠点として、あるいは観光施設として重宝されています。

また、敷地内には豊かな自然が残り、広い芝生の広場は地域の子どもたちの遊び場としても活躍しています。

ひころの里リニューアルオープン&「ひころマルシェ」開催

ひころの里、リニューアルオープン

2016年から指定管理者が変更となった、ひころの里。「自然とともに生きる知恵 孫の孫まで伝えたい」と決意新たに、晴れて5月22日、リニューアルオープンを迎えました。

これまで未利用であった建物を利用したカフェスペース「cocoro no sato ふれあい茶屋」では、コーヒーやかりんとうまんじゅうを味わいながら、涼しい風を浴びてひと休み。ふれあい茶屋で提供されるかりんとうまんじゅうは、みんな大好き・売り切れ必至商品です。

食事処「ばっかり茶屋」では、地域のお母さんたちが丹精込めた郷土料理を楽しめます。蕎麦御膳では十割蕎麦に季節の天ぷらがつき、地域の旬の味覚を堪能できます。

入谷のグリーンツーリズムインストラクターたちが提供する各種体験も用意され、再オープン日のこの日も、オープニング企画として、野草を摘み、その場で味わえる「野草つみ散歩」が実施されました。

ひころの里リニューアルオープン&「ひころマルシェ」開催

「ひころマルシェ」開催

リニューアルオープン日には同時企画として、遊び・食・体験・買い物と、さまざまな出店ブースが一堂に会した「ひころマルシェ」も開催されました。

「おいしい、楽しい、すこやかなくらしを、この土地で」というテーマの通り、この土地らしい、地域の良い所を存分に体現した出店者たちが、町内や近隣市町村から集まりました。

おいしく健康的な飲食物の販売、採れたて旬の農産物の販売、楽しくエコな体験ブース、自然を使ってのびのびと遊ぶ遊びのコーナー、広い芝生でのヨガ体験などなどに、訪れたお客さんたちも自然と笑顔を見せます。

ひころの里リニューアルオープン&「ひころマルシェ」開催

地域資源を活かす

居心地よく気持ちの良い雰囲気を醸し出している要素の一つは、徹底された会場のデザイン。

ブルーシートや鉄骨テントは使わない。かわりに竹や木を使う。

地域にあるものを使うことで、地域の景観やくらしに馴染んだ雰囲気づくりができると、主催のNPO法人ウィメンズアイのみなさんは考えます。

子ども遊び場コーナーには切り出した竹で手づくりされた竹馬や竹かっぽ、森のようちえん・しょうがっこう体験では里内の森や池に探検にいき自然と触れ合って遊ぶ。現代の便利なくらしや用意されたたくさんの遊びの中で、忘れかけられている楽しさを、子どもたちにも伝えます。

片隅では廃材を用いてその場で木工作業をする人、思い思いにシートやテントを広げピクニックをする人、芝生の土手に腰掛けギターをつま弾くなど、穏やかで自由な空気が漂います。

ひころの里リニューアルオープン&「ひころマルシェ」開催

地域の魅力を活かした、地域らしいくらしを目指して

便利な道具が蔓延し情報化が進む現代社会で、たとえ人口が1万人あまりのこの地方社会の中でも、東京とさほど変わらないくらしをすることは可能です。

くらしがある意味で豊かになって行く中で、失われていく地域の文化や歴史・伝統、そして地域らしさ・特色・魅力があることも確かです。

地域に存在する資源を利用しないことで里山や里海は荒廃し、気づいた時には貴重な魅力はもう無いかもしれません。

入谷の郷土や文化、美しさ、楽しさ、おいしさ、すこやかさ、そんなものたちを今一度思い出させてくれる魅力が、ひころの里とひころマルシェにはありました。

運動会の翌日にもかかわらず、元気に走り回る入谷の子たちのすこやかな笑顔が、地域資源の豊かさを物語っていました。

「いつでも気軽に遊びに来てほしい」と語るのは、リニューアルにあたり新たに管理者の一員となられた山内恵美子さん。地域の魅力を活かした、地域らしさを、ひころの里で体感してみませんか?

