「入谷の里に“桃源郷”を」。そんな20年来の地域の方々の思いが、いよいよ形になり始めています。花あふれる豊かな里山へ。「花見山プロジェクト」の感謝祭が開催されました。
入谷「ばば山」
南三陸町入谷の中心地、中の町地区を見下ろすようにそびえたつ「ばば山」は、地域のシンボル的な山として、また古くから地元の方々の遊び場・思い出の地として愛されている場所です。
里の四季を感じられる頂上からの展望は本当に美しく、震災後からはたくさんの大学生やボランティアの方々に支えられ、遊歩道の整備やツリーハウス「ソノバシノ木」の設置などがなされてきました。
20年前の“桃源郷構想”と「花見山プロジェクト」
今からおよそ20年前、入谷の地域づくり団体「グリーンウエーブ入谷構想促進委員会」によって、“桃源郷構想”が立ち上がりました。地区内で花の咲く木を育て、美しい景観づくりやこれによる地域の活性化、また苗木の販売による新たななりわい作りを狙ったものでした。
この“桃源郷構想”が20年の時を経て、今一度地域の方々によって立ち上がりました。想いを受け継ぎ、ボランティアなどの力を借りながら新しいスタイルで実現しようというのが「花見山プロジェクト」です。
ばば山を花あふれる地にし、新たな地域の憩いの場にしよう・新たな観光名所にしようと、実行委員会が発足しました。
花見山プロジェクト、これまでの軌跡
2013年から、震災ボランティアと共に地域の里山を学ぶ活動として、ばば山の整備「グランマの森プロジェクト」が始まります。翌年に中腹にツリーハウス「ソノバシノ木」が完成し、農作業などの休憩所として、また地域の小学生の社会学習の場や地域イベントの会場として活用され始めました。「ばば山=グランマの森」「その場しのぎ=ソノバシノギ」など、なんともネーミングが秀逸です。
2015年には、町の「おらほのまちづくり支援事業補助金」を受け、本格的に「花見山プロジェクト」が始動。地域住民を中心に、多くの企業・大学・団体等のご支援を受けながら、山の整備や植樹などが進められてきました。
頂上のビュースポットに東屋があればなー、という地域住民の声に応える形で、これまでのボランティアや無農薬ササニシキ・トウキの栽培・情報発信などでご支援をいただいていたNTTdocomoさんは、東屋を建設してくださいました。地権者の方から提供された地産のクリの木による柱や解体された古民家から出たスレート屋根、地域の職人さんによる施工により建てられた東屋は、今後地域住民や観光に来られる方々の憩いの場となることでしょう。
花見山感謝祭
4月29日、東屋の除幕式とともに、花見山感謝祭が開催されました。
前日の大雨がかろうじて止み、風が強く寒いながらも好天に恵まれた中、プロジェクトに関わった地域の多くの方々や、東屋・苗木の寄贈などでご支援くださったNTTdocomoさん・東北電力さんなどが集まりました。
「海が印象強い南三陸町ですが、こうして山の名所ができることで、ますます海から山めぐる町へ」と祝辞を述べたのは町長。地域の人々により手入れされた里山が観光名所として整備されることで、町の取り組む森・山・海・里が連環する循環型社会へと、より近づいていくことでしょう。
関係者や来賓らによる東屋テープカットもおこなわれ、盛大なセレモニーとなりました。
地産品を味わう軽食会
セレモニー後には、入谷の地産品が用いられた軽食が振る舞われました。
農業を営む女性らによる「ビーンズくらぶ」提供のおにぎりや、農業体験などを行う農業法人「農工房」提供の薬膳トウキスープ、また、ばば山で収穫されたタラッポ(タラの芽)の天ぷらなど、地域の人により生産された、地域の産物や旬の味覚を存分に味わえるメニューです。
これだけ美味しいものがつくられる入谷という里の力強さを、改めて感じます。
地域内外をつなぐ協働の場
オープンセレモニーの中でプロジェクト協力への感謝状を贈られたNTTdocomo東北支社の山田さんは「たくさんのご縁をいただきこちらこそありがとう」と、また東北電力株式会社気仙沼営業所の太田さんは「参加できたことを誇りに思う」とそれぞれ述べられました。プロジェクト自体がすでに、地域の方々と地域外の方々をつなぐ架け橋として大きな意味を持ち始めています。
こうした地域を越えた協働の姿が、美しい花見山として花開き形になる日も遠くないでしょう。
美しい花見山を眺めに、また頂上からの展望を楽しみに、そして、ぜひ植樹やプロジェクトへの参加にいらしてくださいね。