「南三陸キラキラ丼」にかけた復興への希望 / 飲食店組合長インタビュー

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今や、南三陸町の顔にもなっている「南三陸キラキラ丼」。そのキラキラ丼に託す想いを、南三陸町飲食店組合組合長であり、季節料理 志のやの大将である高橋修さんにお話を伺いました。

「キラキラ丼」ってどんなもの?

キラキラ丼は三陸の新鮮な海鮮をふんだんに使ったぜいたくな丼だ。四季折々、旬の特産物を扱う。春は旬の魚貝に加え、厳しい寒さを越えて芽吹いた地元の若い若菜を彩りに添えた「春つげ丼」。夏はプリプリに肥えたうにで黄金色におおわれる「うに丼」。秋には、旬の鮭とイクラを使った「秋旨丼」。冬はオレンジ色に輝く宝石を敷き詰めたような「イクラ丼」。

丼のなかみや飾りつけのこまかい規定はないが、新鮮な魚をつかわなければ、「キラキラ丼」とは言えない。獲れたての魚をどう扱うか、店主の腕のみせどころとなっている。

四季で変わるキラキラ丼 引用:南三陸さんさん商店街ウェブサイト

2008年のディスティネーションキャンペーンから

きっかけになったのは、2008年の仙台・みやぎディスティネーションキャンペーンだった。旅行情報誌「じゃらん」から若者向けの1000円のウニ丼をつくってほしいという企画がもちあがり、6,7月で3500人~4000人の集客があったという。

そこで実際にお客様が選んだのは、1000円のうに丼よりも、うにがたっぷり入った2000円のうに丼だった。次に開催したタコ料理30種類を揃えたビュッフェスタイルの食事会でも大成功を収め、その時のJR関係者の声かけで、「タコDC号」と名付けられたお座敷列車が仙台から南三陸町まで走ることにもなった。

その後、企画したミニ丼の食べ比べも成功し、「キラキラ丼」誕生への勢いが高まって来た。そして、2009年12 月キラキラ丼がはじまり、1年と4ヶ月で約48,000食を売り上げた。それまで一日の売り上げが数千円だったという店に、何万という売り上げをもたらすこともあり、町にも活気を呼ぶことにつながった。

「キラキラ丼」にかけた復興への希望

「小さな個人の店が、大きくチェーン展開する店に負けない魅力はなんだかわかりますか?」南三陸町飲食店組合組合長であり、季節料理 志のやの大将である高橋修さんは骨太の顔を緩ませて身を乗り出した。

キラキラ丼を提供するルールとして決まっているのは、新鮮なものを使うということと値段を1500円以上に設定する、ということだ。一般の昼食と比べれば、少し割高感はあるが、食材はいいものを使っているので、キラキラ丼の原価率は40〜45%と、店にとっては大きい儲けにはならない。

では、なぜそこまでして「キラキラ丼」を売り出すのか?そこに最初の問いの答えがあった。

鮮魚は安定供給を求めるのが難しく、値段の変動も激しい。冷凍のものを使った方が問題は少ない。しかし、小さい店ではその日に入った活きのいい鮮魚で店主の趣をこらした料理を出すことができるのだ。訪問する人が、「南三陸町に来れば、まちがいなく旨いものが食べられる」という確信を持てる場にすることが、結果的にはみんなを潤すことになるという。値段を下げれば、一時的には人も増えるだろう。しかし、価格競争をしてしまえば、質を落としたもの、安価ものも使わざるを得ないことになる。

「仮設店舗はいつか出なければいけません。本設に向けて資金をつくらなければいけない。価格競争になってしまうと、結果的に自分の首をしめることになります。さんさん商店街で食事をすれば、その後、いろいろな店を見る楽しみにもつながる」と高橋氏。高橋氏が見ているものは、個人店の利益だけではない。「二次産業だけではダメ。農業や漁業、町の一次産業がうまくいかなければ、町の活性化にはなりません。『キラキラ丼』は、町の産業振興課、観光協会、商工会、三位一体となって事業をすすめています」。

南三陸さんさん商店街フードコート 引用:南三陸さんさん商店街ウェブサイト
南三陸さんさん商店街フードコート 引用:南三陸さんさん商店街ウェブサイト

「キラキラ丼」がつなぐもの

外からみると、飲食店が仲がいいのに驚かれることもあるが、「今は、一丸となって町を再興させなければいけない時です」と高橋氏。さんさん商店街の飲食店はフードコートと呼ばれる大きなテントを取り囲むように立地しており、そこで各店舗特製の「キラキラ丼」を持ち寄って食べることもできる。個々の個性を光らせるための協力体制をつくっていくというのが南三陸町での手法だ。

現地に来ないと食べられない「キラキラ丼」にはいろんな楽しみ方がある。中には、遠くから旅行で来て、「3年かかってキラキラ丼を制覇した」という人もいれば、和歌山から日帰りでキラキラ丼を食べに来る人もいるそうだ。

「店主には、『自分の店のファンをつくれ。いつか自分に帰って来る』『お客様に顔を見せろ。次の来客につながる』と言っています」と高橋氏。もうかることだけにこだわると、個人の力が低下すると考える。そして、ていねいなものづくりや人との接し方を、20代、30代の若者にも伝えていきたいという。

「キラキラ丼」には、飲食店と飲食店、飲食店と他業種、地域と訪問者、世代の違いをつなぐ想いが巡っていた。

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