ひころの里リニューアルオープン&「ひころマルシェ」開催

〈6月1日放送〉みなさんぽ

放送日:2016年6月1日

「オープニングコール」は、佐藤酒店の佐藤裕さんから始まり、「まちのひと」はさんさん商店街にある飲食店志のやの高橋修さんのきらきら丼のお話です!

そして、今週のイチオシのコーナーは、丸栄水産 ほやくんです!

オープニングコール

佐藤酒店の佐藤裕さんの佐藤酒店バーのお話からはじまりました。

〈6月1日放送〉みなさんぽ 〈6月1日放送〉みなさんぽ 〈6月1日放送〉みなさんぽ

まちのひと

志のやの高橋修さんのきらきら丼のお話です!

〈6月1日放送〉みなさんぽ

今週のイチオシ

大正12年創業 こだわりと逸品の海産物専門店 丸栄(まるえい)水産(すいさん)工業(こうぎょう)の「ほやくん」です。

こちらは、南三陸町産の新鮮なホヤを自社工場で1個1個丁寧に乾燥させ、旨味をギュッと凝縮させた商品です。

ホヤは、鮮度によって味が大きく変わると言われていますが、丸栄水産工業では、南三陸町産のホヤを、水揚げしたその日に下処理をしているので、変な臭みのない、ホヤ本来の味を楽しむことができます。

噛めば噛むほど、口いっぱいに旨味が広がるので、酒の肴はもちろん、おやつにもピッタリです。皆さん是非一度ご賞味ください。

「ほやくん」は、30グラム 税込600円。 60グラム 1,080円で、南三陸町歌津地区の直売所「みなさん館」で販売中です。また、丸栄水産工業のホームページでネット販売も行っています。他にも、汐(しお)うに、塩蔵(えんぞう)わかめ、ほや塩辛、イクラめかぶなど、沢山の商品がありますので、チェックしてみてください。

参考サイト

寄稿・取材依頼のページを公開しました

南三陸の”いま”を伝えるために、寄稿記事および取材の依頼を受け付けています。下記のリンクからお問い合わせください。

寄稿・取材依頼フォーム

  • 入力していただいた個人情報は、ご依頼内容に対しての回答のみに使用いたします。
  • 基本的にメールでの回答をさせていただきますが、急を要する場合のみ入力していただいた電話番号へお電話する場合があります。
  • ご依頼内容によりましては、ご希望に添えない場合があります。予めご了承ください。

3名の今後の活躍に期待! 南三陸町初の「地域おこし協力隊」

南三陸町地域おこし協力隊委嘱状交付式が、役場町長室にて執り行われました。委嘱状が交付された3名の協力隊員。南三陸町で第一期生となる彼らに活動の意気込みを語ってもらいました。

地域おこし協力隊とは

地方自治体が、都市住民を受け入れ「地域協力活動」に従事してもらい、定住を図りながら、地域の活性化につなげる制度です。

総務省のホームページには、このように書かれています。

”地域おこし協力隊は、全国で2,625人が活躍しています(平成27年度)。そして、昨年実施した地域おこし協力隊定住状況等調査によれば、任期終了後、隊員の約6割は引き続き同じ地域に定住しており、同一市町村内に定住した隊員のうち約2割の方が起業しています。”(総務省

南三陸町地域おこし協力隊委嘱状交付式

2016年5月16日に南三陸町地域おこし協力隊委嘱状交付式が、役場町長室にて執り行われました。南三陸町では第1期生となる3名は、新規農業振興や地域資源を活用した事業化、そして教育旅行受入れ拡大のための民泊推進委員として活動を行っていきます。

3名の今後の活躍に期待! 南三陸町初の「地域おこし協力隊」

隊員の熱い思い

地域資源を活用した事業化

ボランティアで南三陸町に訪れ、町の魅力に惹かれた中村さん。隊員として意気込みは「南三陸町の魅力を沢山の人に知ってもらいたいと思い、志願しました。協力隊の活動を通して、地域の人に貢献して町を元気にしていきたい」と意気込みを語り、地域資源を活用した事業として、缶詰制作等の活動を行います。

