志津川東団地の隣に、デイサービス施設と交流スペースからなる「結の里」がオープン。住民参加でつくる福祉施設として、多世代が集うにぎわいの場とすることを目指します。
高齢者福祉とコミュニティづくりの拠点に
志津川地区に新しく高齢者生活支援施設が造られました。町の中心部で、高齢者福祉とコミュニティづくりの拠点となることが期待されます。
震災後、住まいの再建が進むなか、公営住宅におけるコミュニティづくりが重要な課題となっていました。南三陸町は平成25年度から、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられる環境づくりについて検討を重ねてきました。ハード・ソフト両面にわたり多くのアイデアが出されるなか、今回オープンした施設の構想が生まれました。
施設の半分は、定員17名のデイサービス施設。2室のデイルーム、ベッド付き静養コーナー、厨房、バリアフリー対応の浴室を備えています。残りの半分は、社会福祉協議会の事務室と、多目的の交流スペース。事務室は介護相談窓口や高齢者見守り拠点の機能をもちます。
4月27日に行われた落成式には、行政や建設の関係者など来賓約60名のほか、公営住宅の住民も足を運びました。佐藤仁町長は、「全国的にもあまり例を見ない複合的福祉施設であり、専門的かつ技術的な知見が必要だった。ご支援いただいたことにあらためて感謝を申し上げたい」と述べました。
「結の里」名前にこめられた願い
施設に隣接する志津川東団地は、入居者の半数以上が高齢者。東団地は、町役場や病院、スーパーなどが近くにあり、町内では比較的便利なエリアです。4月下旬には新しい町道が開通し、市街地にもアクセスしやすくなりました。向かいにはあさひ幼稚園があり、多世代交流も期待されます。
団地では以前から、サークル活動やイベントを通したコミュニティづくりが行われていました。その流れを引き継ぎ、この施設は「交流」を軸としています。地域に親しまれる施設にするべく、施設の愛称は公募で決められました。決定した名前は「結(ゆい)の里」。「手と手を結ぶ 笑顔を結ぶ 心を結ぶ」という意味が込められています。
施設には交流のためのカフェやウッドデッキが設けられています。公営住宅に面する広場の愛称は、志津川高校の生徒から募集。「色々な方々と町民がふれあいにぎわう場所になってほしい」という願いから、「リアスふれあい広場」に決まりました。落成式後には、あさひ幼稚園、入谷ひがし幼児園、コール潮騒などによるイベントが行われたほか、ウィメンズアイ、のぞみ福祉作業所など町内有志団体によるブース出店もなされ、広場は温かなにぎわいに包まれました。
町民と共に、南三陸カラーの施設をつくる
今後も町民と共につくる施設を目指している結の里。昨年度からは、住民ワーキンググループが組織され、交流スペースやウッドデッキの活用について議論を重ねてきました。
ワーキンググループで活動した住民はステージ班、カフェ班、食堂班に分かれ、落成式当日のイベントを企画・実施しました。ステージ班で司会を務めた鈴木清美さんは「住民だけでなく、高齢者も障がい者もみんなが集まれる場所をプランしたい、という声は多く出ている。具体的にどう進めればいいか、これから考えていきたい」と話します。
住民検討会の運営に関わったジオ・プランニングの塩路安紀子代表取締役は、「住民の方々が安心して暮らしていけるよう、日頃から気軽に使っていただき、この建物がゆっくりと、南三陸らしい魅力を発揮していくことを願っている」と語りました。
結の里が、まちに暮らす人々とともに、どんな集いとにぎわいの場になっていくのか。南三陸町のコミュニティづくりは、新たな一歩を踏み出しました。