「サンオーレそではま」復旧工事に伴う安全祈願祭が執り行われました。かつて年間約5万人も、訪れたサンオーレそではまは、町の賑わいの象徴ともいえる場所。役場の方の話から、今も町民の心に残る「夏の風物詩」の風景が垣間見えました。
かつては県内有数の海水浴場、そして町民憩いの緑地公園
荒島を正面に見る袖浜の海岸。その波間には津波で破壊されたままの消波ブロックが顔を覗かせたまま。あいにくの天候のなか防波堤で羽を休める一匹のカモメが物悲しさをいっそう際立たせます。
かつて、この場所は県内有数の海水浴場「サンオーレそではま」と、町民憩いの緑地公園「荒島パーク」のあった場所でした。今は、復旧工事に伴い盛土がされているため、バリケードが設置され、賑わいを見せることはありません。そんな袖浜海岸で、2016年5月11日、復旧工事に伴う安全祈願祭が執り行われました。
「住まい」、「なりわい」のその先、「にぎわい」の復活へ
安全祈願祭は、上山八幡宮の工藤庄悦宮司代務者のもと、厳かに執り行われました。最後の挨拶で、佐藤仁町長が力強く語りました。
「東日本大震災から今日で5年と2ヶ月が経ちました。『住まい』の面では、今年中にようやく住宅再建が完了し、長い仮住まいの生活に一旦の区切りがつけられます。『なりわい』の面では、来月6月1日に新魚市場がオープン、年度内にはさんさん商店街の本設移転が完了します。『住まい』『なりわい』と来て、今度は『にぎわい』。震災前には、町内外の子どもたちでいっぱいになった『サンオーレそではま』。復活すれば、また以前のように多くの人に訪れていただけることでしょう」
海に親しむ場を取り戻したい
祈願祭終了後、役場産業振興課の方にお話を伺いました。
「昔は夏と言えば、この場所に多くの人が集まった。お客さんの水着やらパラソルがとっても色鮮やかで、いかにも賑やかという感じ。町の人にとっても印象深い、あの風景を取り戻したいよね。やはり海辺の町に住む人間として、海に親しめる場があるというのは、ひとつの誇りにもなるだろうしね」
「隣の荒島パークは、芝生の広場に遊具が備え付けてあって、家族で来たら小さい子はそっちで遊ばせたんだよね。グラウンドゴルフ場もあったから、おじいさんおばあさんもそこに寄ったりして」
そう言って海を眺める役場の方の目には、かつての賑わった海辺の風景が写っているかのようでした。震災以降、養殖業などの”なりわい”としての「海」は取り戻されつつあります。しかし、子どもたちが遊んだり、家族で思い出をつくるような”にぎわい”としての「海」はまだ戻ってきていません。もう一度、かつての海辺の風景を取り戻したいと思う切実な願いが伝わってきました。
来年夏は、南三陸の海で泳ごう!
工事はこの後、本格的に着手されます。防波堤のかさ上げや、海中で波を防いだり、砂の流出を防ぐための堤を設置する工事が行われ、子どもたちが安全に遊泳できる環境を整えていきます。同時に、荒島パークは以前のような芝生の広場を整備し、トイレやシャワー棟も設置される予定です。来年の海水浴シーズンには、部分的にオープンできることを目指しているそうです。もう一度この海辺に子どもたちの歓声が響き渡るのが楽しみでなりません。