南三陸なうの視聴者のみなさま、こんにちは。海研一です。シリーズも7回目の今回は、今が旬、美味しい美味しい牡蠣の話。前回がサケ、今回が牡蠣、秋から冬は食べ物の話が続くなあ。まあ、そこがすごいのだから仕方がないだろう。
海のミルクと呼ばれるほど栄養豊富な牡蠣
さて牡蠣だが、みなさんはお好きだろうか?海研一はとても好きだ。プリプリの牡蠣を生で食べるのも好きだし、蒸されているのも好きだし、牡蠣フライも大好きだ。味ももちろんだが、牡蠣を食べると元気になる気がするので疲れたときなどにも食べようと思っている。実は牡蠣にはグリコーゲンやタウリン、ビタミンB12がたくさん含まれていて、これが肝機能を強化してくれるようだ。海研一は、一度牡蠣をたくさん食べた翌日にお酒を飲む機会があって、けっこう飲んだのだが全く酔わず、お酒の席をあまり楽しめなかった思い出がある。それぐらい肝臓に効くようだ。身をもって実感している。
また鉄分や銅なども含まれていて貧血にもいいようだし、亜鉛は免疫力を高めるので寒い時期には風邪の予防にもなる。いろいろな栄養が豊富に含まれていて「海のミルク」と呼ばれているのもわかる。
南三陸町ではこの牡蠣、種類でいえばマガキの養殖をしている。戸倉エリアに限った話になってしまうが、このマガキ養殖の活動がASC(Aquaculture Stewardship Council 水産養殖管理協議会)という国際環境認証を取得した。2016年3月30日、宮城県漁業協同組合志津川支所戸倉出張所が管轄するマガキ養殖が、環境に配慮した養殖活動をおこなっていると世界水準として認められたのである。
ASC認証とは?
このASCというのがどんなものかを説明しよう。
ASCとは国際的な海洋保全活動の一環として、海の自然や資源を守って養殖生産された持続可能な水産物を認証する仕組み、制度である。養殖は、世界の水産物の半分をしめるほどの生産量になっているが、海洋環境の悪化や餌となる天然魚の過剰利用、養殖魚の逃避による生態系の撹乱(牡蠣は無給餌養殖であり、逃避ということもなく、また地元産のものなので関係ないですが)など、環境に悪影響を及ぼすことも少なくないので、認証制度を通して持続可能な養殖活動が営まれるようにしていこうとしている動きである。
具体的には、マガキが対象となる二枚貝養殖では、1.法令遵守 2.自然環境および生物多様性への悪影響の軽減 3.天然個体群への影響 4.病害虫の管理と防止 5.資源の効率的な利用 6.地域社会に対する責任 7.適切な労働環境の7原則に基づいた基準が設定されており、これにそった審査を経て認証に至る、非常に厳しいプロセスがあるのだ。
養殖棚を震災前の3分の1にして環境配慮
志津川湾での養殖は、東日本大震災の大津波によって壊滅的な被害を受けた。戸倉でのマガキ養殖は、震災からの復旧を図る際に、震災前に課題となっていた過密な養殖による牡蠣成長の鈍さを解消するべく、養殖棚を震災前の3分の1に減らす決断をした。これによって出荷まで2〜3年かかっていた生育が1年で出荷できるようになったとともに、そのことによって海洋環境への負荷も軽減もされてASC取得基準をクリアできる状況に至ったのだ。
環境の話だけではない。復旧にあたって戸倉かき生産部会として養殖への取り組み方をさまざまに見直してきた。仕事のために使用した船の燃料の使用記録をさかのぼって確認したり、プランクトンや海底環境のモニタリングをおこなったり、牡蠣剥きの後にでる牡蠣殻の廃棄処理にも目を配ったり、安全基準を作業場に貼り出したりなどなど、さまざまな面で持続可能な活動となるような改善がおこなわれてきた。こういったプロセスがあってのASC国際認証取得であることを知っておくべきだろう。
しかし、認証は取って終わりではなく持続させることが最も重要であり、こういった取り組みが日々継続・改良されていることが求められる。日々の仕事に組み込まれて、粛々と進められていることにも意識を向けたい。
漁師の努力で取り組みは継続
ASC認証は環境保障であって品質保証ではない。値段の大幅アップもなかなか難しいようだ。漁師さんたちへの直接的な利が目に見えにくく、ともすると認証の価値を見失ってしまいそうになる。
しかし養殖生産の持続性、改善による労働の持続性などなど、間接的な利は確かにある。この価値を強く認識していきたいものである。
海研一は、こういう取り組みをしている漁師さんたちをすごいと思うのだ。そういった汗粒の結晶としてプリプリの牡蠣が生産されている、そんな志津川湾をすごいと思うのだ。どうだろう。