『めぐるステーション』実証実験を終えて(後編)

2555

昨年10月から11月いっぱいまで、2ヶ月にわたる『めぐるステーション=ごみ分別と住民交流』の実証実験が終了しました。日常の暮らしで必ず出される生活ごみについて、新たな気づきや取り組みなど、利用者目線で追ってみました。前編後編の2本立てです。

感謝ポイントと住民交流

前編はこちら 「『めぐるステーション』実証実験を終えて(前編)」

めぐるステーション実証実験のもう一つの取り組みが『感謝ポイント』の付与です。登録した方がステーションにやって来てカードを端末にかざすと50ポイントが付く。隣接する薪ストーブの薪割りを手伝ったら30ポイント、血圧計で計ってみると10ポイント、リユース品の提供で20ポイントなどの特典も。また、貯まったポイントは『えんがわカフェ』でコーヒーやお茶に50ポイントで交換できたり、200ポイントで『あさひ幼稚園にクリスマスツリーを贈る』活動に換えたり、300ポイントを液肥で作ったお米(めぐりん米=入谷産)に換えたりもできます。

「今日は90歳になる婆ちゃんを連れてきたの。たまに外に出ないと・・・コーヒー券二枚お願い」 ごみを持参した主婦とそんな会話が何度となく交わされていました。

新しい街の暮らしで課題となっているのが「高齢男性の方々の孤立化」。これが特効薬になるのかどうかも半信半疑だったが、実に功を奏していました。それが薪ストーブの設置と薪割り体験です。

昔から、主婦ら女性が集まってくるのが井戸端で、男どもの居場所は囲炉裏端と言われています。薪ストーブの炎を見ながら世間話に花を咲かせるじい様たちの笑い声が響いていました。ここに、薪割りしたい!と興味津々の子どもたちや焼き芋食べたいという主婦たちも加わり、ここが老若男女関係なく大好評になっていました。

10月後半になると、日替わりで移動販売の車が横付けされるようになりました。月曜日はタコ焼き、火曜日はクレープ、水曜日は焼き鳥、金曜日はポップコーンやパンetc 買い物にちょっと不便な高齢者に人気なのは予想されたが、ごみ出しに来たついでに買い求めるほかの地域の方々も多くなっていたように感じました。

さらにさらに、入谷の農家さんが新鮮な野菜を並べ、100円程度で販売する【産直】まで登場し毎日の食事を支える場所ともなっていたようです。

子どもたちがそばにいる日常

結の里の向かいには「あさひ幼稚園」があり、いつも子どもたちの声が響いています。幼稚園児も毎日のようにペットボトルやプラスチック(おやつで出たお菓子の袋が多い)を持ってきますが、その姿が実に愛らしいとスタッフや居合わせた住民、結の里の職員らが大はしゃぎでした。

感謝ポイントの項目に「200ポイントであさひ幼稚園に感謝のモミの木を贈ろう!」というのがあり、賛同される方が一気に増えたので、期間中に植樹することができました。

「なぜここにこの木があるのか…成長した子どもたちが次の世代にいきさつを話しながら、みんなで取り組んだごみ問題と住民交流の輪が広がると嬉しいな」高年齢の出席者がつぶやいた姿が印象的でした。

11月27日、関係者が集まり素晴らしいモミの木が園庭に植えられた

実証実験が終わって

全国的な問題である人口減少、少子高齢化に加え、被災後の新たなコミュニティ作りも課題となっている南三陸町。『森里海ひと いのちめぐるまち 南三陸』について、いろいろな事業を試行錯誤しながら取り組んでいくことが必要であると思います。

この『めぐるステーション・実証実験』が、今後のまちづくりに反映されるのかあるいはされないのかは少し時間もかかりそうですが、利用された住民にアンケートをお願いしたところ、ほぼ全ての方から「継続してほしい」との回答があったと言います。

当初志津川地区100世帯を対象に始められたのだが、口コミで広がった参加世帯は401にも増えました。

「ステーションを作っても、そこまで行けない高齢者はどうするの?」という問いかけには、「西ヶ丘や旭ヶ丘の高齢者宅に伺って引き取りを行っています。皆さん、しっかり分別されていますよ」と、前出の担当者が答えてくれました。

新たな施設や事業運営にハードルはあるが、ごみ出しの意識や住民交流の面からも、町民全体で考えるに値する実証実験ではなかったかと、更地に戻った駐車場にて2ヵ月前の記者会見を振り返ります。

「『めぐるステーション』が目指すのは、ごみを出すという日常的な作業を通じて、資源の有効活用や感謝の気持ちを贈り合いから生まれる住民交流」と語られていました。まさにそうした場が住民主導で日々進化しながら育まれていた2ヶ月間でした。

「森里海ひと いのちめぐるまち」というビジョンを掲げた南三陸町。それをどのように具現化していくのか、詰まっている実証実験だったのではないでしょうか。これからどのような展開があるのか、楽しみです。

いいね!して
南三陸を応援

フォローする