「演劇」がつくる「ごきげん空間」。町の民話を基にした創作劇で公演

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都内の劇団員などを中心に結成される演劇団体「ごきげん一家」。7月12日(金)には志津川東復興住宅第2集会所にて、13日(土)は南三陸町生涯学習センターで、町に伝わる民話をアレンジした演劇を上演予定です。活動開始から1年余り、本人たちの予想を超えるほどに広がる「ごきげんの輪」について、くまちえりこさん、浅川芳恵さん、目谷哲朗さんの3人に話を伺いました。

「演劇で復興支援を!」と劇団員に呼びかけ結成

「観る人も演じる人もごきげんに」をモットーに結成された演劇集団「ごきげん一家」。

団体発足は、代表の子安麻希さんが2017年に南三陸町内で実施された演劇のボランティア公演に参加したことがきっかけでした。施設や道路などの復旧復興がすすむ中で、心の復興やコミュニティの構築といったソフト面がこれからの課題であることに直面。娯楽施設がなく、文化的な体験も難しいといった状況を垣間見て、「団体を立ち上げ、南三陸町民に演劇を見てもらうような機会を作りたい」と演劇仲間に呼びかけ、メンバーを集いました。

「8年前、公演を控える芝居の台本を読んでいるときに、大きな揺れが襲ってきた」と話す、くまちえりこさん。「『芝居で一流になりたい!』と上京してから、劇場に来たお客さんの心に響き、生きる活力が生まれるような演技を目指して、これまで芝居を続けてきました。ただ、『演劇を丸々届ける』というこのお話しを聞いたとき、それ自体が人のためであって、今まで『演劇を手段に人の役に立ちたい』と思っていた私にとって、こういう方法もあるのか、と新鮮な驚きでした」と振り返ります。

震災直後、福島にボランティアに行ったこともあるという目谷さんは、「南三陸は特別縁のある場所ではなかったが、人を笑顔にしたい!という想いで演劇をやっていたので、お誘いいただいたので乗っかったというのが正直なところ」と話します。

「自分たちでゼロから企画して作れるということにワクワクしていた」と話すのは浅川芳恵さん。公演前にボランティア作業で南三陸を訪れ、そこで活動を共にした南三陸町の方の震災から今までの話などを聞いて、人々の力強さに驚いたといいます。「私にとっては最初の南三陸公演は“恩返し”の気持ちが強かった」と振り返ります。

写真左から、くまちえりこさん、浅川芳恵さん、大森丈広さん(YES工房)、目谷哲朗さん(写真提供:ごきげん一家)

「南三陸」を中心に広がる縁

2018年1月の団体設立から、3月末にはメンバーが確定。8月の南三陸公演に先だって、5月~7月にかけて、東京で南三陸の民話をもとにした投げ銭公演を実施。5月からは月に一度、荒川区のマルシェに出店し、町の特産品を販売するなど、南三陸町や団体のPRを行ってきました。

都電荒川線「荒川遊園地前」からすぐ近くて開催される「荒川遊園地通りマルシェ」にて毎月南三陸の特産品を販売している(写真提供:ごきげん一家)

そして迎えたメインイベントとなる南三陸公演。震災直後から南三陸町へのボランティアバスを企画していた「一般社団法人ボランティア東北ファミリア」が運行するバスで南三陸へと向かい、震災遺構の見学ののち、公演を行いました。

2018年8月南三陸町平成の森アリーナにて開催された第1回南三陸公演終了後の集合写真(写真提供:ごきげん一家)

南三陸公演のあとも、同じように都内で南三陸を応援する企業や大学生との出会いがあり、活動の輪は徐々に拡大。大学生の主催する南三陸イベントでは、お寺の本堂で演劇を披露したり、3月には復興応援演劇イベントを主催するなど多様な活動を行ってきました。

「復興支援で演劇をやりましょう!ということで始まった団体ですが、実際に活動してみると“南三陸”というキーワードで、まったく想像もしていなかったほどに、世界がどんどん広がっていくんです。『演劇を手段で何か…』という夢をこの活動を通じて、叶えさせてもらっていて、人生が何倍も充実しています」と目を細める浅川さん。

