自分達が通う高校の未来について考える授業が南三陸高校で行われました。普段なかなか意識することのない「学校と自分の未来」について、先輩と後輩がそれぞれ考えることを話し合いました。
校名が変わった初年度の終わり。
宮城県志津川高等学校から宮城県南三陸高等学校へと校名が変わり、はや一年が経とうとしています。
この1年は南三陸高校にとって初めてのことだらけでした。
先生や生徒、そして地域にとっても初めての挑戦だった1年を振り返り、改めて「高校魅力化」とは何なのか。生徒たちがどのような1年を過ごし、次年度をどのように過ごしたいのかを話し合う授業が3月19日(火)に南三陸高校にて開催されました。
全体進行を務めたのは魅力化コーディネーターとして高校に配置されている佐々木翼さん。宮城県内出身で東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科を卒業。在学時代から日本各地の地域に飛び込み、コーディネーターとしてのスキルを学んでいました。
佐々木さんの念願でもあった今回の授業の様子をお届けします。
考えてみよう!自分の1年。
今回の授業は「南三陸高校魅力化カイギ」と題され、「①高校魅力化という自分のまったく外側にあること ②学校(クラス)という、自分のちょっと外側にあること ③自分自身のやったこと、やりたいこと(志) という3つの視点から学校生活を考えることで、 自己実現と他者への貢献の双方を実現する方法を考えるきっかけにしてほしい」と佐々木さんは生徒に説明します。
カイギがカタカナで書かれたことについて佐々木さんは「多様な意見を話し合う場として「会議」があると思うんですが 何かを決めなきゃいけない、何かを言わなきゃいけない、 ちゃんとしなきゃいけない場だとは思ってほしくなかったので カタカナの「カイギ」をにして、柔らかい雰囲気にしたかったという意図がありました。 」当日はその意図が伝わってか、多様な意見が表明できる、安全安心で前向きな明るい場になっていた気がします。
まずはじめに考えやすい「自分の1年間」を振り返り、今年わたしが頑張ったこと、誰かと頑張れたこと、もっと頑張りたかったことをワークシートに記入していきます。
個から他者(友人など)との繋がり、自分とその周りとの1年と「理想」としていた目標などを振り返りました。
この授業は1年生と2年生合同のため、グループもあえて両者が混ざるように分けられました。先輩の目線、後輩の目線をお互いが知ることも大事な要素です。
”最先端”の学びがある町
1年の振り返りの後、佐々木さんから島根県での事例として島留学が紹介されました。
島根県立隠岐島前高等学校では全国から学生を募り、これまでに200人以上の生徒を受け入れてきた実績があります。
「隠岐島前高等学校がある島根県は南三陸と同じく課題先進地域と言われていました。その町で最先端の課題に立ち向かう、最先端の学びが得られる町の高校ということを武器にしました。困難もおもしろいと思えば、人もモノも集まってくるんです。」
課題があることはマイナスではなく最先端の学びがあるというプラスの考え方をもとに、南三陸高校の良いところと「もっとこうしてほしい」という本音を曝け出すワークに移ります。
本音のもったいないところ
「ココを変えたい!こうしてもらえたら嬉しい!」の欄に生徒たちは赤裸々に想いを綴ります。
「良いところは先生が温かいところ」「ぶっちゃけいらない校則があって、それを変えたい」「もっと町の自然を活かした取り組みがほしい」など、普段の学校生活で思い当たる節があるのか、スラスラと書いていきます。
「帰宅部がほしい」と書いた生徒に『なんで帰宅部が欲しいの?』という問いが投げかけられました。答えは「入りたい部活がないんです」とのこと。
ここで『そうか、なら仕方ないね』で止めずにもう一歩踏み込んで、
『じゃあ、どんな部活があったら入りたい?』と理想を探ると、「ダンス部があったら入りたい!K-POPとか、ヒップホップを踊ってみたい!」という本音が聞けました。
同じ班にいた男子たちは「じゃあおれは男子バレー部がほしい!」「ドローンレース部とかあったらいいなぁ」「そもそも学校の部活に強制的に入らないといけないのが嫌だ」などなど意見が続出。
教員やコーディネーターの問いかけ次第で、生徒たちの本音を引き出せることに繋がります。
「こうしてほしい」「ここが気に入らない」に対して、「じゃあ理想は何だろう?」と否定だけで終わらせずにそれを想起させている要因を探ること、理想を叶える上で生徒自身の「できること」は何なのかを一緒に考える時間を楽しめるか否かが今後重要になるのではと感じました。
わたしの「マイプロジェクト」
授業の最後は、志と取り組むプロジェクト名を考えてグループ内で発表。
これまでの振り返りと理想を話したことで、それぞれの本音が見えるプロジェクトが完成。
初めての試みで最初の方は緊張や戸惑いが見られましたが、徐々に笑顔が増えて発表しやすい雰囲気になっていったのが印象的でした。
マイプロジェクトがアクションに繋がるように、4月からの新学期が楽しみになりました。
彼ら地域の若者の成長を町全体で応援し続けたいです。