毎年恒例となった「志高まちづくり議会」が2月15日、南三陸町役場議場にて開催されました。志津川高校2年生、12名が3つのグループに分かれ、町が抱える課題に向き合い、解決案を町に提案。高校生ならではの視点でまちづくりについて考える時間を、町長はじめ町の職員たちと共有しました。
高校生がまちづくりに参画
今年で6回目の実施となる「志高まちづくり議会」。志津川高校の生徒たちが「総合的な探究の時間」を通して、地域課題を見つけ、学び、考え、解決策を検討し、その成果を発表する機会として、毎年開催しています。この日は高校生議員として2年生を代表して12名、町からは町長、副町長、教育長はじめ、各課管理職員が参加しました。議会を進行する議長役も生徒が務め、緊張感漂う本番さながらの議会が繰り広げられました。
まちづくり議会は、学習の成果をただ発表する場ではありません。実際に町議会が開かれる議場で生徒からは質疑や提案、それに対する町からの答弁も行われ、自分たちのまちづくりに対する思いを、直接、町に伝えることができ、議論する場でもあります。昨年はこのまちづくり議会から生徒たちが提案した「ご当地ナンバープレート」を制作する案が採用され、実現に至りました。
高校生ならではの視点が光るユニークな提案
生徒たちは「教育・福祉」、「防災・環境」、「観光・産業」をテーマに3つのグループに分かれて、それぞれまちづくりへの質疑・提案を行いました。
教育・福祉グループ「マラソンで活気あふれるまち南三陸!」
教育・福祉グループからは町の課題として、人口減少や少子化、コロナ禍による子どもたちの体力低下などの課題が提示され、その解決策として、小中高校生をメインターゲットに、大人も参加できるマラソン大会を開催するという提案が出されました。
普段何気なく眺めている南三陸町の自然や街並みを、堪能しながら走ることで、町の魅力を再発見してもらい、その魅力を町民同士で共有することで、人口の流出や移住者の呼び込みにつなげたいというのが狙いです。また、町内の子どもたちの肥満率の高さにも触れ、マラソン大会に参加してもらうことで体力の向上や健康増進にも役立てたいと話しました。
この提案に対し、佐藤仁町長から、過去にも町内でマラソン大会が行われていたが、長く続けることで主催者側の負担になって取りやめになった経緯が答弁されました。継続に難しさがある一方、企画課長からは、「これからスポーツはコミュニケーションツールとしてまちづくりに重要な役割を持つと思う。仕組みをどう作っていくかで可能性が広がるので、引き続き意見交換をしていきたい。」と前向きな声があがりました。
防災・環境グループ「だれでもすぐに避難できるまちづくり」
防災・環境グループからは、災害時にだれでもすぐに避難できるまちづくりについて提案が出されました。現在、町内にある避難経路を示す掲示板がその内容や設置数において十分とは言えず、土地勘のある町民以外は分かりにくいと指摘。特に高齢者や子ども、観光客に対して、分かりやすく安全に避難できる環境や工夫が必要なのではないかと訴えました。その中で、防災意識を高めるためのゲームアプリの開発や町内を舞台とした災害シミュレーションを組み込んだ絵本の制作、さらに絵本に登場するキャラクターを避難誘導のシンボルとして活用し、誰でもどこからでも分かりやすく、避難行動がとれるアイデアなどを提案しました。
佐藤町長は「土地勘がない人にも分かりやすいものを作ることは大切だ。一人でも多くの命を救うという意味では掲示板の役割は大きい、頂いた提案を素直に受け止めたい。」
総務課長は、「町民向けに対しては防災マップなどを配布していたが、町外の人に対しての啓発活動は不足していた。防災アプリの開発などに力を入れて、町外の人にも避難ルートが分かるような仕組みづくりをしていきたい。」と答弁しました。
観光・産業グループ「若者の観光客増加につながる、自然を生かしたイベントを開催したい!」
観光・産業グループは南三陸に観光で訪れる若者が少ないことに触れ、若者が楽しめる今までにない新しいイベントが必要だと訴え、海上アスレチックの設置を提案しました。
海上アスレチックを取り入れ、観光客の増加につながった鳥取県の事例をあげ、南三陸でやれば東北初となり、注目を集め、若者の観光客の増加につながるのではと話しました。
これを受けて、商工観光課長は、「地域の話題性をアップさせる上では、ある程度の集客効果が期待できる。ただ、設置費用や運営費にお金がかかること、そのため入場料を高く設定しなくてはならないこと、漁業者の理解が得らえるか等、総合的に判断して検討しなければならない。現在、町ではサンオーレそではま海水浴場でブルーフラッグ国際認証を目指しており、地域の資源を生かした取り組みも行っているので、高校生のみなさんにもぜひ興味を持って参加してもらいたい。」と答弁しました。
課題を見つけ、ひとつずつ乗り越えていくのが「まちづくり」
議会を終えてホッとしている生徒たちに、佐藤町長は、「地域が抱えている課題を高校生の視点でとらえ、斬新な提案をしてもらい、心強く思っている。課題を解決してもまた次の課題が出てくるのがまちづくりだ。町をよりよくしたいという思いは私も同じ。これからも南三陸町のまちづくりのために協力してほしい。」とメッセージが送られました。
生徒たちからは、一同に緊張したという声が上がりましたが、「議会に出て、自分たちで調べきれてないところとかたくさんあって、学びにつながった。」「議会に来るまでは実感がなかったが、町長が自分たちの提案に耳をかたむけ、真剣に答えてくれているのを聞いて、まちづくりに参加しているという感じがした。」と話していました。
また、マラソン大会を提案した生徒からは、「町長たちからの答弁を聞いて、実施する難しさを感じたが、可能性はあると思っている。もし、実現に向かって動いたら積極的に関わっていきたい。活気あふれる南三陸町になってほしいと思う。」と心強い声も聞かれました。
南三陸の将来を担う、高校生たち、地域の課題と向き合いながら、これからもまちづくりに積極的にかかわっていってほしいですね。
今回行われた、まちづくり議会の様子はYouTube LIVEでも配信されました。現在、アーカイブ映像としてどなたでもご覧いただけます。