南三陸町にファンクラブが!? / 南三陸応縁団インタビュー

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2015年4月、震災で生まれたご縁をつなぐ交流プログラムが誕生しました。その名も「南三陸応縁団」。どのようなものなのか、産業振興課観光振興係の宮川舞さん、南三陸町観光協会の宮本隆之さんに話を聞きました。

“支援”から“協働”へシフトする中で生まれた交流プログラム

「南三陸応縁団」は、南三陸町に関わる人々と町民を結ぶ交流プログラムです。団員登録は無料。団員になると、団員向けの交流イベントや限定ツアーなどに参加することができます。また、交流イベントを含め、全国各地で開催される物産展などに「おでって」(お手伝い)として関わることも可能。さらに南三陸町では、農作業や水産加工など、通年および季節に応じてさまざまな「おでって」も募集しています。これらの情報は南三陸応縁団のウェブサイトに掲載。サイトでは南三陸町の最新情報も随時発信されています。

南三陸応縁団ウェブサイト
南三陸応縁団ウェブサイト

南三陸応縁団が生まれたきっかけは何だったのでしょうか。震災後、復興支援のボランティアで多くの人が南三陸町にやって来ましたが、時間の経過とともにボランティアの数は減少。2015年3月には南三陸町社会協議福祉会が運営する災害ボランティアセンターが縮小されました。しかし、何度も南三陸を訪れるリピーターも多数。そのような人たちとのご縁をつないでいくにはどうしたらよいか…。「福祉」「支援」から「交流」「協働」へのシフトを模索する中で生まれたのが「南三陸応縁団」です。絆が育まれる持続可能な交流を目指す、南三陸町の新たなチャレンジでした。

南三陸応縁団バッチ 引用:南三陸応縁団ウェブサイト
南三陸応縁団バッチ 引用:南三陸応縁団ウェブサイト

全国各地で「おでって」が大活躍!

2016年9月末現在の応縁団員数は約2180人。応縁団の誕生以来、ゆるやかに参加者が増えているそうです。「交流会に参加した人がお友だちを誘ってくれるというように、人のつながりで応縁団に入ってくれる人が多いですね。また、交流会などを通して団員同士の横のつながりも生まれていて、うれしく思っています」と、産業振興課観光振興係の宮川舞さんは話します。

南三陸応縁団の立ち上げに関わった産業振興課観光振興係の宮川舞さん
南三陸応縁団の立ち上げに関わった産業振興課観光振興係の宮川舞さん

全国各地で開催されるイベントでの「おでって」も好評です。「8月5日に兵庫県明石市で行われた『たこリンピック』には、4名が駆けつけてくれました。みなさん、『南三陸町にはなかなか行けないけれど、自分の地域で催しをやってくれて、おでってとして参加できるのがうれしい』とおっしゃってくださって」と宮川さん。おでってのポイントは、町民と一緒になって、南三陸町の地域振興・産業振興につながる活動に関われること。おでっての受け入れ先も増えてきており、おでってと組み合わせた独自のツアーも行われています。

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たくさんのおでってが参加したたこリンピックの様子

応縁団員ならディープな南三陸に触れられる!

南三陸でのおでってのマッチングを行うのは、南三陸町観光協会の宮本隆之さん。南三陸応縁団の事務局を務めています。「おでってさんはほぼ毎日いらっしゃいますね。やはり週末が多いのですが。事前に登録していただいた上で、朝に登録受付を行い、受け入れ先との最終的なマッチングを行います」。

宮本さんはウェブサイトでの情報発信も担当。おでってのレポートや復興に関するニュースをアップしています。「町からの情報や観光協会の情報とは差別化を図って、よりコアでディープな南三陸情報を発信するように心がけています。記事はログインしないと最後まで読めないので、団員登録しているメリットや特別感をいかに打ち出せるかがポイント。読者がどんな情報に興味があるのかを探りながら、試行錯誤中です」と宮本さんは話します。

仙台市出身で、震災後に南三陸に移住した宮本さん
仙台市出身で、震災後に南三陸に移住した宮本さん

交流イベントの企画では、開催場所によってテーマを変えるそうです。「南三陸の食は外せませんけどね(笑)」と宮本さん。「去年は“恩返し”や“おもてなし”の気持ちで交流イベントを行っていましたが、今年はよりターゲットを絞っていきたいと考えています。たとえば移住希望者向けや、企業のCSR担当者向けなど。通常の観光では味わえない交流が南三陸応縁団の魅力。応縁団に入ると色々な情報が得られることをアピールしていきたいですし、さらには、情報を受け取るだけでなく実際に南三陸に来てもらいたい。そのためにも、足を運びたくなるような新しいイベントを仕掛けていきます」と意気込みを語ります。

応縁団が持続可能なご縁・つながりを生むきっかけに

南三陸応縁団の展望、今後目指すところを、宮川さんに伺いました。「多くのボランティアの方が来てくださった町だからこそ、この応縁団のしくみを作ることができました。ただ、この形がベストかどうか、今はわかりません。いわばこれは感謝を表す公益事業なんです。目指すのは、この応援団というしくみから、町民と町外の人が直接つながる自律的な交流やネットワークが生まれていくこと。そこが私たちのチャレンジです」。

「震災から5年以上が経ち、風化が進む中、ここが正念場。震災で生まれたご縁がこの先もずっと続くよう、町民が力を合わせてがんばっています。南三陸への関わり方として応縁団というしくみがあることを、ぜひ多くの方々に知ってもらいたいですね」と宮川さんは締めくくりました。

観光とはまた違った、より深い交流・つながりができる南三陸応縁団。あなたも入団してみませんか?

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ライター、編集者/通訳案内士。ひと・まち・食・旅をテーマにした取材・執筆および書籍編集を行う。東日本大震災をきっかけに東北沿岸部を訪れるようになり、なかでも南三陸町に魅了され、つながりを深めている。ソーシャル&エコ・マガジン『ソトコト』で東北の“いま”を発信する連載記事「ソトボラ新聞」を執筆中。通訳案内士として、訪日外国人に南三陸の魅力を伝えるツアーづくりが目標。