ASC認証を取得した若手漁師の想い【後編】/後藤伸弥さん

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日本初となる、二枚貝養殖のASC国際認証を取得した南三陸町戸倉地区。震災を機に取り組んだ漁場改変が評価され、今年度の農林水産祭 水産部門で天皇杯を受賞しました。そんな戸倉地区で震災がありながらも再び漁師の道を歩んでいる、若き2人の漁師に話を伺いました。その後編をお届けします。

いずれは大好きな海で仕事をしたい

前編(後藤新太郎さん)のお話しはこちら

続いてご紹介するのは、漁師歴17年になる後藤伸弥さん。

後藤伸弥さんも高校卒業と共に、家業であった漁師の道を歩んでいます。小さい時から、海が遊び場になっていたと幼少期を振り返ります。高校では水産のことを学ぶべく、水産高校に通っていました。「家督(長男)だから、家業を継がなきゃいけないという責任もあったのかもしれない」と話すものの、大好きな海でいずれは仕事したいと思っていました。

写真提供:後藤伸弥さん

海への熱い想い

津波の被害も大きく受けた後藤伸弥さん。漁業が再開できるまでの間は、作業代船で2年ほど働いていました。

大津波の直後でありながら、海での仕事をしていた当時の自分に「普通は考えられないよね」と話します。後藤伸弥さんの並々ならぬ、海への熱い想いが感じられます。その後、漁業の本格再開に合わせて漁師へと戻ります。

消費者に近い、生産者でありたい

「ベテラン漁師になるにはもう50年は必要」だと後藤伸弥さんは言います。

天候の見極め、種の選び方など、まだまだ勉強することはたくさんあると話します。しかし、インターネットの発展により、消費者の声を聞くことができるようになった現在。丹精込めて作った海産物の感想をSNSやインターネットで見かけるだけで嬉しく、感想を励みにしています。

また、若手が少なかった震災前に比べ、震災後、若手が増えたことで気軽に情報交換ができるようになったことは嬉しいと話します。消費者のニーズも取り入れつつ、美味しいカキを提供すること。後藤伸弥さんは「消費者と近い、生産者でありたい」と意気込みます。

写真提供:後藤伸弥さん

「以前のようには戻したくない」若き2人の想い

前編後編でお届けしました、戸倉カキ生産部会で活躍する後藤新太郎さんと後藤伸弥さんの想い、いかがだったでしょうか。震災がありながらも、漁師を再開する覚悟。そして2人の海への強い思い入れも取材を通して感じられました。

震災前は、品質や環境のことを考える余裕はなかったと2人は話します。

「震災前の状況を知っているからこそ、以前のようには戻したくはない」

「震災後、先代が築き上げたこの漁場を守っていくことが、最低限の役目」

だと2人は口を揃えていました。また、海に限らず林業や農業でも震災後、様々な取り組みをしている南三陸町。他の産業と連携して何かしてみたいと2人は話していました。

今の漁場を守りつつ、更なる発展、挑戦をしている2人。一人前の漁師には、険しい道のりが2人を待ち受けているかもしれません。それでも、美味しいものを作り続けるために、2人の挑戦は続きます。

前編はこちらから

ASC認証を取得した若手漁師の想い【前編】/後藤新太郎さん

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