令和3年度から指定管理者が替わり、新体制でスタートした「ひころの里」。入谷地区の地域活性化を目指す有志の集まり「ひころの里コンソーシアム」が、この4月から維持管理にあたっています。ひころの里を中心に、入谷地域全体を盛り上げたいと活動する同団体。中心メンバーの一人で、施設所長の鈴木清美さんにお話を伺いました。
入谷地区の歴史文化を体験できる「ひころの里」
ひころの里がある南三陸町の入谷地区は、かつて仙台藩養蚕発祥の地として養蚕業が盛んに行われていました。シルクで栄え、その品質はパリ万博でグランプリを受賞するなど高く評価されました。そんな郷土の歴史を気軽に体験できるのが「ひころの里」です。山あいにある施設内には養蚕の歴史を紹介するシルク館や、町の指定文化財でもある江戸時代の地方郷士の居宅「松笠屋敷」などがあり、施設見学のほか、民話の語り部やまゆ細工などの体験も行っています。また、芝生が広がるふれあい広場では、祭りやイベントが開催され、地域の人たちの憩いの場としても親しまれています。
コロナ禍での新たな取り組み
-新体制をスタートさせた「ひころの里」、今どんな取り組みをされているんでしょうか。
まず私個人としては、これまで地元の方たちがこの場所を守るんだという強い思いで管理して来られたその思いを引き継ぐのが第一と考え、地域の歴史や文化を一生懸命勉強中です。同じ町内でも地域ごとにこんなに生活文化が違うのかと毎日が驚きの連続。また、これまでの維持管理のルールを見直し、いいところは踏襲し、直すべきところは改善していく取り組みをしています。
-コロナ禍でなかなか思うように進まないことも多いのでは?
私たちの大きな目的のひとつに、ひころの里をたくさんの人に知ってもらい、足を運んでもらう、そして町民のみなさんに有効活用していただくというのがありますが、コロナ禍において人を呼び込むイベントや広報活動がすべて足踏み状態。もどかしい思いの中で、私たちが始めたのが文化財の整理です。町指定文化財でもある松笠屋敷には貴重な資料や調度品がたくさん残されています。これまでその一部を展示して一般公開してきました。しかし、保管されている場所がバラバラで、貴重な資料がみなさんの目に触れることないまま埋もれていたり、扱い方がわからずに埃をかぶったまま放置されているようなことが結構あったんです。そこで町の教育委員会に協力してもらい、文化財の扱い方や保管の仕方、展示方法などを教わることにしました。スタッフみんなが文化財への知識を深めることで、訪れるお客さんへの新しい発見や学びにつながるようなガイドを、堂々とできるようしたいと考えています。今はそのための準備期間ですね。
-アフターコロナで新たに挑戦したいことは?
集客につながる仕掛けを作っていきたいです。私は震災語り部を長年やって来ましたが、震災から10年が経ち、震災の経験だけではなく、町の魅力も一緒に伝えたいと強く思うようになりました。例えば震災復興祈念公園を案内した後に、ひころの里でまゆ細工の体験をしていただく、というように復興した町の様子と、古くから伝わる地域の文化を同時に体験できるツアーなど、アフターコロナに向けていろんなアイデアを考え中です。
また、ひころの里コンソーシアムのメンバーはそれぞれが自分の得意分野を持っています。メンバーのアイデアを形にする場所として、ひころの里を活用したいと考えています。例えばノルディックウォーキングが得意なメンバーによる入谷ノルディックウォーキングツアー。ツアー後にはひころの里の「ばっかり茶家」で地元のお母さんたちが作るおいしい料理を食べてもらうのもいいですよね。もちろん、メンバー以外でも地域を盛り上げるアイデアを持ってきてくれる人には場所の提供をはじめ、積極的に協力したいと考えています。
地域住民が気軽に利用できる場所に
ー「ひころの里」、これから地域の人たちにとってどんな場所にしていきたいですか?
入谷の暮らしや文化を伝えたり、イベントを行う場所としてはもちろんですが、もっと身近に感じてもらえる場所にしていきたいです。実は、名前は聞いたことはあるけど、どんな施設かわからないと言われることが多いんです。今、週に1度ほど地域のお年寄りが来て広場でグラウンドゴルフを楽しんでいるんですが、その方たちがボランティアで定期的に草刈りをしてくれるんです。「いつも自分たちが使っている場所だから」と言って。そういった地域の方とのつながりをもっと増やしていきたいと思っています。
ここは緑に囲まれているので季節によって風景が変わります。花の季節、新緑の季節、紅葉の季節、散歩するだけでもゆっくりとした時間が流れ、とても癒される空間です。地域のみなさんの散歩コースとしてふらっと寄っていただけるような、そんな場所にしたいです。
これからの季節は紅葉がとてもきれいです。みなさんもぜひ一度、足を運んでみてください。スタッフ一同、お待ちしています。