懐かしい写真が並ぶ『あの頃に会いに行く南三陸の暮らし展』

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復興が進みかつての町の姿を見ることも、鮮明に思い出すことも年々難しくなっています。そんな中、震災前の写真を展示する企画が2月から南三陸311メモリアルにて開催されています。展示の内容や開催にあたっての想いを取材しました。

何百枚もの「あの頃」の南三陸の風景

会場はさんさん商店街に隣接する「南三陸311メモリアル」内みんなの広場。

壁一面に広がるのは昔懐かしい“震災前”の南三陸の写真の数々。

その数なんと300枚以上。集まったものは1300枚近くなるのだとか。

白黒写真から震災直前の頃まで日常の風景や町内行事の様子、運動会や観光案内など多種多様な写真たちは、昔を知る人からすれば懐かしく、知らない人にとってはかつての姿を知ることが出来る貴重な資料です。
「町内の方々は津波で写真を流されてしまいましたが、今回は町外にお住まいの方から数多く写真をご提供していただけました」そう話すのは南三陸311メモリアルの高橋一清さん。

「初任地や転勤先が南三陸で、その土地での思い出を残そうと写真を撮っていた方々からたくさん写真を送っていただけました。その人の気持ちが写っていますよね。」

県の職員さんや町内で被災を免れた地域にお住まいの方々からたくさんの写真が提供されたとのこと。
送ったくださった人それぞれに当時の思い出や忘れない、忘れたくないという気持ちがあったのでしょうと一清さんは語ります。

今はもう見ることが出来ない町並み。その当時の人々の表情やお店の看板、何の変哲もない当たり前の風景がこの土地にあったことを教えてくれるような、忘れそうになりそうな小道を思い出させてくれるような写真がずらりと並んでいます。

町内のイベントや学校行事などの写真が並ぶ

 

今では珍しい白黒写真も寄せられた

伝承施設というハードルを越えるために。

今回の企画展開催について一清さんはこう話してくれました。

「被災した方々にとってみれば欲しい写真でもあるだろうし、懐かしくてあの頃楽しかったなとかあの人もいるねとか、さまざまな記憶が蘇ってくるものがたくさんあるんじゃないかと思っています。一緒にあの時間を過ごした町民の方々にもぜひご覧になってほしいなと思っています。」

震災の伝承施設、という肩書きは町内の人にとって良くも悪くも足が遠のいてしまうものでした。
地域の方に受け入れてもらえる場所にしたい、そんなスタッフの想いが企画展には溢れていました。

「今回はなるべく人の表情が見えるものということにしていますけれども、実際やってみると町並みだけでも様々な想いが込み上げてくるんだなという気付きもあるので、色んな企画を今後考えていきたます。」と笑顔で話してくれました。

写真の持ち主からのコメントが付箋に書かれている

復興の過程でどうしても薄れてしまった以前の町の姿を見ることで、思い出話や憩いの場として集まるきっかけになれれば。震災のことだけではなく、この町の歴史を伝えられる場所にこれからなっていくのでしょう。

 

ジオラマで深まる以前の町並み

取材時は五日町・南町・本浜町周辺のものが展示されていた

企画展の中には写真展示の他に、2014年に製作された志津川地区の再現模型も展示されています。
こちらは時期によって展示される地区が変わります。

2/15~3/13 五日町・南町・本浜町周辺

3/15~4/10 新井田・天王山・大森周辺

4/12~5/15 林・塩入周辺

※展示予定は変更することがあります。

震災前の自宅やお店の名前が書かれているので、より詳細に当時の町並みを思い出すことが出来ます。
通学路にあったあのお店、友達の家までの道、よく立ち寄った公園など、1人で行っても友達を誘って何人かで行っても楽しめるジオラマになっています。

鮮明に思い出せるくらい詳細に作られた建物の並びと住民による名前の書き込み

 

復興のその先へ進む町と共に

企画展の雰囲気は伝承施設内でも少し違っていて、訪れる方々の明るい声が響いています。
「こんな道あったね、懐かしいね」「昔来た時はこんな感じだったのを思い出した」
『あの頃は良かった』と哀愁に浸るのではなく、楽しかった記憶を懐かしみ共有する姿が見られました。

町民以外にもメモリアルを訪れたお客さんも展示を鑑賞しています

震災前に何回か町内を訪れ宿泊していたという仙台からのお客様は「自分は町民ではないけども人が住んでいる、生活感が昔の写真から出ていて、昔の風景は風景ですごく人の生活感が出ていますね。今の街の印象とは全然違う、川沿いの風景が全然違いますね。こういう生活があったんですね。色んな行事が復活すると良いですね」と当時の写真を懐かしくご覧になっていました。

開催してから町民の方々が多く足を運んでくださったのを受け、一清さんも「伝承館もオープンして間もないです。今後季節ごとに企画展をしていきますが、その中でまた写真の様々な活用やテーマに合わせた展示を考えていければと思います。」と今後の展望を話してくれました。

展示が始まってからも写真はどんどん集まっています。当時の思い出を共有したり、当時を知らない友人や子どもにも伝え残していける企画の今後がこれから楽しみです。

 

開催スケジュール

『あの頃に会いにいく 南三陸の暮らし展』

期間:2月15日〜5月15日

時間:9:00~17:00(火曜日休館)

入場料:無料(館内の無料エリアにて開催)

H P:南三陸311メモリアル

チラシ画像:南三陸311メモリアルHPより

 

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