かつて小学校だった廃校が、グリーンツーリズム体験のできる<校舎の宿>として生まれ変わった「さんさん館」。ところで、南三陸でよく聞く“さんさん”ってなに・・・?
入谷の“まち”場
まずはこちらの写真をご覧ください。
南三陸町入谷地区の「中の町」という場所にある五叉路。その名の通り、ここが(おそらく)私の住む入谷地区で最も“まち”の部分、つまり中心地です。
ちなみに近くには、オクトパスくんでお馴染み「YES工房」や、便利な商店「稲香園」をはじめ、小学校・保育所・神社・宿泊施設・農協などなど、主要施設が集まっています。
お察しのとおり本当に何もない田舎ですが、今は桜がキレイに咲いていますし、夏には青々とした稲が、秋の打囃子祭りの頃には黄金色の田んぼが、冬には一面の雪原がと、季節を問わず美しい里の風景を楽しめる、日本人にはなつかしい素敵な里だと思います。
ひときわオシャレな看板が
そんな入谷の五叉路に、ひときわオシャレな看板が出現しました。風景をそこなわない落ち着いた白を基調に、木製の案内板がかっこいいです。
指し示す先は・・・、左が「牛」と「稲」、正面は「八幡神社」。たしかにこの辺りの要所を押さえています。そして右に指し示すのが「グリーンツーリズム体験<校舎の宿>さんさん館」。
というわけで、案内に従い右に曲がり約2.5km、さんさん館を訪ねました。
グリーンツーリズム 校舎の宿さんさん館
さんさん館は、旧「林際小学校」の廃校を利用した宿泊施設で、平成12年に整備されました。農林水産省の補助を受け「地域農産物等活用型総合交流促進施設」として整備され、地域で生産される恵まれた農産物の食事や、農業体験や林業体験などのグリーンツーリズムを提供しています。
外観から内部まで未だ学校の様相を残しており、机が教室の机だったり、部屋番号が「6年2組」のようにクラス名だったりと、なつかしい雰囲気を味わえることで人気を博しています。
施設の前を流れる川では、イワナやヤマメ・アユなどの魚や、かわいいカモの親子、さらにはホタルの光も楽しめます。
新名物に!「菊イモかりんとう」
さんさん館を中心に、地域の方々が最近開発されたのがこちらの「菊イモかりんとう」。道端でよく黄色い花を見かける菊イモ。その健康効果に注目し、栽培して商品化へと至ったのだそうです。
ほんのり甘いプレーン味とちょっぴりスパイシーなカレー味の2種類で、各350円。お子さんのおやつにもお父さんのおすばで(おつまみ)にもピッタリ。さんさん館事務所のみでの限定販売です。宿泊される際には、ぜひご賞味ください。
“さんさん”ってなんだ・・・?
ところで、「さんさん館」「さんさん商店街」と、何かと“さんさん”付いている南三陸町。“さんさん”っていいったいどういう意味なんでしょうか・・・?
さんさん館を運営される阿部あい子さんに尋ねてみたところ、指し示されたのは、さんさん館の玄関に掲げられる林際小学校の校歌。何度もこの宿を訪れていましたが、よくよく読んだのは初めて。何ともこの地域をよくあらわしている素晴らしい歌詞です。ちょっと感涙。
この歌詞の中に“さんさん”の由来があるとのこと・・・?
校歌の冒頭には「惣内童子神行のけだかき峰にいだかれて」とあります。これが表すのは、さんさん館や入谷の里を抱くようにそびえ立つ3つの山、「惣内山(そうないさん)」「童子山(どうじさん)」「神行堂山(しんぎょうどうざん)」のこと。
なるほど、「3つの山」で「さんさん」と。林際小学校卒業生からの公募により選ばれたそうです。
ちなみにさんさん商店街の由来は「サンサンと輝く太陽のように、笑顔とパワーに満ちた南サン(三)陸の商店街にしたい」という思いから。さんさん館の方が歴史は古いですがパクリというわけではなく、商店街組合にさんさん館の理事が参加していることも関係しているのでは・・・?とのこと。
こちらの写真は、さんさん館の前から見た惣内山の稜線です。標高は379.5m。
“さんさん”に会いに来て!
校歌の歌詞や施設の名前にも使われているほど、地元の人々から愛されるこの3つの山。入谷地区ならどこにいても、たいていは3つの山のどれかが見えるでしょう。
それぞれの山が地域の文化や歴史上も大きな意味を持っています。たとえば童子山、かつては産金の地として地域の経済を支えた山、神行堂山は現在も「巨石」などが見られるとおり信仰の対象として、惣内山は「ソーナイ」という名がアイヌ語に由来するとも言われているなどなど。
詳しいエピソードは、ぜひ入谷やさんさん館に訪れ実際に山々を眺めながら、地元の方々に尋ねてみてください。“宮城の遠野”とも称されるほど民話が広く伝わる入谷地区、地域の方々みんながストーリーテラーです。