学生の春休みと重なる2~3月は南三陸町にも多くの学生が訪れていました。そのなかでも、この春は「お試し移住」という新たな関わり方が南三陸町入谷地区でスタート。学生のスタディツアーや一般の旅行とは異なり、より地域に根差し、地域住民とともに活動を共にする南三陸での時間を過ごしています。
シェアハウスで始まった「お試し移住」プログラム
「お試し移住」の拠点となるのは「花見山ハウス」。昨年6月から入谷地区に誕生したシェアハウスです。もともと社宅として使われていた物件をリニューアルして、移住者などの住まいとして活用されています。
また単なる住まいとしてのみならず、地域を支える「地の人」、新たな価値観をもたらす「風の人」、ものごとに光をあて価値を見出し発信する「光の人」が交わり、新たな価値を生み出していくシェアハウスがコンセプトとなっています。「お試し移住」プログラムは、そんな多様な人が集まるシェアハウスを拠点に南三陸の「暮らす」「働く」を体感することを目的に、地域でより強いつながりを生みだし、将来的な移住者の獲得を目指す取り組みです。
農業をテーマにお試し移住
大正大学地域創生学部2年生の星野洸太くんと吉田昌誠くんは2月16日~22日までお試し移住として南三陸町に滞在をしていました。彼らのテーマは「農業」。花見山ハウスの近隣にて農業を営む南三陸農工房が主催となった農業体験型合宿を体験しました。
大学1年時に学校の実習で南三陸町を訪れていた二人は、それぞれ農業や水産加工などでインターンシップを経験。農業に特化したお試し移住プログラムに魅力を感じ、このプログラムに今回参加したといいます。
農業合宿では、施肥や畝立て、ネギの定植といった、一日限りの農業体験ではなかなか味わうことのできない農作業の一連の流れを体感しました。
「普通に来ただけでは体験できないようなことがたくさん体験できてとてもおもしろかった。農作業の大変さを身にしみて実感したし、普段当たり前に食べている農作物がこうやって一つひとつ丁寧に作られたものだと思うと、ありがたみを感じることができた」と話します。
手間暇かけて育てた農作物が非常に安価で取引され、それが担い手不足につながっていることを実感したという二人は、お試し移住プログラムの最後に農業の課題解決策を受け入れ先となった農工房や、地域住民に提案を行いました。
南三陸町で滞在して地域とのつながりが強くなるだけではなく、大事な価値に気づかせてくれる、そんなお試し移住期間となったようです。
人に会うための「お試し移住」期間
2月28日~3月2日までお試し移住を体験した浅利真梨奈さんは、「人に会うための4日間だった」とお試し移住期間のことを振り返ります。半年前に、南三陸研修センターにてインターンを行っていた浅利さん。この滞在中に、以前お世話になった人などたくさんの南三陸の人たちに会っていたといいます。
1カ月間におよぶインターンシップ期間中に南三陸町との強いつながりを得た彼女。「お試し移住」という仕組みを使うことによってそのつながりがより強いものになりました。
「南三陸には3回目の訪問になりましたが、いつも感じること、それは『成長して帰ってきたい』ということです。南三陸は多種多様な仕事を持つ人たちが一体となり、『この町をもっとよくしたい』という思いにあふれていて、その熱さがいろんな方から伝わってきます。いつ、また来られるか分かりませんがその日が来るまで成長し続けたいと思った4日間でした!」と話していました。
関係人口の拡大へ
この春に「お試し移住」プログラムを利用した学生は6名。それぞれがそれぞれの関わり方で南三陸との関わりを自由に深めていたようです。
南三陸の一次産業に触れる期間に、もしくはこれまでのつながりを強める期間として「花見山ハウス」を拠点に、「お試し移住」という新しい関わり方が生まれています。長期的な「定住人口」や短期的な「交流人口」ではない、南三陸に関わる多様なあり方を示す「関係人口」の拡大に大きな役割を果たすことでしょう。