さんさん朝市で感じた心の復興

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さんさん朝市で感じた心の復興

4月17日早朝、さんさん商店街では「さんさん朝市」が開催されていました。「福興市」とはまた違った独特ののんびりした空気が流れる朝市から、町の心の復興を感じられました。

もうひとつの物産イベント「さんさん朝市」

南三陸町ではご存じのとおり「福興市」が毎月開催されていますが、2015年からはさんさん商店街にて、月2回の「さんさん朝市」も開催されています。福興市ほど大きな規模ではありませんが、生産地ならではの新鮮な海産物や採れたて野菜などを中心に、地元の生産者や商店から多数の出店で賑わいます。

謳い文句は「朝市で朝ごはん!」。物産だけでなく、朝がゆや焼き立てパン、ミニ海鮮丼の販売や、味噌汁の無料提供など、心も身体もホッとするような優しい軽食の提供もありがたいです。

名物は「おらほのラジオ体操」。宮城で最も有名なローカルタレント・本間秋彦さんの、「いづ(1)・ぬ(2)・さん(3)・す(4)」という方言全開の掛け声に合わせ、出店者・来場者みんなで朝の体操をします。

さんさん朝市で感じた心の復興

なりわいと賑わいの復興を担う地域イベント

4月14日から続く大規模な地震により、熊本・大分を中心に多数の方が被災されています。心からお見舞い申し上げます。

5年前、私たち南三陸町も大きな災害により被災をし、未だ復興道半ばです。

南三陸町は早々に復興計画を策定し、復興目標のひとつとして「なりわいと賑わいのまちづくり」を掲げました。震災の翌月には福興市を開催、同年10月に仮設魚市場の完成、翌2月に仮設商店街「さんさん商店街」のオープンと、着実にその歩みを進めて来ました。

これもひとえに国内外多くの方からのご支援のおかげですが、もうひとつは、町の人々の「なんとしても一刻も早い復興を」という強い思いによると感じます。水産業をはじめとした一次産業が基幹産業である南三陸町。生産の復旧と生産物の販売をおこなわなくては復興は進まないと、町一丸となってまさに駆け抜けるように過ごしてきました。

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新しいアイデア商品の開発・販売を試す場

こうした中で、2015年から「さんさん朝市」が開催され始めます。さんさん商店街や商工会などからなる実行委員会の主催で、おおよそ月2回の頻度で開催されています。

福興市と同じく物産や飲食を中心にしたイベントではありますが、早朝の独特の雰囲気なのか、また一味違った独特の、ゆっくりとした・のんびりとした空気が漂います。

実行委員会事務局の大學さんによると、出店者の2/3ほどが、これまで他のイベントにはあまり出店してこなかった方々だそう。普段商売をやっているわけではない方や、個人の方の出店も目立ちます。大きなイベントほど在庫を抱えなくても良いことや、出店料が安価であることなどに起因しているのか、地元の方々のチャレンジの機会となっているようです。イベント出店への挑戦はもちろん、新しいアイデア商品の開発・販売を試す場としても活躍しています。

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回を重ねるごとに増えているリピーター

来場者の方に伺ってみると、地元の方が多い中、チラホラと観光で町に来られた方も見られます。中にはバイクで全国を旅している旅人がたまたま訪れ、おいしい朝ごはんを食べられて喜んでいた、というエピソードもあったとのこと。

開催し始めた当初は少なかった来場者も、徐々に増えてきています。増加の秘密の1つは、リピーターが多いこと。来てみた、という人がリピーターとなり、回を重ねるごとにどんどんと増えているようです。

リピーターの中心は、さんさん商店街から徒歩圏内のところに住んでいる地元の方々。産直へ行くように採れたて野菜を求めて来られていたり、朝食を楽しみに来られていたり。イベント・お祭りというよりは、日常の中に溶け込んでいるのが感じられました。

リピーターの方々と出店者の方々も、今ではすっかり顔見知り。「名前も知らないけれど朝市で毎回会う人」という方も多いそうで、元気の良い「おはようございます」の挨拶や、はずむ会話が飛び交っていました。

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朝市とさんさん商店街をけん引する阿部忠彦さん

さんさん朝市の実行委員長で、南三陸志津川福興名店街運営組合長でもある阿部忠彦氏。そのお人柄も、朝市人気の秘密の1つでしょう。

朝市で人気を博すコンロコーナー。購入した海産物などを、その場で焼いて食べることができます。季節の旬に合わせ、カキやホタテ、サンマなど、贅沢な朝食を演出します。また最近では、商店街内の各店舗からの差し入れも多いそうで、この日は佐利ミートさんのウィンナーや、及善商店さんの笹かまぼこなどが網に乗っていました。

コンロコーナーで、さながらバーのマスターのように陣取られているのが阿部氏(写真左から2番目)。

阿部氏のもとに、食材を持ったお客さんや、たくさんの人々が訪れます。朝食を食べながら近況報告をおこなったり、今後の朝市の企画が語られたり。まさに井戸端会議のその場は、小さな町ならではの、地域コミュニティの絆を強める場となっています。頼れるリーダーと気軽に話し合える場があるというのも、地域再生を早めている重要な要因の1つでしょう。

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朝市に感じる“心の復興”

アドレナリンを全開に分泌し、一刻も早い復興をとがむしゃらに駆け抜けた5年に比べ、朝市の空気には町民の方々のゆとりや余裕、言い換えれば“心の復興”を感じました。

まだ眠たそうにあくびをしながら集まり、気軽に出店ができる場。新しいチャレンジができる場。買い物や朝食をとる場として日常の中に溶け込んだ場。未だ忙しく工事のおこなわれる町中と裏腹に、朝市のこの時間には、田舎らしいのんびりとした普通の暮らしを感じることができます。

住宅の再建もままならない方もまだまだ多く、復興の動きを止めてはならない現状ではありますが、私たち町民の心も少しずつ復興を遂げ、新しい未来へと歩み始めています。

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