今年度に入り、南三陸町では新たに県内外から男女5名の地域おこし協力隊が着任しました。4月1日から南三陸・海のビジターセンターを拠点に活動している北島めいさんは、どんなスポーツもこなすアスリート派、健康運動指導士の資格も有します。そんな北島さんが南三陸に移住、海のアクティビティなどの自然体験活動を事業化するというミッションに挑戦すべく、地域おこし協力隊になりました。着任から半年、北島さんの現在の取り組みや任期中に叶えたいことなどを伺いました。
自然の中で身体を動かす仕事がしたい!心機一転 南三陸へ
北島めいさんは茨城県出身の27歳。子どもの頃から身体を動かすことが大好きで、大学4年間はサッカーに打ち込んだそう。在学中、健康に高い関心を持ち、卒業後は“睡眠”“休養”を通じて、人々の健康に寄与したいと寝具メーカーに就職。4年間、営業の仕事に就きました。しかし、将来について考えたとき、若いうちに一度は自然の中に身を置いて、身体を動かす仕事をしてみたいと、心機一転、今回の地域おこし協力隊に手をあげたそうです。
北島さんは南三陸・海のビジターセンターを運営するNPO法人海の自然史研究所に所属しながら、現在、任意団体として自然体験活動を提供している「おきなくらEELs(イールズ)」の法人化を目指します。
ミッションは「おきなくらEELs(イールズ)」の法人化
「おきなくらEELs」は三陸復興国立公園をフィールドに、シーカヤックやSUP、スノーケリング、みちのく潮風トレイルなど、森里海を満喫できる多彩なプログラムを展開する、地域のメンバーで構成された任意団体です。メンバーは自然体験活動リーダー(NEAL)の資格を持ち、ガイドとして活躍。自然体験活動を通して、楽しさと学びを提供しています。個性豊かなガイドによるプログラムは大人から子どもまで楽しめ、リピーターもつく人気ぶり。「自然体験を学びにつなげる」「豊かな自然を地域の魅力として発信し、新たな価値を創出する」ことを目標にEELsの活動を事業として成立させ、法人化を目指します。北島さんはEELsの事務局として、経営管理、営業活動を行うとともに、自らもガイドとして活動し、将来的には経営者としての活躍が期待されています。
北島めいさんにインタビュー
―移住しようと思ったきっかけは?
「前職では都会に身を置いて生活をしていましたが、心のどこかにいつも“自然に囲まれた環境の中で生活したい、自然の中で身体を動かす仕事に就きたい”という思いがあって。いろいろ悩んだ末、行きついた答えが移住でした。移住サイトを調べているうちにEELsの地域おこし協力隊の募集を見つけました。“これだ!”って思いましたね。これまで南三陸には一度も来た事はありませんでしたが、移住定住支援センターの方から、町民が循環型のまちづくりに参加していたり、林業や漁業で国際認証を取得している町の取り組みなどを聞いたりして、かっこいい町だな、行ってみたいなと思って。数週間後には実際に町を見に行って、会って話を聞いて、半年経たないうちに移住してました。(笑)」
―将来的には経営を任される、応募するときハードル高くなかった?
「めちゃくちゃ高かったです。今でもプレッシャー感じています。でもEELsの『あそびを学びに変える』というコンセプトにすごく共感して。ただマリンスポーツやって“楽しかったね”で終わるのではなく、楽しみながら海の環境のことを考えたり、生き物に触れたり、学びにつなげるプログラムを提案しているところに魅力を感じたんですよね。経営するという不安をかき消すぐらい。なので、経営についてはこれから一生懸命勉強していきます!」
―力を入れて取り組みたいことは?
「ミッションであるEELsの活動を事業として成立させ、法人化することです。今の任意団体が資金面や人材確保などの面において自立するためには何が必要かというのを、この半年間、考えていました。まずは、ガイドの魅力を引き出して、質の高いプログラムを提供できるよう、ガイド基準の策定から取り組みたいと思っています。所定の認定を受け、トレーニングを積んだガイドで集客につなげ、ゆくゆくは、“個性が輝きつつ、自然を正しく語れるガイド集団”として、EELsのブランドイメージになればと考えています。私たちの団体が、この町の自然を守りながら、経済も回していくような、地域に根付いた存在になりたいです。そのための情報発信にも力を入れたいですね。」
EELsを通して海に関わる若者を増やしたい
着任から半年が過ぎ、町での生活や仕事にも慣れてきたと話す北島さん。「自分に任されているミッションの重さに押しつぶされそうになったこともありましたが、今は自分の置かれている立場や、これから取り組むべき課題が明確になり、EELsの事業化に向けて少しずつですが、前に進んでいます。自らガイドとして現場に出るなど、できることも増えてきました。」
さらに、任期中に叶えたいこととして、「この仕事をしながら、意外だったのが、体験に訪れる地域の子どもたちが、海の楽しさや魅力に気づいていないと感じることがあること。資源として活用する人がいないと、財産として守っていく人もいなくなってしまいます。EELsの活動を通して、町の若い人たちに海に関心を持ってもらい、ゆくゆくはEELsの活動に関わってみたい、そう思ってもらえるような法人を目指したいです。町と関わり続けながら、目の前の課題に取り組んでいきたいと思います。」と話していました。
南三陸の豊かな自然を守りつつ、経済を回していく、難しいミッションですが、悩みながらも前に進む北島さんの姿に、今後の活躍が期待されます。
※地域おこし協力隊
地域おこし協力隊は、地方自治体から委嘱を受け、地域の魅力発信や特産品の開発、住民の生活支援など、さまざまな方向から地域を活性化させる活動に取り組む都市部からの移住者です。南三陸町では隊員が地域の生活になじむことができるよう、また起業・事業継承に向けたノウハウを学びながら活動に取り組めるよう、町内で活動している事業者・団体が隊員を雇用する形をとっています。