「熱狂の火種はどこにある?」 南三陸の魅力向上に向けてセミナー開催

2193

平成29年度には、商店街の本設オープンなどから過去最高となる観光入り込み数を記録した南三陸町。より一層お客様に愛され、持続可能なまちづくりを行なっていくために「滞在型魅力向上セミナー」が開催され、各事業者がファンづくりのポイントなどを学びました。

観光入り込み数は過去最高も、宿泊客は右肩下がり

三陸自動車道が南三陸町まで延伸し、さんさん商店街が本設でオープン。さらにはサンオーレそではま海水浴場の再開など、ポジティブなニュースが多かった平成29年度は、年間の観光客入り込み数が140万人を突破した南三陸町。震災前も含め過去最高の入り込み数となりました。
しかし、アクセスが向上したことで逆に宿泊数は右肩下がりとなっています。いかに地域の魅力を再度掘り起こし、滞在時間を伸ばすことができるかが大きな課題となっています。
南三陸の観光のシンボル「さんさん商店街」

町では、こうした課題を解決すべく今年度、「滞在型魅力向上ワークショップ」を立ち上げ、宿泊施設や観光施設等を運営する民間事業者と協議を重ねてきました。11月6日(火)には、観光協会宿泊部会と合同企画として株式会社エーゼロ取締役の但馬武(たじまたけし)さんを招いて「南三陸滞在型魅力向上セミナー」と題した講演会を実施しました。

ファンを獲得するためには「最愛戦略」

「最高品質もしくは、最低価格での勝負となってしまうと資本力があって技術力があるところが勝ってしまう傾向にある。そうではない企業が、持続可能な産業としていくためには、いかにお客様に愛されるような商品やサービスを生み出すことができるかという価値判断による”最愛戦略”こそが大切になってくる」と話す但馬さん。

株式会社エーゼロ取締役の但馬武さん

「人は物語がとても好き。物語に巻き込まれて、熱狂していく。そのストーリーをどのターゲットにどのように伝えていくか、が大切になってくる。南三陸には人を魅了できるストーリーがたくさんあるはず」と訴えます。

顧客を虜にして、熱いファンを生み出す、最愛戦略の柱は「共感」「愛着」「信頼」の3つあると話します。

「共感がファンの熱狂を生み、愛着から関係性が深まっていくことによって唯一無二の存在となり、信頼が応援へと変化していく。それこそが、地域が目指すべき方向性ではないか」

熱狂の火種を見つけキャンプファイヤーへ

「南三陸の”強み”、”弱み”はなんでしょうか?」とこの日イベントに集まっていた約50名の町民に但馬さんは問いかけます。

「この場所にしかないニッチなコンテンツがある」「移住者などよそ者に対して寛容」などの強みがあがったものの、「地域のブランドとして統一感をもって発信できていない」「アクセスが悪い」「冬のコンテンツが弱い」などの弱みが会場からはあがってきました。

弱みのほうが多くでてくる傾向にあるというこの問い。

しかし但馬さんは、ある視点からは弱みであることも、角度を変えて見たり、違う枠組みにはめてみると強みに変わることもあると話します。「愛される地域となるためには、熱狂の火種を見つけることが必要。さまざまな角度から物事を捉える必要がある」と説きます。

「熱狂となる可能性のある火種を見つけて、その火種が好きそうなファンを見つけ、集め、大きな火としていく。そのストーリーを顧客に伝え、顧客も巻き込んでいく。一つの大きなキャンプファイヤーではなく、地域のなかにいくつもキャンプファイヤーができるようなイメージが理想ではないか。この流れそれこそが愛される地域・ブランドづくりに必要なプロセス」と話します。

原点に立ち返り、魅力を見直す機会に

東日本大震災から7年半。震災後、南三陸町が観光交流事業に着手できたのは、震災前から行われていた観光のまちづくりによるものが非常に大きな要因となっています。復興支援や復興応援での誘客に陰りがみえる今、改めて「この町の魅力はなにか」「なにを発信していくべきか」を、事業者それぞれの立場で原点に立ち返り、考え直す機会になったのではないでしょうか。

南三陸町長も「この町の最大の資源は“人”」と話しているように、ストーリーに富んだ人が多くいます。愛される地域となっていくには、人の存在は欠かすことはできない要素となるでしょう。一過性の観光ではなく、持続可能な交流を育み、南三陸町を発展させていくために。地域をあげて、熱狂を生む火種探しは続いていきます。

いいね!して
南三陸を応援

フォローする