人口減少が進む南三陸町。町内唯一の志津川高等学校も定員割れが続いています。そのような状況を受け始まったのが志津川高校魅力化プロジェクト。教育魅力化専門官として、取りまとめをしている佐藤陽さんに話を伺いました。
危機的な状況を受けて生まれた教育魅力化構想
人口減少や少子高齢化と地域課題が進む南三陸町。子どもの数も減少傾向にあり、小中学校も震災前から統廃合をしています。また町内唯一の志津川高校も定員割れが続き、町内からの進学率も5割を切っているのが現状です。
このような危機的状況を受け2016年に生まれた取り組みが、「志津川高校魅力化プロジェクト」。
プロジェクトの取りまとめしているのが南三陸町教育魅力化専門官 佐藤陽さんです。南三陸町の特色を活かした教育環境を整備することを目指しプロジェクトの構想策定や、小中高の連携・調整を担っています。
中学時代の体験が教育・人づくりへの関心を
兵庫県出身の佐藤陽さん。幼少期に阪神淡路大震災を経験し、震災で弟を亡くす壮絶な体験をしています。教育や人づくりに興味を持ったのは、中学2年生の時。「周りの大人が、子どもの可能性に蓋をするような言葉が嫌いだった」と佐藤さん。自分は子ども達の可能性を広げてあげる事ができる大人になりたいと思ったのが、教育や人づくりに興味を持ったきっかけでした。
社会人生活で挫折。南三陸の元気な姿に励まされ再起
その後、教育や人づくりに関心を持ちつつ高校、大学と進学。卒業後は自身でキャリア教育専門の学習塾を立ち上げました。始めは経営に苦しみつつも、徐々に生徒数も増えていったと言います。
その後、たまたま出会った大手企業の教育サービス部門へ知見を得ようと入社。しかし、仕事にも慣れ始めた頃、仕事で失敗し挫折。夜中、東京の自宅から誰もいない所を目指し、車で北上。翌朝たどり着いた先が、南三陸町の「さんさん商店街」でした。
「商店街は賑わっていた。震災がありながらも前向きに生きる姿に救われた」と当時を振り返ります。
目指すは志津川高校に入りたいと選んでもらえる学び場
昨年度、町内教育関係者らでつくる南三陸町高校魅力化協議会で話し合いを重ね、「第1期志津川高校魅力化構想」をまとめました。今年度からは、具体的な政策を3つの専門部会に分かれ検討していきます。また地域の方を対象とした地域説明会も実施予定。
佐藤さんは、「約5年間南三陸町の子どもたちと関わる中で、夢や将来の可能性に蓋をしている子が多いように感じている」と話します。「一人ひとりがなりたい将来に近づける学び場つくり、そして志津川高校に入学したいと思ってもらえる環境を目指す」と意気込みます。
復興した姿、元気な南三陸を発信し続けるためにも
全国募集を視野に入れ、進められているこのプロジェクト。一度しかない高校3年間を南三陸で過ごすことで、第二の故郷として新たな関係人口の創出に繋がることも期待されています。全国からの支援に対して、復興に向けた前向きで元気な姿を発信してきた南三陸町。この先も元気な姿を全国に発信し続けるためにも、プロジェクトへの期待が高まります。
【志津川高校魅力化プロジェクト】