「劇場での公演は、公演後お客さんはパッと帰ってしまうことも多いですが、ごきげん一家の演劇では残ってお話しをしたり、にこやかになっていたり、その様子を見ながら、団体名のように“ごきげんな空間”が作れているんだなという手ごたえももっていました」とこれまでの演劇からの違いを感じていたと、くまちさんは話します。

お寺でのイベントに声をかけてくれた大学生が今では劇団メンバーになっている(写真提供:ごきげん一家)

子どもから大人まで楽しめる民話をアレンジ

新たなメンバーも加え、今年の公演に向けた準備が進んでいます。演劇の内容は「町民には親しみをもってもらい、町外の人には南三陸を知るひとつのきっかけになる」との想いから、昨年に引き続き、南三陸の民話を元にしたオリジナルの脚本を作成。

今年は、繁造というぼんやり者が主人公の「婚礼に行った繁造の話」という歌津の民話、南三陸町入谷桜沢地区にいた大食らいの宗吉が主人公の「風取らす」(ふうとらす)という民話をアレンジした2本の創作演劇を実施。現在、南三陸公演に向けた最終稽古に勤しんでいます。

稽古のようす(写真提供:ごきげん一家)
6/23(日)に実施された東京プレ公演のようす(写真提供:ごきげん一家)

昨年の経験を踏まえ、「より多くの地元の方々に演劇を楽しんでもらいたい!という気持ちが強くなりました。なじみのある地名などが登場する民話に親しみをもって聞いてもらえる方もいれば、子どもたちであれば地域に伝わる民話に触れる機会になれればと思っています」と3人は声をそろえます。

こうした思いから、今年の公演場所は、地域の方がより集まりやすい復興住宅の集会所と新しくできた生涯学習センターで公演を開催。「さらに、隣接した登米市や仙台からもお客さんを呼んでいて、南三陸のファンを増やすような場にもできれば」と意気込みます。公演終了後には交流会も実施。来場者と懇親を深めながら、「ごきげん空間」をつくっていきます。

観客も、演者も、地域も、ごきげんに

「初めて南三陸に訪れたときから、復興支援で来たはずなのに、温かく受け入れてもらい、逆に力をもらっていました。今も、南三陸の方々は『NO』と言わずに、とにかくまずは『YES』と答えてくれて、なにか相談すると、それができる道をいっしょに探してくれます。そうした姿勢にいつも教わってばかり」と話す浅川さん。

団体の結成から活動を進めるごとに、魅力にハマっていったという目谷さん。「劇場から出て演劇をやってみたい、という夢を持っていました。飲食店でやった投げ銭公演では、本当にお客さんと目と鼻の先の距離感で芝居をやることができたり、この団体の活動に個人の夢が重なってきている。ゆくゆくは南三陸で演劇のワークショップなども行いたい」と意気込みます。

飲食店で食事を取りながら演劇を楽しむことができるカジュアルなスタイルの演劇(写真提供:ごきげん一家)

「南三陸のため」に始まった小さな演劇の輪。演劇を通じ地域の人々の笑顔に出会った団員たち。そして、活動を続けていくうちに、演者自身の夢や目標も重なり合い、ボランティアや復興支援の演劇という枠を超え、役者としての成長や、新たな演劇のあり方の模索といったところまでつながっています。さらに、演劇文化に触れるだけではなく、民話の伝承として地域振興にも貢献。

観客はもちろん、演者も、地域も「ごきげん」になる、「三方よし」の演劇。

その「ごきげんの輪」はこれからも広がっていきます。

(写真提供:ごきげん一家)

インフォメーション

ごきげん一家 南三陸公演 飛びだす演劇!ごきげんの輪

7月12日(金) 場所:志津川東復興住宅 第2集会所(結の里おむかい)

12:30 開場
13:00 演劇公演&交流会
(15:00 終了予定)

7月13日(土) 場所:南三陸町生涯学習センター

10:00 開場
10:30 演劇公演&交流会
(12:30 終了予定)

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