シリーズ 入谷は民話の宝庫なり 第1景

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南三陸町入谷地域は、さんさん(三つの山)に囲まれた里山。「宮城の遠野」とも評されるほど多くの民話や伝説が言い伝えられている土地です。入谷の散策をしながら、遥か古(いにしえ)からの風情や慣習を大切に守りながら暮らしている地元の方々に言い伝わる民話を紹介していきます。

緑とロマンを求めて・・・

様々なイベントで賑わう日もあれば、ひっそりと里山のゆるやかな空気を楽しむことができ、四季折々の色合いを楽しめる「ひころの里」。

神社仏閣の山門のような入口ですが、左側には標柱があります。

「緑とロマンを求めて 巨石まで4.2km」と表記されています。

ここから巨石までの道中、入谷の風景を楽しみながら、各地に伝わる民話を紹介していきます。

ちょぺっと寄り道…峠の居城跡(押舘)

ひころの里から約300m、道がなだらかになる峠の頂上付近から、西に中の町、東には天神集落を見下ろすことができます。「日本の原風景だ!」と感嘆の声をあげる方も多くおります。

志津川町教育委員会が建てた案内木柱碑には【押立舘跡(遠矢ヶ森舘)】と記されています。

「安永書出」では「御館主相知不申」とありますが、地元では阿部周防の居館と伝えています。空掘や土塁、方形に廻らされた土段など、小さいながらも整ったつくりをしています。ここの館主は強弓の使い手だったといい、別名「遠矢ヶ森館」とも呼ばれます。

*南三陸VIRTUAL MUSEUM 歴史の標 編 引用

舘の下方に『高屋敷』という屋号のお宅があります。当主・阿部忠雄さんによると、高屋敷とは本来館山の斜面を平らにした場所の事で、現在も3~4軒民家が建ち並んでいます。この辺はいくら掘っても水は出ないので、麓の沢近くの井戸まで汲みに行っていたという話を聞いたことがあると教えてくれました。

「水汲みに出かけた女中が、若い男性と恋仲になった。ある晩、帰りが遅いことを心配した旦那さんは井戸端にいる二人を見つけた。女中が好きになった若者は実はうなぎの化身で、そのうなぎは水を汚して潜って逃げた。それからその辺の井戸水は濁ったままだ」という民話もあります。

桵葉川 重ね石(続石)

峠を下ると小さな川にたどり着きます。桵葉川(たらばがわ)という清らかなせせらぎは、地元の方々から清流と呼ばれ愛され続けており、流域の施設・地区公民館を「清流会館」と名付けたそうです。

さて、そんな小さな川なのですが、大きめの石がゴロゴロと。ちょっと歩くと対岸にこんなものがあり、河岸の立て看板には、下記のように書かれています。

 重ね石(続石) ふるさと百選 46番

鏡餅を逆さにしたように三つ重ねになっている石が「重ね石」です。
「安永風土記」によれば七つ重ねになっていたと言われますが、確認されていません。
水神「続石明神」として尊敬されたと言われています。
下流には、「陰石」「陽石」があり、小授けの神として信仰されたと言われます。
平成八年三月選定 志津川町教育委員会

これは花崗岩の重なりで、現在は三段ほどが重なっているのが確認できますが、実際には七つの石が重なっていると伝えられています。かつてこの付近は沼になっており、多くの魚が取れ、続石屋敷と呼ばれる長者がいましたが、旅の僧(実は弘法大師)に無礼をしたために没落したという伝説が伝わっています。

この重ね石(続石)もそこそこ大きいのですが、目指す「巨石」ではありません。次回、たどり着くのか?! またまた寄り道しちゃうのか?! お楽しみに!第2景につづく

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