町のシンボルが絵本に!「イヌワシの棲む山」町内の小中学校へ寄贈

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南三陸町生涯学習センターで行われた寄贈式(先月25日)

南三陸ネイチャーセンター友の会(会長:鈴木卓也)が国の天然記念物で町のシンボルでもある、イヌワシを題材にした絵本「イヌワシの棲む山」を製作・発行しました。子どもたちの地域学習に役立ててほしいと南三陸地域の小中学校や図書館、公民館に配布されることになり、それに先立ち先月25日、南三陸町内小中学校への寄贈式が行われました。

「イヌワシの棲む山」ってどんな山?

絵本を製作したネイチャーセンター友の会によると、南三陸地域にはかつて4ペアのイヌワシの棲息が確認されていましたが、2000年代に入ってからはペアの消失が相次ぎ、ここ10年でほとんど見られなくなったそうです。数を減らしている原因として、山の環境の変化があげられるといいます。翼を広げると2mほどの大きさとなるイヌワシが餌となるウサギなどを採るためには草地や伐採地が適していますが、森が管理されていないとイヌワシにとって棲みにくい環境になってしまうのだそうです。逆に言えば、イヌワシが棲む山は管理が行き届き、持続可能な地域産業としての林業が成立している証ということになります。

2019年には南三陸町を中心に林業を営む株式会社佐久と東北森林管理局とが手を取り、官民連携の取り組みとしては全国初のイヌワシの棲息環境の再生を目指す森林計画を策定しました。現在も伐採と再植林を計画的に実施し、イヌワシの狩り場となる環境を維持しようという取り組みがされています。

絵本の内容は、9歳の少年“たっくん”が“じいちゃん”に連れられて、かつてイヌワシが棲息していた山に登り、不思議な体験をするというもの。絵本を読みながら、イヌワシが棲める山にするには何が必要なのか、人の営みと自然が調和した地域づくりの大切さについて学ぶことができます。

優しいタッチで描かれる南三陸の美しい風景も印象的

地域資料としても貴重な一冊

巻末には日本のイヌワシの棲息状況や、イヌワシと関わりの深い林業の話、60年以上南三陸地域でイヌワシの研究をし、昨年6月に亡くなった立花繁信さんについても書かれおり、イヌワシと南三陸のつながりを知る上でも貴重な一冊となっています。

鈴木さんは、「小学生の頃から志津川愛鳥会に所属し、会長の田中完一先生や顧問だった立花繁信先生には鳥の見方や自然との付き合い方を教わった。絵本の内容は立花先生から教えていただいた話や、残してくださった資料をもとに書いている。イヌワシの研究を重ね、熱心に保護活動をしてきてくれた人たちがいるからこそ、地域の自然が守られてきた。それが今のFSC認証取得やラムサール条約登録など地域の環境を生かしたまちづくりに結びついている。そのことを子どもたちに伝えたい。」と話し、絵本に登場する“じいちゃん”が立花さんをモデルにしていること明かしてくれました。“たっくん”と“じいちゃん”の心温まるやり取りからは、立花さんを敬い尊ぶ気持ちが伺えます。

南三陸ネイチャーセンター友の会 鈴木卓也さん

 

地域学習に役立て、将来イヌワシと共存するまちを取り戻したい

町の小中学校を代表して絵本を受け取った南三陸町教育委員会の齊藤明教育長は「子どもたちがこの絵本を通して、自然の大切さや、自然との共存について考えながら学んでほしい。いつの日か南三陸の空にイヌワシが戻ってくるように、子どもたちと一緒にまちづくりをしていきたい。」と話しました。

南三陸町教育委員会教育長 齋藤明さん

絵本は1,000部発行され、南三陸地域の3市2町(気仙沼市、石巻市、登米市、女川町及び南三陸町)の全小・中学校、図書館、公民館に寄贈されます。

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