令和5年7月以降、県内外から男女3名が新たに南三陸町の地域おこし協力隊に着任しました。そのうち神奈川県から移住した星空之介さんは、南三陸町が大好き。自分の目指しているものと近い思想を持つ方が多くいるこの町で、人材の育成や新規事業のタネを見つける役割を担います。自分が目指すものの実現に向けて、この町で歩き始めた星さんにお話を伺いました。
目指している姿を形に
神奈川県横浜市出身の星さん。大学では保全生態学を専攻し、絶滅危惧種保存に特化して学んできました。昔からそういうことに興味があったのか尋ねると「虫も魚も触れないような幼少期でしたが、気づいたら生き物が好きになっていました(笑)」とのこと。大学卒業後は、岩手県の水産加工会社に就職。復興庁主催の復興創生インターンでお世話になった会社が行っていることに共感し、移住を決めました。そして、前職での経験も活かしながら、『人も生き物も誰しもが生きられる世界を作りたい』という自身が目指すものをより実現できる環境に身を置こうと、いのちめぐるまちを掲げる南三陸町への移住を決意したそうです。
地域おこし協力隊として一般社団法人サスティナビリティセンターに所属し、持続可能な地域づくりに貢献できる人材育成のプログラム開発や、資源を活用した新規事業の提案などに取り組みます。
ミッションは地域資源を活用した人材育成や新規事業導入支援
町が掲げる将来像『森里海ひと いのちめぐるまち』の実現のため設立されたサスティナビリティセンター。これまで、研究者や地域企業などと協力関係を築きながら事業を行ってきました。持続可能な地域社会を目指すこの団体に所属し、ネイチャーポジティブな社会創出に貢献できる人材育成プログラム開発と既存施設や地域資源を活用した新規事業導入の支援を行います。いのちめぐるまちを作るための思考力(ネイチャーポジティブをちゃんと考えられるような人々)を作るために、滞在型の教育事業をすぐに動き出せる形で作っていくこと。町内にある資源やまだ活用されていないものを見える化して、ネイチャーポジティブな新規事業のタネをどんどん発掘して、立ち上げられるような状態を作るということを、『いのちめぐるまちを作る』や『教育の視点』など、自身がすごく大事だと思っている視点を入れながら、活動していきます。
※ネイチャーポジティブ・・・自然資本を毀損しない、自然との共生をベースとした経済・社会活動の方法にシフトし、我々の生存基盤である生態系・生物多様性を回復させること
星空之介さんにインタビュー
―協力隊として力を入れて取り組みたいことは?
「協力隊としてのミッションを通じて、この町にある未利用資源をどんどん活用し、外に発信していきたいです。そういうことを通じて、しっかりと森里海ひといのちめぐるまちっていうこの町が、次の世代につながっていくようなことをしていきたい。僕が思ってる協力隊のミッションを本気で1つずつ丁寧にこなしていきたいです。町の人たちにとって当たり前になっていることも、実はそれ自体が価値であるということもあるだろうし、そこにただあるものとして見るのではなく、いろんな視点を入れながら、この町がどうなったらネイチャーポジティブな町として次の世代に続いていくかということを、まずこの3年間本気で考えてみたいなと思っています」
―協力隊を卒業する頃どんな姿になっていたい?
「町の新たなタネや新規事業を見つけるポジションにいるので、それをちゃんと蒔いていける人材になりたいと思っています。それだけでなく、この町に来て『ネイチャーポジティブってこういうことだよね』というのを、ちゃんと考えていく若い人たちが増えてくれたら面白いなと思っているので、そんな世界を一緒に作っていけるくらい成長したいです」
―南三陸の好きなところは?
「僕、湾が好きなんです!志津川にきて思うのは、この湾の地形が好きで、来れば来るほどこの場所の空気感にめちゃめちゃハマってます(笑)。地理的特性も好きで、そこにある文化とかも面白いなと思っています。だからこそ戸倉から志津川に帰ってくるとき、対岸側の夜景とかを見ていると美しいなと。昔の人はこれを見て何を思ったんだろうとか、湾があるからここにいる人たちの生活や生業があるんだと思うと、すごい面白いと思って。それを持続的に作ろうとしている南三陸町、超面白いじゃん!というのを、いつも湾を見ながら思っています。気持ちいいのが、夜景が明るすぎなくて良い意味でローカル感というか、心地よさを与えてくれます」
―上司との関係性は?
「ダメな時はちゃんと指摘してくれて、どうすればよいかの考えを指南してくれる存在がいるというのは、安心感と学びを与えてくれて、日々すごい思考させてもらっています。さらにその中に愛情がある。親のような、近くにいると言いにくいこともあると思いますが、ちゃんと言ってくださるのは安心感100倍ですよね(笑)。毎日学ばせてもらっています」
目の前の一つ一つを大切に
「南三陸町の水生昆虫をいっぱい見に行きたいです。あと山にいるクワガタやカブトムシも結構好きなんで、そっちも見に行きたいし、何よりもここには川があるじゃないですか!川の生き物も見たいなと思っています」と、プライベートでも探求心が尽きません。
今後の意気込みとして「生き物がたくさん見れて、その中で産業が作られる世界をこの町で見ていきたい。それを目指すために、日々一個一個大切に積み上げていければなと思っています」
自分の核となる信念を持ち続け、その心に合致した環境や考え方が存在する南三陸町で活動する星さん。ネイチャーポジティブ成長社会の実現に向けて、一歩一歩着実に歩んでいくその姿に、期待が高まります。
※地域おこし協力隊
地域おこし協力隊は、地方自治体から委嘱を受け、地域の魅力発信や特産品の開発、住民の生活支援など、さまざまな方向から地域を活性化させる活動に取り組む都市部からの移住者です。南三陸町では隊員が地域の生活になじむことができるよう、また起業・事業継承に向けたノウハウを学びながら活動に取り組めるよう、町内で活動している事業者・団体が隊員を雇用する形をとっています。