震災10年を迎えた令和3年3月11日。晴天に恵まれた南三陸町で新たな追悼の場において、町長らが献花を行いました。追悼モニュメントが設置されたほか、「宇宙桜」と呼ばれる宇宙を旅したサクラが植樹されています。
震災10年目に完成。戸倉地区追悼の場
震災からちょうど10年を迎えた3月。南三陸町戸倉地区にある戸倉公民館(旧戸倉中学校)敷地内海側に面した一角に、「戸倉地区追悼の場」の完成を迎えました。追悼の場には、「3.11未来へつなぐ命のバトン」と刻まれた追悼モニュメントを設置。また「宇宙桜」と呼ばれるサクラが、2月22日に植樹されました。
現戸倉公民館は、東日本大震災までは戸倉中学校として使われており、町指定の避難場所にもなっていました。そのため震災当日も中学校関係者をはじめ、多くの地域住民が避難していました。しかし大津波はその高台まで押し寄せ、校舎一階部分まで浸水しました。今回完成した追悼の場と植樹されたサクラには、高台にまで津波が押し寄せたということを震災の教訓として未来へとつなぐ想いも込められています。
宇宙を旅した桜。戸倉地区のシンボルに
戸倉地区追悼の場の完成に先立ち、2月22日に行われた「きぼうの桜植樹式」。東北被災3県を中心に行われているプロジェクトの一環として、津波到達地点に未来への希望のシンボルとなるサクラの苗木を植樹しているもので、今回戸倉地区にも「宇宙桜」が植樹されました。
宇宙桜は、2008年に日本各地の千年級の桜の種が集められ、国際宇宙ステーション実験棟「きぼう」に運び込まれた種から育ったサクラです。宇宙で約8カ月半滞在したのち、2009年に若田光一宇宙飛行士と共に地上へ帰還。発芽したのはごく僅かで、大切に育てられてきた貴重な桜が「宇宙桜」もしくは「きぼうの桜」と呼ばれています。今回、戸倉地区追悼の場に植樹された「宇宙桜」は、高知県仁淀川町にある「ひょうたん桜」の種から育てられた宇宙桜で、接ぎ木により増殖した苗木になります。
犠牲になられた方々への想い。未来への歩み
3月11日、献花のため、佐藤仁町長を始め、町会議員や戸倉コミュニティ推進協議会らが参列しました。献花後、町長挨拶では「高台にあった戸倉中学校は、津波の被害はないだろうと思っていた。発災から数日後、足を運んでみると津波によって破壊された体育館通路に車が刺さっているのを見た時は衝撃だった。」と途中言葉を詰まらせながら当時の状況を振り返りました。「この場所で犠牲になられた方々へ想いを馳せながら、明日に向かって歩んでいければと思います。」と挨拶しました。
長いようで早かった10年。忘れることのない記憶
戸倉コミュニティ推進協議会会長の佐藤泰一さんは「10年長いようで早かった。当時、この場に居合わせた子ども達は本当に辛かったと思う。震災を経験した私たちにとっては、震災を忘れることはありません。この場所が地域の憩いの場となり、犠牲になられた方々と繋がれるような場所になって欲しい。」と話しました。今年植樹された宇宙桜は、来年には花を咲かすとのこと。宇宙桜が戸倉地区の希望となり、シンボルとして震災の教訓を未来へ繋いでいくことを願っています。