令和5年度から「南三陸高校」と校名が変わる志津川高校。来年、創立100周年をむかえ、新たなスタートを切る志津川高校が、南三陸ワイナリーの協力で生徒たちがデザインした記念ラベルのワインを作ることになりました。これまでの志津川高校での思い出と、これからの南三陸高校への希望を込めてデザインしたラベルは全部で4種類。この度、生徒がデザインしたラベル第1号のワインが完成し、ラベル張りと海中で熟成させる作業が行われました。デザインに込めた思いと、作業のようすを取材しました。
南三陸ワイナリーとのコラボが実現
志津川高校ではこれまでも、地元企業と連携した商品開発や商品のパッケージデザインなど、地域と関わりながら実践で学ぶ授業に積極的に取り組んできました。
今回、ワインラベルをデザインしたのは情報ビジネス科の3年生12名。課題研究の授業で、南三陸ワイナリーを訪れ、佐々木道彦社長の話を聞くなかで、ミッションを与えられたのがきっかけでした。
「ワインを通じて、南三陸のファンを増やすにはどうすればいいか」
そこで生徒たちはオリジナルのワインラベルを制作することを提案。来年、創立100周年を迎え、新しく生まれ変わる母校への思いをラベルに託したいと伝え、実現しました。
地域に伝わる「切り子」で南三陸の魅力を表現
生徒たちはそれぞれ「南三陸町×ワイン」をテーマに自由な発想でデザインを考え、4つが採用されました。そのうち3つは現在の南三陸ワイナリーのラベルデザインを踏襲し、地域に伝わる文化である切り子で表現しました。
12月初旬、完成した最初のラベルをワインボトルに貼る作業、そして海中熟成をさせるため、海に沈めるかごへの取り付け作業が行われました。
こちらが今回完成した、できたてほやほやの第1号ワインラベル。
南三陸特産であるタコが、同じく特産のわかめが踊る海の中でワインを楽しんでいる姿が描かれています。奥にはカモメも飛んでいますね。
デザインした千葉瑞貴さんは「南三陸は晴れていると、海がキラキラして、カモメが気持ちよさそうに飛んでいる姿を見ることができます。たくさんの人に南三陸のワインを通じて、おいしい海産物と風景を味わってほしいと思って、このデザインを考えました。」と話します。
また、ラベル上部には「Be Ambitious~志を高く~」と書かれています。これは志津川高校の愛称である「志高」を校名が変わっても残したいという在校生や卒業生の思いが込められているそうです。
100周年記念式典まで海の中で熟成
養殖かごにワインボトルを固定したあと、海中に沈めるため、船で海へ向かいました。15分ほどで養殖場に到着、かごを1つずつ丁寧に沈めてロープにくくり付けました。この日は雪が舞う寒さでしたが、生徒たちは作業の様子をじっと見守っていました。
今回沈めたワインは創立100周年記念式典でのお披露目を目指し、それまでの間、海中で熟成させます。海の中に沈めておくと、ゆるやかな揺らぎや温度変化によって、ワインの熟成が早まると言われており、まろやかな口当たりになるそうです。
ワインを“水揚げ”する頃には、高校を卒業して新たな生活を送っているみなさん。
作業を終えた生徒からは「ワインを通して南三陸の良さをたくさんの人に知ってほしい」という声や「ぜひ若い人たちに飲んでほしい。若い人が飲んでそのおいしさを発信してくれたら、次の世代まで伝えられると思う。」という声が聞かれました。
担任の五十嵐由希先生は「南三陸の魅力を広く伝えたいという思いで今回のプロジェクトに挑みました。授業の中である生徒が、“たぶん二十歳になって飲みかわすお酒はきっとこのワインでしょう”というキャッチコピーを考えたのですが、それが叶うように、みんなが二十歳になったら再会して、このワインで乾杯したいです。」と今から待ちきれない様子でした。
次の世代に向けたメッセージ
各デザインのラベルには志津川高校の校歌を引用し、次の世代へ向けたメッセージが添えられています。
文化のともしび、我が母校。
これまで、志津川高校では、たくさんの生徒が学び、社会へを巣立ちました。私たちは、南三陸でおいしいごはんを食べ、きらきらと輝く風景を見て、健やかに、たくましく、生きてきました。
これからも、志を高く持ち、自分が描きたい未来に向かって、少しずつ歩んでいきます。
南三陸高校に、栄えあれや。
クラス全員で考えたというこちらのメッセージからは、これまで地域で共に歩んできた志津川高校への感謝と、新しく生まれ変わる南三陸高校への希望が伝わってきます。
今回の海中熟成ワイン50本に続き、残りの3つのデザインもこれから順次作業をすすめて、来年春ごろまでに合わせて500本を作る予定です。出来上がったワインはそれぞれ、一般向けにも販売されます。4本すべてがお披露目されたら、またみなさんにご紹介しますね。