3名の今後の活躍に期待! 南三陸町初の「地域おこし協力隊」
神奈川県出身 中村悦子さん

新規農業振興

大学生時代は海洋教育を学んでいた藤田さん。「のどかで新しい暮らしを楽しんで、地域のために活動していきたい」と、意気込みを語っていただきました。農家の支援として、ブランディングなどの活動を行っていくとのことです。

3名の今後の活躍に期待! 南三陸町初の「地域おこし協力隊」
埼玉県出身 藤田岳さん

教育旅行受入れ拡大のための民泊推進委員

民泊推進委員に志願した高橋さん。「南三陸町はエネルギーのあるところで、民泊を通して、未来に続くまちづくりを行っていきたい」と意気込みを語って頂きました。

3名の今後の活躍に期待! 南三陸町初の「地域おこし協力隊」
東京都出身 高橋未來さん

3名の今後の活躍に期待したいと思います!

〈5月25日放送〉みなさんぽ

放送日:2016年5月25日

「オープニングコール」は、南三陸ふっこう青年会から始まり、「まちのひと」は南三陸町観光協会 南三陸福興市担当 宮本隆之さんの南三陸福興市のお話です!

そして、今週のイチオシのコーナーは、魚市場キッチンの缶詰!

オープニングコール

南三陸ふっこう青年会の「えいえいおー」からはじまりました。

まちのひと

南三陸町観光協会 南三陸福興市担当 宮本隆之さんの南三陸福興市のお話です!

〈5月25日放送〉みなさんぽ
南三陸町観光協会 南三陸福興市担当 宮本隆之さん

今週のイチオシ

南三陸おふくろの味研究会の皆さんによる新商品「手作りの缶詰シリーズ」です。

「おふくろの味研究会」は、キリンビールマーケティングの「復興応援キリン絆プロジェクト」の支援により、南三陸町の漁師や農家のパワー溢れるお母さん達を中心に結成されました!

気になる缶詰の中身ですが、地元の新鮮なタコとカキを使用、 味付けは、「醤油麹煮」と「アヒージョ」があり、全部で4種類を展開中です。

和風の「醤油麹煮」は、日本酒によく合います。にんにくとオリーブオイルの風味豊かな「アヒージョ」は、白ワインにピッタリ!

新商品「手作りの缶詰シリーズ」は、南三陸町 さんさん商店街隣のみなみな屋で販売中です。

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2016年5月20日/定点観測

南三陸町市街地の復興の様子を定点観測しています。戸倉地区、志津川地区、歌津地区の3箇所の写真を公開しています。

写真をクリックまたはタップすると大きくなります

戸倉地区

撮影場所 [38°38’41” N 141°26’13” E

2016年5月20日/定点観測
2016年5月20日/戸倉地区

志津川地区

撮影場所 [38°41’12” N 141°26’34” E

2016年5月20日/定点観測
2016年5月20日/志津川地区

撮影場所 [38°40’44” N 141°26’58” E

2016年5月20日/定点観測
2016年5月20日/志津川地区

歌津地区

撮影場所 [38°43’5″ N 141°31’19” E

2016年5月20日/定点観測
2016年5月20日/戸倉地区

他の定点観測を見る

〈5月18日放送〉みなさんぽ

放送日:2016年5月18日

「オープニングコール」は、先週に引き続き志津川高校商業部の生徒から始まり、「まちのひと」はNPO法人ウィメンズ・アイ 栗林美智子さん、入谷ふるさと振興会 山内登美子さんからひころマルシェ・ばっかり茶屋リニューアルオープンのお話です!

そして、今週のイチオシのコーナーは、おら酒風神

オープニングコール

志津川高校商業部の生徒。福興市で地元のタコを使ったたこ焼きを販売して、売上金を義援金として熊本や九州に送るそうです。

〈5月11日放送〉みなさんぽ
志津川高校商業部

まちのひと

NPO法人ウィメンズ・アイ 栗林美智子さん、入谷ふるさと振興会 山内登美子さんからひころマルシェ・ばっかり茶屋リニューアルオープンのお話です!

