移住者夫婦である筆者が、南三陸町で妊娠、出産を経験し、子育てに奮闘する中で「え、これって〇〇だったの?!」と感じたことを綴っていく連載企画。今回は人によっては頭を悩ませる問題、「妊娠報告」について書いていきます。
何はともあれまずは職場へ
【これまでのお話はこちら】
「第1話 決断の時は意外と早い!どこで産むか問題(前編)」
https://m-now.net/2018/05/baby-1.html
「第2話 決断の時は意外と早い!どこで産むか問題(後編)」
https://m-now.net/2018/06/baby-2.html
前回の記事「意外と決断の時は早い!どこで産むか問題」では、妊娠発覚と同時にいろいろ決断すべきことがあって焦ったよ、という話を書かせていただきましたが、これも人によっては頭を悩ませる問題かもしれません。そう、妊娠報告です。
世間一般的には、安定期と言われる5ヶ月ごろまで待って周囲に報告するパターンが多いのかもしれません。順番も、身内から徐々に範囲を広げて…と、なんだか密やかに恭しく、「ご報告」していくようなイメージがありました。
が、仕事をしているとそうも言っていられません。医師に妊娠を告げられて、生まれるのが1月だとわかったとき、頭をよぎったのは、「うわぁ、年度内か…」ということでした。その年度から新たにチャレンジした事業で、県の補助事業として採択決定したばかりだったのです。職場は少数精鋭、一人抜けたら当然人員は補充しなくてはなりません。早めに妊娠したことを職場に報告して、すぐに手を打つことが最も迷惑をかけない策だと思い、妊娠発覚したその足で夫と二人、私の職場に向かいました。
涙の報告行脚
報告したのは、まずは現場を切り盛りしている上司、そして代表理事と理事2名。この4名は、仕事のことを抜きにしても、親の次にまず最初に報告するというのは、夫とは自明のことでした。思い返せば、結婚式の招待状を持って行くのも、この4人から。上司と二人の理事に至っては、「私たち結婚を前提に付き合ってます」という報告までわざわざしに行ったくらい、公私ともにお世話になっている、いわば南三陸のお父さんのような存在なのです。
「すみません、ちょっとお話ししたいことがあって、いまから二人で伺ってもいいですか?」と電話した時点でだいたい用件は察したようで、面と向かって「実は今日病院に行ってきまして…」と言うあたりで顔がほころび、「8週目と言われました」と言うと満面の笑みで喜んでくれました。「よかったな!!」と言ってがしっと手を握られた時には、それまで妊娠した実感なんてなかったのが、その笑顔を見て思わず涙が出てしまいました。そして、最後には「あんだも父親になるんだからますますかしぇげよ!(働けよ!)」と夫の背中をばしんと叩く、というやりとりを4回リピート。
どの方も自分の孫ができるかのように喜んでくれて、4件回る頃には、「迷惑かけるから早く報告しなくちゃ」という思いから、「このうれしいニュースを一番に伝えられてよかった」という思いに変わっていました。
田舎の噂の伝わるスピードは早い
その後は、会った人からタイミングを見て報告していったのですが、こちらが言う前に「体調はいいの?赤ちゃんは順調?」と聞かれるパターンの多いこと。田舎なので噂の広まるのが早いのは言わずもがなですが、仮に風の噂で聞いてたとしても、直接言われるまで知らないふりしよう、とかそういうの無いんですよね。おかげで、誰からどの順番で報告していこうなんていう心配は無用でした。南三陸らしいなあと思いました。案外、このオープンな雰囲気のおかげで、妊娠中ストレスなく過ごせたのかもしれません。
妊娠中の周囲の反応で、子育ての意識は変わる
ハッピーなニュースなので、報告するともちろんみんな喜んでくれて、それだけでもとても嬉しいものなのですが、特に母親世代の方からの言葉はありがたかったなと思います。
「いつでも子守してけっからねー!」
と、何人の人から言われたことか。
あと、一番感謝しているのは職場の上司です。
スタッフが一人抜けて、新たに人を採用することは大きな負担であるはずなのに、「地域の宝を産み育てることだから、とにかく自分の身体を優先して」と言ってくれて、かなり気が楽になりました。
あなただけで子育てしようと思わなくていいんだよ。あなたは地域の宝を生むんだよ。という言葉をシャワーのように浴びたおかげで、今さほどストレスをためることなく子育てができているのだと思います。