南三陸町志津川の田んぼに大ダコあらわる?!

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青々とした稲が揺れる中瀬町の田んぼ

赤土の盛り土に囲まれる、中瀬町地区。茶色一色の風景の中に緑色が広がる。コントラストが美しい田んぼの中に突如大タコが現れた!これは一体?!謎に迫ります。

大ダコ!その正体は・・・

国道398号から志津川高校方面に曲がると、まぶしいほどの稲の緑が目に飛び込んできます。

ここは廻館、中瀬町地区、震災で大きな被害が出た地区です。その田んぼをゆっくりゆっくり見回りする男性がいました。

廻館復興組合の西城善昭(さいじょうよしあき)さん。震災前からこの町でいちごや米を栽培してきた農家さんです。

廻館復興組合とは津波の被害を受けた廻館と中瀬町地区の約60軒の農地を5軒の農家で請け負い、作った組合だそう。

その組合で田んぼの復活を目指し、管理してきました。この地区は災害後のしばらくはがれきがあり、もちろん稲作はできませんでした。がれき撤去、整地、山から土を運び、ようやく昨年田んぼの復旧が完了。そして今年5月、7年ぶりに田植えが行われました。面積は5ヘクタールほど。

西城さんに案内されて田んぼの奥の奥、中瀬町へ進むと、志津川高校の入り口と旧志津川駅の間あたりに様子の違う田んぼが一枚。緑の中に急に何かの模様が見えます。丸が折り重なるような・・・

実はこれ、田んぼアートだそう。でも何の柄かわかりません。幾何学模様のような・・・

「田んぼの向かいの小高い場所に上ってみてごらん」と言われ、上がってみると、現れたのは大きな“タコ”。下から見るより、想像していたより、大きい!「西の明石、東の志津川」と言われるくらい有名な当町の名物、タコ!そのイラストが茶色の稲で描かれていました。

7年越し、田んぼにかける思い

西城さんたちはなぜこの地で田んぼアートを行っているのか。

全国的に米出荷額の値下がりが問題になり、やめていく稲作農家も多いという昨今、米に新しい価値を見出せないかと考えていた西城さんは、青森県田舎館村で田んぼアートに出会いました。そこで見た田んぼアートは圧巻で、2年で4回も訪れたそうです。

これを南三陸でも・・・自分たちの田んぼでもやったら、人がたくさん来て町のためにもなるのでは?田んぼアートで見に来たお客さんに喜んでもらえたらと考えたそうです。

それがこのタコが生まれた理由でした。

しかし、田舎館村のようなアートを理想にいざ取り組み始めてみると大変なことばかり。田んぼは整備してもらったものの、トラクターをかけるたびにたくさんの石が出てきたそうです。

田んぼから見えるところに砂利や石の山ができていました。ブルドーザーかなにかで盛った工事の石かと思っていましたが、それはすべて西城さんたちとボランティアが手作業で拾い集めた石だそうです。それもたった約20名で数回にわたり行ってきた結果。「大量の石を拾ったが、まだまだ耕すたびに出てくる」と西城さん。

もっと困ったのがアート。本当は田舎館村のような絵を描きたい、でもそれにはプロの測量が必要。ポケットマネーで行っている西城さんたちにはまさに桁違いの金額だそう。でも諦めず自分たちでできるところまでやってみよう!と、方々に協力を頼みました。

協力してくれたのが志津川高校の生徒たちと全国から集まってくれたボランティアです。

少ない人数で作り上げた大きなタコ。「素人の測量だから難しい絵はできねぇんだ。だから全部丸で描いたタコだ!ほんとはタコって8本足だけんどよ、このタコ4本しか足ねーんだよ」と西城さんは笑っていました。

「今年は初めてだったからこの位だけんどよ、来年はもっと人集めて、大きさも広げて、見る場所も駐車場もたくさん用意してやりてーんだ」と今後のビジョンを語ってくださった西城さん。今後の田んぼアートの進化が楽しみです。

震災の爪痕残る高台から田んぼアートを一望

 

田んぼの前の小高い丘、ここに上ると田んぼアートの全容が見られます。この場所は震災の時、西城さんを含む近隣の住民が避難した場所だそう。

上がってみると、柵が倒れまだその時のままになっています。ここまでも津波が上ったのです。震災の爪痕が残るこの丘から復興途上の町が一望できます。

津波でなぎ倒されたままの柵

7年の時を経て再開した稲作、建設中の水尻橋、かさ上げ工事真っただ中の志津川の市街地、そして今年3月に本設オープンしたさんさん商店街。

あの日絶望を見たこの丘から希望を見られる日がやってきました。訪れる人の目にどんな風に映るのか、それぞれの想いを胸にたくさんの方にご覧いただければと思います。

インフォメーション

【アクセス】

国道398号線から志津川高校入口の方へ向かって曲がり、高校入口を過ぎて田んぼ沿いに少し進むと一番奥の田んぼがタコアートの田んぼです。

その前の丘には左から上ることができます。民家に向かう私道の中腹に右に入れる小道があり、ここを進むと田んぼアートを観ることができます。

お車でお越しの場合、丘の下の道路に通行の邪魔にならないよう駐車の上、ご覧ください。

【期間】

9月中頃まで

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