ともに家づくりを! 南三陸町の移住・定住促進が本格化 / 官民連携推進室 阿部大輔さんインタビュー

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2016年1月に策定された「南三陸町総合戦略」で、移住・定住の促進を打ち出した南三陸町。実際の取り組みや今後の展開について、南三陸町 企画課 地方創生・官民連携推進室の阿部大輔さんに話を伺いました。

移住・定住促進を掲げた「南三陸町総合戦略」とは?

―まず、「南三陸町総合戦略」について簡単にご説明いただけますか?

少子高齢化・人口減少が進むなか、各自治体は対策を余儀なくされています。南三陸町は、東日本大震災で甚大な影響を受けたこともあり、人口減少は特に深刻な問題となっています。

そこで、少子高齢化・人口減少への対応と活力ある持続可能な地域の実現を目的に、2016年1月に「南三陸町総合戦略」を策定しました(同年12月に一部改訂)。その中の基本目標のひとつとして、町として初めて、移住・定住促進への取り組みを打ち出したのです。

―それまでは移住・定住促進には町として力を入れていなかったのでしょうか。

震災前は、人口流出をいかに防ぐかということに重点を置いていました。しかし震災後は、ボランティアの方々を含めて交流人口が増えたこともあり、外から人を呼び込もうという発想に切り替わったのです。国が掲げている地方創生の影響もあり、移住・定住促進を事業としてしっかり進めていこうということになりました。

―「南三陸町総合戦略」の基本目標2「私たちはともに未来を拓く人々が集う家(まち)をつくります」ですね。「まち」を「家」で表しているのは……?

これは、現在住んでいる人も、帰ってくる人も、これから入ってくる人も、一緒に未来を創っていく場所・集える場所(=まち)を、家族が集う家のような存在としたいという思いを表現したものです。

情報発信や住宅の確保など、さまざまな取り組みを実施

―移住・定住促進のため、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょか。

ひとつの柱は移住総合窓口の開設です。2016年8月に「移住支援センター」をオープンし、移住相談を受けたり、首都圏で開催される移住セミナーに出展したりしています。また、移住・定住を促進する上で欠かせないのが、住宅の確保です。南三陸町では、町内の住宅環境の整備に時間がかかるという事情がありますので、まずは家賃補助や仮設住宅の一時利用などを進めています。

―移住・定住には、まず住む家が必要ですもんね……。

そこが私どもとしても心苦しいところでして……。空き家バンク制度の構築も進めていますが、まだ制度設計段階です。今年いっぱいで住宅環境が整ってくると思いますので、そのときに向けて、今は情報発信を含めた地道な種まきをしておこうかと。

―情報発信ではどのような点に力を入れていますか?

ホームページや移住セミナーなどで、地域の魅力を発信しています。特に、国際森林認証「FSC」や養殖水産物に対するエコラベル「ASC」認証の取得など、南三陸ならではの地域資源をアピールするようにしています。また、南三陸の魅力はなんといっても「人」なので、移住セミナーや移住ツアーなどで実際に交流することを大切にしています。

南三陸町の移住・定住促進の取り組みについて話をする企画課の阿部大輔さん

南三陸町が目指す移住・定住のカタチとは?

―町としては、どのような人に移住・定住してもらいたいと考えているのでしょうか。

移住・定住促進といっても、ただ頭数を増やせばいいと考えているわけではありません。地域がうまく回っていくことが重要なので、町民と協力して「家(まち)」をつくっていってくださる方に来てもらいたいですね。また、町の活性化、持続可能な地域づくりという観点からは、起業家精神を持った方も必要としています。結果的に地域の魅力アップにつながれば、必ずしも移住・定住にこだわらなくてもいいと思っています。幅広く多様な人材を受け入れていきたいですね。

―今後の展開や、力を入れていく点について教えてください。

お試し移住(ショートステイ)の実施や、空き家バンク制度の構築にも、順次着手していきます。空き家バンク制度については、制度だけつくっておしまい、ではないと思っています。顔が見える仲介をするなど、受け入れ地域の人々にも安心感を与えられるようなサポートが必要だろうと……。移住・定住する側にとっても、何かあったときに頼ったり相談したりできる先があるかどうかがカギになります。双方の安心感のためには、地域ぐるみで取り組む必要性があると思っています。

南三陸町にはいいもの・いいところはたくさんありますが、そのどれかひとつを打ち出したからといって、簡単に人を呼び込めるわけではありません。移住・定住促進だけでなく、総合戦略のほかの取り組みもあわせて進めてこそ、地域の活性化につながります。そんなふうにして、一緒に「家(まち)」を作っていける人に、ぜひ来てもらいたいですね。

―ありがとうございました。

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