〈5月18日放送〉みなさんぽ
リニューアルオープン予定のばっかり茶屋「餅御膳」
〈5月18日放送〉みなさんぽ
堂々とインタビューに応えるみなさま
〈5月18日放送〉みなさんぽ
NPO法人ウィメンズ・アイ 栗林美智子さん、入谷ふるさと振興会 山内登美子さん

今週のイチオシ

新発売の純米吟醸原酒「おら酒 風神」と「おら酒 戸」
まず、「おら酒」ですが、こちらは、南三陸町のまちづくり、復興の活動から産まれた南三陸のお酒です!

今から2年前、南三陸町復興推進ネットワークが主体となって、「南三陸おらほの酒づくりプロジェクト」がスタートしました。町内の遊休農地や東日本大震災で塩害を受けた田んぼを活用して作られた「ひとめぼれ」を100%使って、「おら酒」は製造されています。

さて、新商品の純米吟醸原酒「おら酒 風神」は、気仙沼の角星さんで醸造しました。華やかな香りと繊細な酸味によるスッキリとした後味が特徴です。ワイングラスで飲むことで、より一層香りを楽しむことが出来ますよ~。

また「おら酒 戸」は昨年度から引き続き加美町の中勇酒造店さんで醸造しました。南三陸の地酒を通して新たな魅力を是非感じてみてください。

純米吟醸原酒「おら酒 風神」、「おら酒 戸」は、さんさん商店街のヤマウチ、伊里前福幸商店街の佐藤酒店、登米市佐沼の西城酒店で販売中です。

〈5月18日放送〉みなさんぽ
おら酒 風神

〈5月11日放送〉みなさんぽ

放送日:2016年5月11日

「オープニングコール」は、志津川高校商業部の生徒から始まり、「まちのひと」はNPO法人夢未来南三陸 まちづくり事業部 部長 小野寺寛さんから田束山のつつじについてのお話です!

そして、今週のイチオシのコーナーは、南三陸まなびの里いりやど

オープニングコール

志津川高校商業部の生徒。福興市で地元のタコを使ったたこ焼きを販売して、売上金を義援金として熊本や九州に送るそうです。

〈5月11日放送〉みなさんぽ
志津川高校商業部

まちのひと

NPO法人夢未来南三陸 まちづくり事業部 部長 小野寺寛さんから田束山のつつじについてのお話。

〈5月11日放送〉みなさんぽ
NPO法人夢未来南三陸 まちづくり事業部 部長 小野寺寛さん

今週のイチオシ

今週のイチオシは、南三陸町入谷にある宿泊施設「南三陸まなびの里いりやど」です。

いりやどは2013年3月にオープンした、大学生や社会人向けの宿泊研修施設です。もちろん、個人の方の宿泊のみのご利用も可能です。ビジネスや里帰り、観光のお客様にも人気です。中でも自慢なのは、地元出身の親方(料理長)が腕をふるうお料理です。地のもの、旬のものをふんだんに使ったボリューム満点の料理は、一食の価値あり!この料理に惹かれてリピーターになるお客様も多いんです。酒好き・話し好きの親方から、料理や南三陸の豆知識が披露されることもしばしば。ぜひ泊まって、南三陸の食や観光を満喫してみてください!

海水浴場 サンオーレそではま復活へ。安全祈願祭で垣間見た、南三陸町民の心の風景

「サンオーレそではま」復旧工事に伴う安全祈願祭が執り行われました。かつて年間約5万人も、訪れたサンオーレそではまは、町の賑わいの象徴ともいえる場所。役場の方の話から、今も町民の心に残る「夏の風物詩」の風景が垣間見えました。

かつては県内有数の海水浴場、そして町民憩いの緑地公園

荒島を正面に見る袖浜の海岸。その波間には津波で破壊されたままの消波ブロックが顔を覗かせたまま。あいにくの天候のなか防波堤で羽を休める一匹のカモメが物悲しさをいっそう際立たせます。

かつて、この場所は県内有数の海水浴場「サンオーレそではま」と、町民憩いの緑地公園「荒島パーク」のあった場所でした。今は、復旧工事に伴い盛土がされているため、バリケードが設置され、賑わいを見せることはありません。そんな袖浜海岸で、2016年5月11日、復旧工事に伴う安全祈願祭が執り行われました。

