それぞれのスキルで地域を盛り上げる!地域おこし協力隊活動報告会(後編)

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前編山口さんの発表の様子

南三陸町で活躍する「地域おこし協力隊」は現在9名、これまで培ってきたスキルを活かしそれぞれの職場で奮闘しています。8月に行われた報告会にて、各自の現状と今後への意気込みを取材しました。(全2回に分けた内の後編)

報告⑤ギンザケのASC取得に向けて〜吉岡優泰さん〜

協力隊の中で最も若手、21歳の吉岡さんは宮城県漁業協同組合志津川支所の協力隊2年目。南三陸町が養殖の手法の発祥地して知られるギンザケのASC取得に向けた活動をしています。

頭にカメラをつけてギンザケの養殖場の現場を撮影した動画を公開

認証取得の目的としてはサステナブルな漁業の証明、他地域との差別化、南三陸のギンザケのブランド化と価値向上とし、その達成率は現在70%だという。課題として、ギンザケを育てるための飼料や配合の規格がネックになっているそうで「ASCはオランダの認証になるため飼料などの規格が日本と異なっている。餌を変えると今度は現在使っているギンザケの商標と名前が使えなくなってしまう」とのことで、あと少しのところで足踏みしてしまっている状態とのこと。

すぐすぐには解決出来ないものと割り切り、吉岡さんはASCと並行しながらMEL認証取得という新しい目標を追加で立てました。こちらは養殖漁業に関する国際認証制度で、日本発の認証。日本の海洋環境や養殖業の多様性を活かしつつ、南三陸町では2024年3月、来季の水揚げ前に取得予定を目指しています。

吉岡さんは膨大な認証手続きの作業をしつつ、実際にギンザケ養殖の現場にも参加し、ギンザケの選別や水揚げにも関わっています。

<今後の展望>
・MEL認証取得の先、付加価値をどれだけ付けられるかを考える

養殖銀鮭でASC認証取得を目指す!地域おこし協力隊 吉岡優泰さん

報告⑥養殖ワカメのブランド化〜西城俊行さん〜

三陸ダイニングで活動する協力隊1年目の西城さんは、これまで長年宮城県庁にて勤務し、その中で漁業に関わる業務を経験してきました。その経験を活かし、南三陸町で育つ養殖ワカメのブランド化に取り組んでいます。

ワカメの価値を生産者さんと一緒に上げていきたいと話す西城さん

全国的な生産者(漁業就業者)の担い手不足や高齢化、沿岸漁業の取得が減少していることをデータで説明した上で、西城さんの活動が目指すところは「取得増加と単価のアップを狙う事業展開」とし、ワカメのJAS認証取得(化学肥料に頼らない、自然界の力で生産された食品の認証)に向けた動きを始めました。

ワカメ生産者との認証に関する勉強会や認証機関との講習会を開講し、認証の申請を10月に見据え「孫の代までどのように人を残していくべきか、漁業生産者と一緒に考えていく」と話しました。

<今後の展望>
・国際交流協会の活動への参加。台湾・韓国・タイなどを中心とした交流を通じて海外への販路開拓を目指す

 

報告⑦空間リノベーションと南三陸杉の振興〜熊谷海斗さん〜

YES工房2人目の協力隊員である熊谷さんは、前半でお話しした佐藤さんと同じく木材の地域振興やモノづくり学習の他に、地域産材を活用した製品開発や販売促進活動を行っています。

アンテナショップの展示の紹介

販売促進活動として仙台でアンテナショップの設置や、空間に馴染む棚として自由に組み立て、カスタマイズができる”和ら木”の開発を行い、その中で機械によるモノづくりのオートメーション化(デジタルファブリケーション)を進めています。パソコン上で製図した物が実際にイメージ通りに動くかどうかを検証し、計算が出来た状態で出力し制作する様子の一部を公開しましたが、会場からは「今はこんなことも出来るのか!」と驚きの声があがっていました。

