南極と南三陸で「生きる」を教わった石井洋子さん。南極写真展開催中

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さんさん商店街内にある「NEWS STAND SATAKE」にて写真展「彩りの南極」が開催中です。撮影したのは2015年に南三陸に移住した石井洋子さん。「南極越冬隊」として南極で生活した彼女がなぜ南三陸に移住したのか?そして、写真展で伝えたいこととは?その想いに迫りました。

NEWS STAND SATAKEで写真展開催中

南三陸志津川さんさん商店街内の「NEWS STAND SATAKE」で写真展「彩りの南極」が開催されています。写真を撮影・展示しているのは石井洋子(ひろこ)さん。「ひーさん」という呼び名で親しまれている移住者です。

石井さんは、気象庁に勤めていたころ、第49次日本南極地域観測隊に気象担当として参加、南極で越冬しました。趣味のフィルムカメラを通して写し出された世界は圧巻。思わず見とれてしまう美しさの写真が20点ほど展示されています。

「雪と氷、そして大陸の岩の世界である南極。冷たく、寂しいイメージがありますが、じつは彩り豊かな、あたたかさも感じれるような場所が南極なんです。私自身が実際に行って、『こんなに色があるんだ』って驚いたことでもあります。そんな彩りのある南極昭和基地周辺の写真をセレクトしました」と石井さんは話します。

生きるのに必要なものを教わった南極での暮らし

岡山県出身の石井さんは、子どものころから外で遊ぶのが好きで、中学生くらいから地球環境にも興味をもつようになったという。地球環境に関わる仕事がしたい、と気象庁に入庁後、気象予報士の資格も取得するなど、秋田地方気象台や福島県など東北各地を中心に活躍していました。

そんななか「年に一回提出する『転勤希望』の第一志望欄に、常に『南極』とだけ書いて提出していたんです。行けるものなら行ってみたかったですからね」と笑う石井さん。そして念願叶い、2007年11月から2009年2月までの1年3ヶ月ほど、南極越冬隊として派遣されることになりました。

憧れていた南極で気象観測を行いながら、石井さんは「人間が生きるのに必要なものを教わった」と話します。

「何もない南極で、冬は太陽も登らないような過酷な環境でどのように生きるか?もちろんわたしのような観測部門の隊員だけでは生きられなくて、隊員の中には技術者がいて、調理人がいて、医師がいて。食料も、資材も、エネルギーも必要なものはすべて持っていきます。30名ほどの隊員で小さな町みたいなのを作って、協力しあわないと生きていけなくて。モノであっても、人間関係であっても、人間が生きていくのに必要なものを、そこで教わりました」

雪上車に乗って南極を駆け抜ける石井さん(写真提供:石井洋子さん)

震災後、ロケットストーブを持って南三陸との出会い

1年3ヶ月に渡る南極での生活を終え、帰国後、いずれかは田舎暮らしがしたいとの想いを持ちながら生活していました。そんなとき、東日本大震災が発生。

枯れ葉や小枝など身近な資源を使って簡単に火を起こすことができ、暖房や調理器具としても活用できる「ロケットストーブ」を持って、被災した沿岸地域を周る活動を行っていました。2011年4月末に南三陸にもロケットストーブを持って訪れたのが、南三陸と石井さんの最初の出会いでした。

「ほかの地域と比較しても南三陸の人々がロケットストーブを必要としてくれる方が多かったんです。なぜだろう?と考えたときに、南三陸の人々は自然と道具を使いこなしていたことに気づいたんです。『こういう使い方もできるな』とか私のほうが教えられることが多かったくらい。山に囲まれ、里が豊かな南三陸町では、人と自然が近い距離で生活しているんだなと実感したのを覚えています」

たまたま訪れた南三陸での滞在から「いつかは…」と思い描いていた、自然と共に生きる「暮らし」が具体的なイメージへと変わっていきました。

その後南三陸に移住し、ロケットストーブのワークショップなどを行いながら、大工さんや畑仕事、民宿のお手伝いなどをしながら、自給自足に近い循環型の暮らしを目指しています。

「都市で生きていると自然に生かされていることを実感しにくい。けど、ここでは自然と身近だから意識することができるし、湧き水もあって、エネルギーとなる資源もあって、生きるのに必要なものがここにはあるんだなって思っています。南極での経験、教わったことが、南三陸での暮らしにつながっていますね」

普段の暮らしに想いを馳せる機会に

現在開催されているNEWS STAND SATAKEでの写真展から、石井さんは「南極がどこか遠い場所の知らない地ではなくて、少しでも身近な場所になってもらえたらうれしい」と話します。

「地球上に同じ空の下にこういう美しい風景があって、でも気候変動によってこうした自然がいつまで続くかもわからない。テレビなどでニュースを見たら、知らないところの風景じゃなくて、写真で見た風景のことだな、というふうに少しは身近な場所になってくれたらいいなと思います。SATAKEさんのおいしいコーヒーを飲みながら、地球のこととか、自然のこととか、もっと身近な普段の暮らしのことに、想いを馳せるような場所になってもらえればと思います」

インフォメーション

写真展「彩りの南極」 @NEWS STAND SATAKE
写真展開催期間:2月24日(月・祝)まで開催
時間:10:00~17:00
※火曜定休
場所:NEWS STAND SATAKE

また2月22日(土)にはトークイベントも開催されます。

「気象隊員の南極ばなし」
開催日:2月22日(土)
時間:16:00~17:30
定員:10名(予約可)
参加費:800円(ワンドリンク付)

南極をイメージした手作り雑貨も販売中
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