海水浴場「サンオーレそではま」復活へ。安全祈願祭で垣間見た、南三陸町民の心の風景

「住まい」、「なりわい」のその先、「にぎわい」の復活へ

海水浴場「サンオーレそではま」復活へ。安全祈願祭で垣間見た、南三陸町民の心の風景

安全祈願祭は、上山八幡宮の工藤庄悦宮司代務者のもと、厳かに執り行われました。最後の挨拶で、佐藤仁町長が力強く語りました。

「東日本大震災から今日で5年と2ヶ月が経ちました。『住まい』の面では、今年中にようやく住宅再建が完了し、長い仮住まいの生活に一旦の区切りがつけられます。『なりわい』の面では、来月6月1日に新魚市場がオープン、年度内にはさんさん商店街の本設移転が完了します。『住まい』『なりわい』と来て、今度は『にぎわい』。震災前には、町内外の子どもたちでいっぱいになった『サンオーレそではま』。復活すれば、また以前のように多くの人に訪れていただけることでしょう」

海水浴場「サンオーレそではま」復活へ。安全祈願祭で垣間見た、南三陸町民の心の風景

海に親しむ場を取り戻したい

祈願祭終了後、役場産業振興課の方にお話を伺いました。

「昔は夏と言えば、この場所に多くの人が集まった。お客さんの水着やらパラソルがとっても色鮮やかで、いかにも賑やかという感じ。町の人にとっても印象深い、あの風景を取り戻したいよね。やはり海辺の町に住む人間として、海に親しめる場があるというのは、ひとつの誇りにもなるだろうしね」

海水浴場「サンオーレそではま」復活へ。安全祈願祭で垣間見た、南三陸町民の心の風景
平成22年当時のサンオーレそではま(提供:南三陸町観光協会)

「隣の荒島パークは、芝生の広場に遊具が備え付けてあって、家族で来たら小さい子はそっちで遊ばせたんだよね。グラウンドゴルフ場もあったから、おじいさんおばあさんもそこに寄ったりして」

海水浴場「サンオーレそではま」復活へ。安全祈願祭で垣間見た、南三陸町民の心の風景
平成22年当時の荒島パーク(提供:南三陸町観光協会)

そう言って海を眺める役場の方の目には、かつての賑わった海辺の風景が写っているかのようでした。震災以降、養殖業などの”なりわい”としての「海」は取り戻されつつあります。しかし、子どもたちが遊んだり、家族で思い出をつくるような”にぎわい”としての「海」はまだ戻ってきていません。もう一度、かつての海辺の風景を取り戻したいと思う切実な願いが伝わってきました。

来年夏は、南三陸の海で泳ごう!

工事はこの後、本格的に着手されます。防波堤のかさ上げや、海中で波を防いだり、砂の流出を防ぐための堤を設置する工事が行われ、子どもたちが安全に遊泳できる環境を整えていきます。同時に、荒島パークは以前のような芝生の広場を整備し、トイレやシャワー棟も設置される予定です。来年の海水浴シーズンには、部分的にオープンできることを目指しているそうです。もう一度この海辺に子どもたちの歓声が響き渡るのが楽しみでなりません。

海水浴場「サンオーレそではま」復活へ。安全祈願祭で垣間見た、南三陸町民の心の風景
夕暮れのサンオーレそではま 撮影:2016年4月16日

いつかは大好きなこの町で / 志津川高校生徒会長・大坂日菜さん

南三陸に生きる人を巡り、一巡りしていく連載企画「南三陸ひとめぐり」。第一弾は志津川高校生徒会長の大坂日菜さん。被災地の生徒会長という重責、町への想い、そして夢ーー。明るく振る舞う彼女の素顔に迫りました。

持ち前の明るさで場を盛り上げる!