言葉だけでは分かりづらいですが、熊谷さん曰く「機械なので、一度作ると同じものを作ることが楽になる。職人さんだけの技術ではなく、1人がたくさんものを作れる仕組み。これから(高齢化などで)生産者が減っていく中で必要な技術だと考えています」と、先進的なモノづくりの一つの形として今後も活用していきたいと話しました。

<今後の展望>
・家具・什器の設計・開発

地域おこし協力隊に熊谷海斗さん着任 デジタル技術を駆使して南三陸杉の新たな可能性を探る

報告⑧「さんさん市場」魅力化推進プロジェクト〜太田裕さん〜

前半で発表した太田和慶さんと裕さんは夫婦で南三陸に移住しました。裕さんはこれまで山形県や岩手県で職員や駅のスタッフを経験し、南三陸町ではさんさん市場店長/さんさん魅力化推進員として活動しています。

さんさん市場になくてはならない人になった裕さん

裕さんの発表では自身がさんさん市場の店長になり、どのようにスタッフと協力しながら品揃えを充実させたか、出店している地域の方とのコミュニケーションについて取り組まれてきたことをお話し、町内出荷者さんの商品は150品目増加、25人になった出荷者さんのデモンストレーションとして実際に店舗で実演、魅力をお話ししてもらうといった場づくりを行ってきました。

また、町内外のイベントに出店するなど、町外にどんどん町の魅力を広げる活動も行っています。課題としては冬場の閑散期が挙げられましたが、こちらの対策としてふるさと納税商品の増加、消費者向けのECサイトを作成中など店舗以外での購入ルートを構築する予定とのことでした。店舗の方は店内のディスプレイを見やすく、主な購買層である主婦の目線で改良しているそうです。

<今後の展望>
・9割町外なので地元の方にも気軽に来てもらえるような商品・場づくり
・生産者産と共同企画、商品づくり、地域の困りごとを聞いて還元していきたい
・色々な方にヒアリングしここでしかできないコト・モノ作りをしたい

さんさん市場にオリジナルブランドを!地域おこし協力隊 太田裕さん

報告⑨地域資源を生かした新しいコンテンツ作り〜丹菊龍也さん〜

最後の発表者は南三陸研修センターで活動する丹菊さん。当日会場に来られないということで、なんと事前に録画したものでの発表となりました。

録画したものですが、随所に小ネタを仕込んできた丹菊さん

協力隊としては1年目の丹菊さんですが、高校、大学時代からボランティアや地域実習などで頻繁に町を訪れ、卒業後も地域の人との縁を紡ぎながら自身のサウナを持ち込んでのイベントや南三陸なうの動画編集などで活躍していました。

現在は南三陸研修センターにて企画・研修部門のスタッフとして日々業務にあたりながら、地域おこし協力隊としてのミッションである「オンラインとリアルを融合した地域資源を生かした新しいコンテンツ作り」をメインに活動中。

新型コロナウイルスの蔓延を機に町内でも様々なオンラインコンテンツが作られましたが、今やオフラインも外からの人が戻りつつあるなかで、両者の良いところどりをしたコンテンツ開発を目指しています。

最近ではサウナを活用した「サウナリトリート」といったプログラムで県外から参加者を集め、南三陸の震災後のまちづくりに関わる方々との交流を生み出す機会を作りました。(後日南三陸なうにてご紹介します)

大正大学地域創生学部 第1期生20名 南三陸町へ(寄稿)

<今後の課題>
・農林水産に関わる地域人材の育成プログラム
・サウナを活用したイベントの定期開催

以上が今回発表した9名のレポートになります。それぞれが取り組むミッションや活動の先に「未来の南三陸」の姿が浮かび上がってくるような発表でした。まだまだ活かしきれていない地域資源があること、それを磨こうと奮闘する協力隊員の活動を地域一丸となって共に伴走していきましょう。

 

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