志津川の風物詩 トコヤッサイに魅せられて / 佐藤美南さん

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志津川の風物詩「トコヤッサイ」に魅せられて/佐藤美南さん

南三陸に生きる⼈を巡り、⼀巡りしていく連載企画「南三陸ひとめぐり」。第四弾は、仙台の大学に通いながら「トコヤッサイコンテスト2016」の実行委員を務める佐藤美南さんに話を伺いました。

志津川の夏の風物詩「トコヤッサイコンテスト」

軽快な音色と踊りが特徴的なトコヤッサイ。南三陸町合併以前のおおよそ20年前に旧志津川町で誕生。震災前に開催されていた、前志津川湾夏祭りの際に開催されていた、トコヤッサイの楽曲に合わせて創作ダンスを披露する「トコヤッサイコンテスト」は、老若男女が参加する志津川の夏の風物詩のひとつだった。

今年「志津川湾夏まつり福興市」で開催される「トコヤッサイコンテスト2016」の実行委員を務めるのは、この春に進学のために町を離れた学生たち。その中心メンバーの一人が佐藤美南(みな)ちゃん。志津川で生まれ育ち、現在仙台の大学に通う大学1年生だ。3年前、震災で途絶えていた「トコヤッサイコンテスト」を復活のために立ち上がった。そして、町から離れた今も実行委員を務め続ける。

志津川の風物詩「トコヤッサイ」に魅せられて/佐藤美南さん
トコヤッサイコンテストの実行委員会メンバー。いずれも仙台に進学し町を離れた。佐々木莉奈さん(左)、佐藤美南さん(中央)、西城皇祐くん(右) 写真提供:トコヤッサイコンテスト実行委員会

トコヤッサイがきっかけで、友人と仲直り

美南ちゃんがはじめてトコヤッサイに触れたのは小学生のとき。運動会の演目としてみんなで踊ったそう。

中学生となり全生徒が参加する「トコヤッサイコンテスト」のため、再びトコヤッサイに触れることになった。上級生が考えた創作の振り付けを、みんなで練習してコンテストに臨む。そうして初めて出場したコンテストでかけがえのない経験をした。

「当時、すごく仲の悪い子がいたんです。口もきかないくらい。でも、このコンテストのためにみんなで練習をしていたら自然と仲直りしたんです。踊りには人と人をつなげる力があるんだって実感しました」

志津川の風物詩「トコヤッサイ」に魅せられて/佐藤美南さん
昨年開催された「トコヤッサイコンテスト2015」のようす  写真提供:トコヤッサイコンテスト実行委員会

震災で途絶えていたコンテストの復活を決意

トコヤッサイの魅力に触れた。上級生になったら自分たちが振りを考えて、みんなで練習して志津川の街を踊り抜けるーー。そんな思いを膨らませていた中1の春休み。東日本大震災が発生。みんなが笑顔で練り歩いたあの町は、一晩にしてもうなかった。

そして、2011年の夏、彼女が中学2年生のとき、岩手に引越しを余儀なくされた。

「引越して、地元が好きなんだなってことにはじめて気が付いて。南三陸に帰りたい!って思って、引越しから1年後、南三陸に戻ってきたんです」

地元・志津川高校に進学。語り部の活動などをしながら、「町のためにできることはないか」を考えていた。あるとき、震災前のトコヤッサイを通じて、大切な友を得た経験が彼女の頭をよぎった。

人と人をつなぐ力がトコヤッサイにはあるーー。

「震災で離れ離れになってしまった町民。そして、たくさんのボランティアのみなさん。町民と町民、そして町民とボランティアがつながるきっかけにトコヤッサイがなれるんじゃないかって思ったんです」

そして、震災後途絶えていたトコヤッサイコンテストの復活を彼女は決意した。

志津川の風物詩「トコヤッサイ」に魅せられて/佐藤美南さん

高校生が奔走し、踏み出した大きな一歩

それからの日々は、若干16歳の彼女にとって、初体験の連続だった。

「企画書作るのもはじめてだったし、それ持って大人の人に頭下げに行ったり、何もわからないまま動いていました」と笑う。

壊滅した志津川にあって、音源を探すのすら苦労した。高台にあった中学校にだけ唯一、音源が残っていた。それは、奇しくも彼女が中学1年のとき、震災前最後となったトコヤッサイコンテストの練習で使っていたもの。

「何よりも音源探しに苦労して、もう復活は無理なんじゃないかと心が折れかけていました…。そしたら、唯一残っていたのが、自分たちも最後に練習していた音源だったなんて。中学校の先生が『協力するからいっしょにやろう』と言ってくれたのが本当にうれしかったんです」

2013年、震災から3回目の夏に、トコヤッサイコンテストは復活した。準備期間も短く、参加団体はたったの2つ。それでも確かに一歩を踏み出した。以後、震災前にコンテストに参加していた団体も戻ってきて、昨年は10団体が参加。総勢400人以上が参加する盛り上がりを見せた。

志津川の風物詩「トコヤッサイ」に魅せられて/佐藤美南さん
昨年の「トコヤッサイコンテスト2015」参加者の集合写真  写真提供:トコヤッサイコンテスト実行委員会

トコヤッサイで笑顔あふれる町に!

夢を追いかけるための大学進学とはいえ、大好きな町を離れるには葛藤があった。東京への進学も考えたが、「少しでも地元に近いところで」と仙台への進学を選んだ。

「友達も含めて、地元を離れちゃう子が多いのも事実だけれど、トコヤッサイの日は地元に戻ってみんなで踊ろう!ってなったらうれしいですね」と目を細める。

今年も10チームが参加予定。最後の一曲は会場の観覧者もいっしょになって踊りに加わってトコヤッサイを楽しめるようにするとのこと。

「めっちゃ笑顔あふれる空間になるんだろうなって想像できます! 震災もあって落ち込んだ時期もあったけど、やっぱり南三陸町はみんなが明るく、楽しんでいる町であってほしい。その力がトコヤッサイにはあるはず」

7/30(土)、高校生が踏み出した一歩が、大きな力となり、今年も志津川に笑顔の輪を生み出す。それは明るい未来へとつながっている。

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