昨年10月から11月いっぱいまで、2ヶ月にわたる『めぐるステーション=ごみ分別と住民交流』の実証実験が終了しました。日常の暮らしで必ず出される生活ごみについて、新たな気づきや取り組みなど、利用者目線で追ってみました。前編後編の2本立てです。
ごみ集積所が毎日開放されている
南三陸町では各行政区に燃やせるごみと資源ごみの集積所を設けていますが、それぞれ朝6時から8時半までに出すというルールの他にも決まりごとがあります。
燃やせるごみは、①町指定のごみ袋に入れて出す。②生ごみは水を切って出す。③ごみを分別し、資源に出せるものは資源に。④大きなものは40㎝以下・厚さ10㎝以下にするなど。
一方、資源ごみは、決められた集積場に前日の夕方に持ち込まれたたコンテナ(かご)に分別するという重要な作業が求められており、きちんと分けられないと収集されず、そこに置かれたままになってしまいます。
会社帰りの主婦Aさんは、「資源ごみの日は平日なので、時間がなく出せないことが多い。ここなら毎日開いていて、会社帰りでも持ち込めるので助かるわ!」と手際よく分別しながら話していました。
また、近くの住民からは「資源ごみの日に雨が降ると、段ボールや新聞紙が濡れてしまうので出せないから二週間分たまってしまう。テントで覆われたこういう場所はうれしい」という感想が聞かれました。
燃やせるごみの分別は面倒だと思っていた
資源ごみとして分別するのは、だいぶ慣れているようなので、分類されたコンテナ(かご)の位置さえ覚えればさほど難しくないようでした。今回の実証実験の一番の目的であった、燃やせるごみとして指定袋に詰めていた「プラスチック製品」をわざわざ分けてみるという作業をどう感じるか?!も気になるところ。
毎日立ち寄るという住民は「最初は面倒だったわよ。だけど、【プラ】と書かれたモノがこんなに多いとは知らなかった。生ごみも分別できるので、燃やせるごみはこれまでの三分の一くらいに減りました」と驚きを隠せない表情で語ってくれました。
確かに、燃やせるごみの分別では、お菓子の袋や弁当のトレー、商品のラベルなど圧倒的に【プラスチック】が多くなっている。現状、町のルールでは燃やせるごみとして一緒に出せるのだが……。
めぐるステーションを運営するアミタ(株)の担当者は、「プラスチックだけを処理する業者も視察に来ました。今後、丁寧に分別されれば可燃ごみが資源になる可能性があります」と期待を寄せています。
「鯨や魚の胃袋から異物が見つかりました」とか、「ある海岸の波打ち際には大量のプラスチックごみが漂着しています」といったニュースが飛び交う昨今、身の回りにどれだけのプラ製品があるのか確認できただけでも良かったという声もあり、参加された住民の多くは日常生活の中で少しでも社会貢献ができるのではと賛同し取り組んでいた姿が印象的でした。
分別した資源ごみの行方は
せっかく分別したのだから、何かに活用してもらうと嬉しいというのは多くの利用者の声です。
缶や瓶、ペットボトル・新聞紙などがリサイクルされることはよく知られているが、『めぐるステーション』では持ち込まれたすべてのごみの行方をお知らせしています。
牛乳やお酒の紙パックは『障がい者通所施設・のぞみ福祉作業所』に運ばれ、活動(紙すき)に活用されるほか、庭木・竹・草などは堆肥になり、これまで燃えるごみの指定袋に当たり前のように入れていたプラスチック類も固形燃料又はセメントに生まれ変わると表示されていました。
もったいない!の発想=リユース
ある日、大量の衣類を抱えた主婦が「これね。まだ新品なんだけど、サイズが合わないから捨てる。このかごに入れて良いの?」とやって来ました。スタッフは「え~っ、もったいないですよね」そう言って建物の壁にある陳列棚に置いてみました。自分には不要だと思うモノが、誰かにとっては『良いモノ=逸品』になる可能性があるのでは?と考えて設けたリユースコーナーが、人気急上昇となっていったのです。
「避難所や仮設住宅暮らしの時、たくさんの支援物資を頂いて助けられた。でも7年半経って、整理してみたらもう着られない衣類や使わない食器がいっぱいある。もったいないから誰かに差し上げたい」と話します。
毎日『フリーマーケット』が開催されているかのような盛況ぶり。ウインドウショッピングの感覚で眺めバーゲンセールのように手に取る。誰かの不用品が別の誰かの貴重品に生まれ変わる場所になりうることを実感しました。
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