南三陸町内最高峰、田束山(たつがねさん)。地域の人からは信仰の対象として古くから愛される山です。つつじの名所としても知られ、今年も満開を迎えたつつじを目当てに、たくさんの方が訪れていました。
田束山(たつがねさん)
南三陸町内最高峰である田束山は、標高512m。歌津地区の北方、気仙沼市との町境に位置しています。
自家用車でも容易に山頂付近までアクセスでき、町やリアスの海を一望できる眺望の美しさから、観光名所となっています。
特に春にはマウンテンバイク大会の開催や、麓を流れる伊里前川でのシロウオ漁とシロウオ祭り、そして山頂を赤く彩る5万本のつつじと、田束山や歌津地区でのイベントが多くあり、ひときわ賑わいをみせます。
黄金文化、平泉中尊寺との関わり
田束山は地域の人々にとって、古くから信仰の対象ともなっていました。
時は平安時代後期、奥州藤原氏が100年以上にも及ぶ黄金文化を築き、東北地方を支配していました。
長く東北地方で続いた戦乱の戦没者を慰め仏国土をつくろうと、世界遺産として知られる平泉中尊寺を建立し、平安京に次ぐ仏教大国を築きます。
中尊寺を建立した藤原清衡(きよひら)を祖父に持つ3代目当主秀衡(ひでひら)は田束山を篤く信仰し、現在も中腹に跡の残る寂光時をはじめいくつかの寺社を造営しましたが、後の鎌倉政権との争いの中で荒廃していきました。
このため山頂からは多くの経塚が出土していて、県指定史跡ともなっています。
修験の場としても
伝説の修験僧として名高い満開上人は、田束山の荒廃を嘆き、自ら即身仏(ミイラ仏)となるため入山したと言われています。
麓の樋の口地区からの入山道は僧たちにとっての格好の修行場となっており、後に登山道として整備され「行者の道」と呼ばれています。
道中では美しい山の草木や沢とともに「穴滝」・「蜘蛛瀧」といった行場も見ることができ、数々の伝説と歴史のロマンに思いをはせながら登ることもできる山です。
南三陸の海も山も感じる
山頂からは、戸倉神割崎から歌津尾崎まで、志津川湾を囲む町の海岸線が一望できます。
天気が良ければ、南には石巻市金華山、西には栗原市栗駒山、そして北には気仙沼市大島と、県北部の名所各所が見えることもあります。
海のイメージが強い南三陸町ですが、山が非常に近いことも特徴です。
海抜0mから最高峰512mまでがこれほど近くにあることで、小さな町ながらいろいろな自然環境を楽しむことができます。
町境と山の稜線(=分水嶺)がほぼ一致することも大きな特徴です。町に降った雨は町内の川を伝って、町が抱く志津川湾へと流れ込みます。
つまり、山をどう手入れ・保全し、私たち町民がどのように暮らすかが、海の環境を大きく左右し、カキやワカメなどの豊かな養殖物の生産へとつながっているのです。
山の環境認証FSCと、養殖物の環境認証ASCの双方を取得したことでも大きな話題となった南三陸町。海も、山も愛し、「自然と共に生きる」町です。
四季折々の田束山を楽しんで
そんな「自然と共に生きる」町の姿を垣間見ることのできる田束山。
春にはつつじの赤が、夏には新緑の緑が、秋には紅葉の紅黄が、冬には雪の純白が山を彩ります。
四季折々、異なる表情を見せる田束山で、行者の道を歩き自然と歴史を感じながら、町の豊かな自然環境を存分に味わってください。