宮城県・南三陸町で育つ南三陸杉。豊かな自然に育まれた強く美しい南三陸杉を用い、デザイン性の高いキッチンが誕生しました。その名も「宮城・南三陸テロワールキッチン」。開発の背景や込められた想いを紹介します。
南三陸杉を内装材に。杉の価値と可能性を広げるためのキッチン開発。
木目の美しいキッチン扉をはじめ、温かみがありつつ、モダンなデザインのキッチン空間。足を踏み入れると、南三陸杉のよい香りに包まれます。
南三陸町の老舗材木屋・丸平木材株式会社と、空間演出ブランド・tossanaigh(トッサネ)のタッグにより生まれた、「宮城・南三陸テロワールキッチン」です。2022年10月21日~30日に開催された「DESIGNART TOKYO 2022」でお披露目されました。
キッチン開発の始まりは2021年10月。「南三陸杉はおもに建築材に使われてきましたが、もっと内装にも使ってもらいたいと、近年は内装材の新しいアイテムをいろいろと開発しています。そんななか、tossanaighの前田さんを紹介してもらったのです」と、丸平木材の代表取締役、小野寺邦夫さんは話します。商品企画のサポートに入ったtossanaighの前田圭悟さん(Kaibaデザインノード株式会社 代表取締役)は、「南三陸杉のよさを最大限に伝え、内装空間に取り入れてもらうにはどのような商品がよいのか、検討を重ねましたが、当初はなかなかおもしろいアイデアが生まれませんでした。そこで、デザイナー起点で考え直し、アートの視点を生かしたエッジのきいたものとして、キッチンという案が出ました」と振り返ります。
「キッチンは家や家族の中心なので、目を引きやすく、シチュエーションを具体的に見せられると思いました。まず関心を持ってもらい、そこからリビングなどほかのところの内装材にも展開していけたらと考えています」と小野寺さん。前田さんは、「キッチンは画力があるので、ブランディングや発信力という点でも強みがあります。南三陸杉の価値をきちんと伝えるために、デザイン性にこだわりました。杉は和のイメージが強いですが、現代的な建築にもなじむということを示すため、モダンで大胆なデザインアプローチを重視しました」と話します。
厳選した素材で土地の特性や魅力を伝える。
デザインにこだわったなかでも、特に工夫したのが「ダイヤモンドカット」という加工。「テロワールキッチンのために考えだしたデザインで、三陸の入り組んだリアス式海岸からインスピレーションを得たものです。無垢板を斜めにカンナで削り、奥行きと立体感を演出しています」と前田さんは話します。
また、素材の産地にもこだわり、南三陸杉以外にも、雄勝石など宮城県産のものを使用しています。「素材からその土地の特性を感じてもらいたいと、『テロワールキッチン』と名付けました。テロワールはフランス語で『土地』を意味し、日本では『生育環境』や『産地特性』という意味で使われています。ワインなど飲食関係で耳にすることが多い言葉ですが、キッチンというプロダクトにもテロワールがあるというメッセージを発信したいと思っています」と前田さんは力を込めました。
「デザインと技術の粋から生まれたキッチンを、ゆくゆくは丸平木材で製作していくために、うちの社員が長野県の工房で50日間研修受け、さまざまな木工技術を習得しました。木製キッチンというと、耐水性を懸念される方もいらっしゃいますので、天板は他の素材にも変更可能です。また、杉ならではの反りも出てきますが、そういった杉の特性やメリット・デメリットをきちんとお伝えしたうえで、経年変化も含めて楽しんでいただきたいですね」と小野寺さん。テロワールキッチンを、丸平木材の新しいアイテムとして、大事に育てていきたいと考えています。
「今回の出展は、まずみなさんにお見せする場で、いかに普段の暮らしに取り入れてもらえるかどうかが、今後の課題です。内装材に関する新しいウェブサイトを立ち上げたり、建材展などの展示会に出展したりと、継続的に発信・露出を行っていきたいと思います。南三陸杉のよさ、産地の魅力を伝え、みなさまに喜んでいただける商品をつくり、地域にも貢献していきたいです」と小野寺さんは抱負を語りました。