志津川の新名物へ!知る人ぞ知る”ヴァージンオイスター”「あまころ牡蠣」

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写真提供:宮城県

まさに今、旬を迎えている牡蠣があります。「牡蠣といえば、冬の味覚の代名詞」と思っている方も多いかもしれないが、ここ南三陸町志津川から、新たな名物が生まれようとしています。その名も「あまころ牡蠣」。小さく、ぷくっと膨らんだ身がかわいらしい牡蠣です。

産卵をする前に収穫したからこそのおいしさ

東日本大震災による大津波によって壊滅的な被害を受けた牡蠣養殖業。震災前も、そして復旧した震災後も宮城県では、海中で2年以上育てて、大きくなった牡蠣を出荷しています。しかし、この新名物「あまころ牡蠣」は、同じ真牡蠣であっても「未産卵」で「一粒牡蠣」であることが、ほかの牡蠣とは一線を画しているのです。真牡蠣は夏場に産卵するので、通常の牡蠣はもちろん産卵を経験した牡蠣。しかし、あまころ牡蠣は産卵をする前に収穫して出荷してしまうという大きな違いがあるという。

現在11人いる生産者の代表を務める佐々木昇記さんは、「産卵をしていない分、えぐみが少なくて、甘みが強い。牡蠣が苦手という人でも、食べやすい牡蠣に仕上がっている」と自信をもって話します。

写真提供:宮城県

震災後に確立された養殖方法

養殖期間は約10ヶ月ほど。出荷まで2年かかる通常の牡蠣に比べて、台風や低気圧などのリスクが少なく生産者の不安も和らぎますが、養殖期間が短ければ短いだけの苦労も多いという。

「8月の半ばに海中で牡蠣種をとる採苗器を投入します。1ヶ月くらいすると、付着した牡蠣は親指大の大きさに成長しています。その牡蠣を剥がして、ネットに移し替えて、海に再び戻します。ホタテなどに種牡蠣を付着させて、ロープにつるして成長させるのが通常の牡蠣の養殖方法だが、ネットで一粒ずつバラバラにして養殖するのがこの『あまころ牡蠣』の特徴。そして、11月末頃と3月上旬に選別作業をして5~7月に出荷を迎えます」。1年に満たない養殖期間では、悪天候などのたった一つの作業の遅れが牡蠣の成長にダイレクトに影響を及ぼしてしまうと話します。

ネットの中でコロコロと転がって、身入りも形もよくなるというシングルシード方式という養殖方法 写真提供:宮城県

「震災後の平成25年に初めて試験的に養殖に挑戦。1年目はまったくできなかったんです。2年目で少しモノになってきて、3年目でようやくサイズも安定。養殖方法も確立してきたんです。生産が安定してきたことで、自分一人から始まった養殖も生産者が徐々に増え11人で養殖を行っています。昨年は約10万枚を採ることができました」

「あまころ牡蠣」の生産者のみなさん 写真提供:宮城県

東京のオイスターバーで大ヒット

そうして生まれた牡蠣は、東京のオイスターバーで人気を博しているとのことです。

「正直、牡蠣は大きいのがよいと思っていたから、一年ものの小さな牡蠣が売り物になるということも最初は驚きだった」と佐々木さんは振り返ります。

「産卵を経験していない牡蠣だからこその甘み。えぐみや雑味が少なく、初めての産卵に向けて栄養を蓄えた牡蠣のおいしさを存分に楽しめます」。小さな身に、ギュッと詰まったうまみと甘み。ワインを片手に、ちゅるっと殻ごと楽しむオイスターバーにぴったりの牡蠣が誕生。「ヴァージンオイスター」として、知る人ぞ知る、食通をうならせる新名物が、ここ南三陸町志津川から誕生しました。

「今年も順調に生長しました!旬の味を楽しんでください」と佐々木さんも目を細めます。南三陸町内で食べられるのは、さんさん商店街内の「ロイヤルフィッシュ」と、「弁慶鮨」のみ。「知る人ぞ知る」南三陸の新名物。志津川の牡蠣養殖の「復興のシンボル」とも呼べるような逸品をぜひお楽しみください。

写真提供:宮城県

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