リーダーには大きく2つの分類があるとされる。論理的に思考し人々を納得させる「ロジカル型リーダー」、そしてみんなのやる気を引き出し盛り上げていく「モチベーター型リーダー」。

屈託のない笑顔で人を魅了し、その明るさで場を盛り上げる彼女は、間違いなく後者だ。取材をしているだけで、なぜか彼女といっしょにアクションを起こせたらおもしろいことができるんじゃないのか、自然とそう思わせてくれる。

そんな彼女の名は、大坂日菜さん。その名の通り、お日様のような明るさを武器に、現在志津川高校の生徒会長を務めている。

”被災地”の生徒会長を担うということ

熊本で大地震があった夜のこと。「私たちになにかできることはないか」と、自然に生徒会メンバーが話し合いをはじめた。その中心にいたのが彼女だ。

すぐに校内で募金活動がはじまった。「ここに通うみんなは、地震が他人事ではない。だからみんなが自然と協力してくれた」

少ないお小遣いから、アルバイトで貯めたお金から、毎日のように募金してくれた子もいた。

そんな活動のなかで彼女の脳裏に浮かんでいたのは、生徒会で活躍してきた先輩たちの姿。

「地震のことを風化させてはいけない」「この学校を変えたい」という想いを受け継いでいきたい。そんな気持ちで生徒会長に立候補した。

東日本大震災で未曾有の被害があった南三陸町。その中心に位置する志津川高校で生徒会長を担うこと。それは切っても切り離せないものなのかもしれない。

責任の大きさに押しつぶされそうになったこともある。「はじめの頃は、震災の話をすると泣いてしまってうまく話せなかったり…。それでもまわりのみんなが助けてくれた。今は、その頼もしかった先輩たちを越えられるような生徒会を作りたいって思いで頑張れます」

高校生が背負うには重すぎるような運命のなかで、彼女は持ち前の明るさでみんなを引っ張っていく。

「会長を任されたからにはやり通すしかない。忙しいとか言ってられない」

「いつかは好きなこの町で」志津川高校大坂日菜さん

南三陸を人と人がつながれる町にしたい!

生徒会長としての任期は残り半年ほど。

「私にできることは、この町に来てくれた人に町のよさを伝えていくこと。海がほんっとにきれいで、いろんな体験ができる。そして、海のものも、山のものも、すごくおいしい! みんな明るく、笑顔でがんばっているのがこの町のいいところ! きっとまだまだ私が発見できていない魅力もいっぱいある町なんだと思う」と声が弾む。

これまで、全国にいる同年代の高校生と何度も交流を図ってきた。

「すてきな町だね」「また遊びに来たい」という全国の友だちの言葉が彼女の誇りだ。

「震災の町というイメージではなくて、楽しくて、おもしろいから南三陸に行きたい!って思えるような町になったらなって。人がいっぱい来る町になったらうれしい」

震災以降、全国の人との出会いがあったから、人と人のつながりの大切さを実感している。

「困ったときに、笑わせてくれて、助けてくれるのは知り合い。それがいろんなところにいて、みんなに広まったら。そういうのが世界を救うんじゃないかな」と目を細める。

「いつかは好きなこの町で」志津川高校大坂日菜さん

5年前のあの日に見た凛とした姿

そんな彼女の夢は幼稚園の先生になることだ。それを強く意識したのは、5年前のあの日。当時小学校6年生だった。混乱冷めやらぬ避難先で見たのは、不安や恐怖から泣いている園児たちをやさしく接してあげて、「大丈夫」と見守っている先生たちの姿。

「自分だって経験のないことで恐怖でいっぱいだろうに、その姿が本当に頼もしく、かっこよかった」

もともと人と関わることが好きだった。混乱のなか、凛としたその背中に自然と憧れを抱き、自分自身の将来を重ねていた。

「震災のことだったり、命の大切さを子どもたちに伝えたい。そして、いざというときに自分が助けてあげたい。子どもを守ってあげられる先生になりたいんです」

たとえ離れても、いつかは大好きなこの町で。

高校3年生となったいま、彼女は受験に向き合いはじめている。あと1年もしないうちに高校卒業を迎え、この町を離れることになるのだろう。夢に向かって突き進むために。

「大学で資格を取ったら、大好きなこの町に戻ってきたい」

太陽が沈んでもまた登ってくるように、大坂日菜ちゃんというお日様がまた南三陸にまばゆい光を届けてくれることを期待して。

「この町が好き」と話している彼女のような子どもたちが、たとえ一度町を離れたとしても、「またこっちに戻ってきたい」と思えるような町をつくっていくこと。それが私たち大人の責任なのかもしれない。

「いつかは好きなこの町で」志津川高校大坂日菜さん