南三陸なうの閲覧者のみなさま、こんにちは。海研一(うみけんいち)です。今年一年、南三陸なうで、志津川湾が世界に誇れる海であることをお伝えせよとお達しがあり、”えっ?!世界70億人すべてが旧知のことを今さら…”という思いがありましたが、ラムサール条約登録湿地にもなるであろうこのタイミングに復習もいいかなと書き綴らせていただくことになりました。
暖流と寒流がぶつかり合う珍しい場所
海研一(うみけんいち)って誰って?南三陸・海のビジターセンターをお守りさせていただいていますNPO法人海の自然史研究所メインキャラクターでございます。みなさま、お見知りおきのほどを。
さて志津川湾、何がすごいってまずひとつめは、暖かい海で見られる海藻のアラメと冷たい海を代表する海藻のマコンブが両方見られる湾だということ。これは結構珍しいことで、志津川湾の沖合が、暖流の黒潮と寒流の親潮がぶつかり合う世界有数の場所であることが大きく関係している。
時には、沖縄の海にいるような熱帯魚の仲間も、冬を越すことはできないけれども(死滅回遊魚と言います)見かけられることもある。
加えて、北の方からは津軽暖流という日本海を北上する対馬海流が分かれて津軽湾を抜け南下してくる海流もあって、これらの複合でほんとうに様々な生き物たちが生息する多様性の高い湾になっている。海藻の種類では180種を超える確認がされているのはすごい。
分水嶺に囲まれた町
もうひとつあげられるのは、湾に注ぎ込む陸域からの水が、ほとんどすべて南三陸町ひとつの町に降った雨が源であるということ。町の境が、町を囲む山の稜線とほぼ一致している、すなわち降った雨水の流れ出す方向を分ける”分水嶺”と一致していることから、こういったことがおこる。
森に降った雨が海まで流れつく途中には、町の人々の暮らす場所があり、そのさまざまな営みを経て水が海に流れていく。ということから、志津川湾がどうなっていくかは町の営みに左右されると言っても過言ではない。湾の状態が、町の営みや海や自然に調和しているかどうかのバロメーターになるということで、まさに森と里と川と海が繋がっているとわかる。すごい。
震災前から研究者が集っていた土地だった
多様性が高く、その海が人の暮らしと深く繋がっていることは、自然科学分野でも人文社会学的にも研究対象として非常に貴重であり、震災前も後も多くの研究者がこの地に集ってきた。そのおかげで、さまざまなことが記録されており、それが礎となってまた新たなことが見出されていく。この連鎖がおこっていることも志津川湾がすごいと言えることのひとつである。結果として、三陸復興国立公園に編入され、あらためて記述する機会があるがラムサール条約湿地に登録される候補地ともなっている。
今回の南三陸なうでは、志津川湾のすごさの基礎事項を紹介しましたが、これから1年にわたって多面的に伝えていこうと思います。もう知っているということもあるでしょうが、飽きずにお付き合いいただければと願うところであります。海研一でした。