物語と共に海産物を届け、漁業の活性化に携わりたい!/井口雅子さん

3909

南三陸に生きる人を巡り、一巡りしていく連載企画「南三陸ひとめぐり」。第28弾は、今まさに旬を迎えている牡蠣を扱う「たみこの海パック」に勤める井口雅子さん。2017年10月に移住し、漁業の活性化に携わりたい!と意気込む彼女の想いに迫りました。

ボランティアで気付いた海産物のおいしさ

2017年10月に南三陸町に移住した井口雅子さん。現在は海産物のギフトなどを取り扱う「たみこの海パック」で広報や営業などを担っている。

東京生まれの井口さん。小さいころにアメリカに住んでいた経験をもとに、設計会社で海外案件を担当するなど英語を生かした仕事を行っていた。そんな折、東日本大震災が発生した。

「震災の前年にたまたま東京から岩手まで海沿いをドライブしたことがあって。シュノーケリングが趣味だったので、ちょこちょこ車を降りて、入れそうなところに入ったりして。あんなに奇麗だった海、そして温かく迎えてくれた町や数多くの人々の命が奪われたことにショックを受け、気になっていたんです」

実際に足を運んだのは2014年7月。自身もシュノーケリングをするなど海が大好きだったことから、漁師のもとでボランティアに参加した。震災から漁業再開へ、必死の思いで立ち上がって来られた漁師さん達の力強さ、ひたむきさ、当時を朗らかに語る器の大きさに魅了された。

「新鮮な海産物がこんなにもおいしくて、養殖業がこれほどまでに手のかかるものだったことを初めて知りました。東京に戻っても、養殖物の成長が気になったり、漁師さんとそのご家族に会うのが楽しみになっていました」

そして2016年に、南三陸町戸倉地区の牡蠣養殖が日本初となるASC国際認証を取得。震災後牡蠣養殖棚を3分の1に減らし、「奪い合う漁業」から「分かち合う漁業」へと、環境に配慮した漁業のあり方に転換したことに、「もともと海が好きで、海洋資源の保全に興味があった」という井口さんは大変感銘を受けたという。

後悔したくないの一心で移住を決意

そうした考えをもっているなかで、女性の雇用の場を大事にし、おいしい海産物を物語とともに届ける阿部民子さんに出会った。

「ブランド化することも、営業の経験もない。そんななかで自分が行ったところで何かできるのだろうか?と考えたり、すごく悩んだ」と振り返る井口さん。ただ、「挑戦してみればよかった、と後で後悔したり、現場も知らずに頭でっかちになることが嫌だなって。現場に身を置いて信頼関係を築いたり、東京にいた感覚を持ち合わせることで、自分にできることを悔いのないようにやってみよう!」と移住を決断した。

たみこの海パックで活動を始めてから、間もなく1年半が経とうとしている。経営面や商品内容を民子さん、そしてスタッフとともに検討することから、広報や営業、発送処理など幅広く仕事をする。ASC認証の戸倉っこ牡蠣の販売も手掛け、そのおいしさと取り組みのストーリーから知名度が上がっていることを実感しているという。

「選りすぐりの海産物がお客さんに喜ばれることが何よりの喜び」と話す。

漁師のストーリーを全国、世界へ

「漁師さんは自分が育てた海産物を『おいしい!』と食べてもらえることが何よりもの励みになる。生産者と消費者が交流できるようなイベントを企画してみたい」

台風、低気圧、貝毒の発生……。海産物が消費者の元に届くまでには多くの試練があることを目の当たりにしてきた。移住して、現場の生産者により近いところで毎日過ごしているからこそ、生産者のストーリーを伝えながら海産物を届けたいという想いが強くなっていった。

そして、その伝える相手は国内にとどまらない。海藻について学び、オリジナルのふりかけを作る人気のワークショップは、これまで海外の方も複数回受け入れを実施。「日本の食文化を海外の人にも伝えていきたい。前職の英文事務の経験を生かして、インバウンドにも積極的に挑戦していきたいですね」と意気込んでいる。戸倉から全国、そして世界へ。井口さんが惚れ込んだ海とそこで生きる人々のストーリーが海を渡っていく。

海外からのお客様にも好評をいただいているワークショップ

いいね!して
南三陸を応援

フォローする