エネルギーを自給して災害に強いまちに!南三陸町の描く未来とは?

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2016年7月15日/定点観測

以前この記事でお伝えした南三陸町のバイオマス産業都市構想。今回は、南三陸町企画課・課長補佐の千葉啓さんにこのバイオマス産業都市構想の背景や、目指すべき方向性について伺いました。

バイオマスで災害に強いまちづくり

「まずこの都市構想で目指しているのが”人と環境にやさしく、災害に強いまちをつくっていく”ということです」

先の東日本大震災による津波によって、電気・ガス、上下水道などのライフラインはほとんど寸断されてしまった南三陸町。そのことによって厳しい寒さにさらされ、暖をとることも困難となり、生命活動に大きな影響を及ぼしたことは言うまでもありません。

「森里海と資源に囲まれているこの町では、本来、食料も水もエネルギーも豊富にあるはずでした。しかし、有事の際にそれらは非常に手に入りにくく、とくに外部に依存していた電気やガスの入手は困難なものとなってしまいました」

その反省もふまえ、当時町が策定した震災復興計画で第一の柱として掲げている「安心して暮らし続けられるまちづくり」を具現化するために、公共施設などへの太陽光発電パネルの設置と併せ、バイオガスや木質ペレットなどバイオマスエネルギーによる自立分散型のエネルギー源を確保していくことを目標としました。

「災害発生時には、貯蔵していたバイオガスを使い、数日間は発電をすることが可能になります。バイオガス施設を避難先とすることで、避難時の照明や暖房、通信機器の充電などに充てることができるようになります」

さらに、バイオガスだけでなく木質ペレットを備蓄・活用をすすめることも災害への対策になっているという。「避難拠点施設に木質ペレットボイラーを設置していくことで、暖房や給湯などを賄うことができるようになります。ペレットは煮炊きの燃料としても使用可能なため災害対策に有効」と話します。

そして、今年度から施行された町の第2次総合計画では、災害に強いだけでなく、より持続可能な社会づくりを目標と定めました。

「南三陸町の豊かな自然環境を生かし、資源循環型社会の形成を目的とした『森 里 海 ひと いのちめぐるまち 南三陸』を将来像とした、創造的復興及び持続可能な地域社会の実現を目指していきます」

世界が認めた南三陸の自然環境

「南三陸町はFSC認証とASC認証、2つの認証を通して国際的に評価を受けています。さらに、現在はラムサール条約登録に向けての動きを見せるなど、バイオマス産業都市への動きのなかで、町の一次産品がより一層ブランド化されていくことが期待されます」

志津川地区のグランドデザインを担った隈研吾氏は、新国立競技場を設計することになりました。「木材を活かしたデザインが特徴の新国立競技場において、当町のFSC認証の木材を使っていただける可能性は多いにあります。そのようなことを通じて南三陸を全国に発信していければと思っています」

廃棄物の処理に課題も

一方、今後に向けて課題も残っています。それは廃棄物処理を町外に依存していることです。

「現在町内には、ごみ焼却施設がなく、焼却は隣接する気仙沼市に焼却を依存している状況です。さらに、焼却灰は町内の仮置き場で一時保管している状態が続いており、対策が必要になってきます。また、し尿・合併浄化槽汚泥を処理する衛生センターは老朽化が進んでおり、復興の過程において、ごみの原料やリサイクルの促進などを、町内施設でやりくりできるようにしなければなりません。町の課題として向き合っていきたいです」と話します。

雇用創出などの地域への波及効果

こうした課題を抱えながらも、バイオマス産業都市構想は大きな可能性をもっています。

「これを実現していくうえで目指しているのは、”誇りをもって働き、笑顔で住み続けられるまちづくり”ということです。そのために、”災害に強い町”であり、”一次産品のブランディング”といったことがあるのです」

今後10年間、関連事業で40〜50人ほどの雇用創出を見込んでいるといいます。さらに、こうした循環型の町に魅了された移住者の獲得などの可能性も高まります。

「生ごみの分別回収を開始してから1年が経ちました。多くの町民のみなさんのご協力には感謝しかありません。しかし生ごみの回収率は、水産加工業などの産業での収集が本格的にできていないなど当初の計画ほどよくありません。副産物の液肥の利用も100%とまではいかないのが現状です。まだまだこのバイオマス産業都市構想は始まったばかり。官民連携して、この取り組みを続けていきたいと思います」

豊富な資源を活かしたバイオマスエネルギーでの自給、そして町の中核を担う一次産業のブランド化。それを実現していくことで、雇用が生まれ、誇りが芽生えます。それは東日本大震災からの教訓をしっかりと活かし、未来の世代の”安心“へとつながることでもあるのです。

 

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