2月18日、志津川小学校5年生がサケの稚魚の放流体験をしました。広い外洋に出たのちに、生まれた川に戻ってくる習性があるサケ。雪が舞う寒空の下、5センチほどに育った稚魚を八幡川に放流した子どもたちは「元気に戻ってきてね」などと呼びかけながら、4年後の再会を願いました。
大切に育てられた8万7000匹を放流
志津川小学校では毎年、総合と社会科の学習で「サケ」について学びます。サケを通して地域の水産業やサケと人との関り、ふるさとの自然の豊かさについて知るのが目的です。今回、稚魚の放流を体験したのは5年生の23名。1月にも小森ふ化場(志津川)を訪れ、八幡川を遡上したシロサケをふ化させる設備や作業を見学、受精した卵を手に取って観察したり、稚魚のえさやりを体験したりしました。
この日は放流前にふ化場で稚魚を追い込む作業を見せてもらいました。11月に採卵した卵を3か月かけて大切に育てた稚魚は、大きさ4.97センチ、平均の重さが0.97グラム。健康的な稚魚のサイズは5センチ、1グラムと言われているので、ほぼそれに近い大きさで健康に育ちました。元気な稚魚が網にすくい上げられると、子どもたちは歓声を上げ、興味深そうにのぞき込んでいました。
約8万7000匹の稚魚をトラックに載せ、志津川御前下地内の放流場所へ移動。うち500匹ほどを1人ずつバケツに分けて、八幡川に放流しました。
放流を終えた児童は「稚魚が傷つかないようにやさしく川に流してあげた。4年後にまた会いたいです。」と話してくれました。
記録的な不漁 それでも続けて未来につなげたい
町で古くから続く秋サケ漁。昭和50年からは川に遡上するサケを捕獲して卵から稚魚を育てて放流する、ふ化放流事業も盛んに行われてきました。しかしここ数年、全国的にサケの記録的な不漁が続いており、志津川地区でも八幡、水尻両河川の今期の捕獲数は612匹と、震災後、最も少なくなりました。採卵数も外部から譲り受けたものを含めても昨季の3分の1ほどの約114万粒。卵が少ない分、1匹でも多く放流できるよう大切に育ててきたという、志津川淡水漁業協同組合の千葉純一さんは「過去にないぐらいの不漁に見舞われたが、稚魚を育てて放流しなければ4年後も絶対に帰って来ない。子どもたちが大きくなって町に関わるようなったら引き継いでもらえるよう、やれるところまでは続けたい。ぜひこの機会にサケについて学び、自然や環境にも興味を持ってもらいたい。」と話していました。
子どもたちもポスターで呼びかけ「サケが戻ってくる海に」
今回の授業を通して、海の環境の変化など、サケが回帰しない現状について学んだ子どもたちは、サケのために、自分たちに何ができるのか話し合ったそうです。子どもたちが出した答えは、サケが無事にふるさとに戻って来れるよう海の環境を整えること。海岸のゴミ拾いなど自分たちができることはもちろん、町の人や観光で訪れた人たちも巻き込む必要があると考え、海の環境保全を呼びかけるポスターを制作しました。
ポスターには、「海にゴミをすてないで!」「3R(Reduce・Reuse・Recycle)で海をきれいに」「サケ産業、日本一を目指そう!」などのメッセージが、かわいらしいイラストと共に描かれています。
5年生担任の大坂凌平先生は「子どもたちから“サケのために何かしたい!”という声があがり、今回のポスター制作にいたった。たくさんの人に見てもらい、海の環境について一緒に考えてもらいたい。」と話します。
子どもたちが書いたポスターは多くの観光客が訪れるさんさん商店街のインフォメーションセンターに掲示されています。
子どもたちの思いが4年後、サケとの再会につながるといいですね。