人も地球も健やかな暮らしを目指して/平山太一さん

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南三陸町に移住し起業活動をおこなう「地域おこし協力隊」隊員を紹介していく連載企画。第2回は、2018年4月に着任したばかりの森林資源活用推進員、平山太一さん。町産のスギ材を使用したモジュールハウスの開発と、それを活用した新しいくらしのスタイルの実現を目指します。

森林資源を有効活用し、新しい暮らしのスタイルを実現

―――森を活かし生かす、“森林資源活用推進員”

日本は小さな島国でありながら、国土の7割近くを森林が占める森林大国の1つ。南三陸町も海辺の町のイメージが強いですが、その平均をしのぐ8割近くを森林が覆っています。リアス特有の森と海が非常に近い、町の地形の最大の特徴です。

おおよそ50~60年と適材となるまでの生長スピードが早く、さらにまっすぐと伸び育ち柔らかいため加工が容易であることなど、建材ほか様々な場面で古くから用いられてきたスギは日本固有の樹木で、「日本の隠された財産(Cryptomeria japonica)」という学名が与えられています。戦後の拡大造林政策で日本中に植林が進められ、現在では日本の森林の約4割が人工林となっています。“南三陸杉”のオリジナルブランドで普及を図るこの町のスギは、古くは伊達藩の時代から重宝されてきた歴史を持ち、美しい赤身と目の詰まった強度が特徴で、FSC(Forest Stewardship Council森林管理協議会:国際的第三者機関)の国際認証を一部取得しています。

しかし近代では、鉄筋コンクリートや比較的安い輸入外材の出現により、国産森林資源の使用場面がとても少なくなっています。あなたの家は木造でしょうか?身の回りに木の家具はありますか?その木は国産材でしょうか?使われないスギは切られることもなく、森林は過密化し、1本1本のスギは窮屈そうに細く育ち、細く使えないスギはより切られる機会を失い、この繰り返しが森林の荒廃を進めています。植林から伐採まで数十年を要する森は、世代交代のタイミングでどこまでが我が家の森かわからなくなり、さらにそれは震災後の人口流出の混乱で加速しました。

そんなスギを中心とした森林資源をもっと有効活用し、豊かな地域環境と新しい暮らしのスタイルを実現させようと取り組むのが、2018年4月に地域おこし協力隊員に着任し、移住したばかりの平山太一さん。

木材を使って開発に挑戦するのが“モジュールハウス”。 “モジュール”とは“基本単位”というような意味で、最小単位の箱状の建築を、必要に応じて組み合わせることでいろいろなパターンをつくれるのがモジュールハウスの特徴です。「モジュールハウスは、安価で作れたり、簡単に移動ができるような手軽さを持っているが、プレハブほど仮設的なものではなく、不便じゃないもの」と平山さんからの説明。小さい、狭い、不便というような印象を受けるが、「快適さには妥協したくない」と強く語ります。

「住宅に限らず、飲食店や販売店などの店舗、事務所や集会所など、活用方法はいろいろあると思います。増改築がしやすいので、最初は小さい単位でスタートして、必要に合わせて大きくしていくことができます」と、新しい事業や暮らしへのチャレンジにも最適だそう。例えば、結婚を機に2人で暮らせる小さなモジュールハウスを購入し、子どもが生まれたら増築をする。転勤があれば移動が可能だし、子どもがひとり立ちすれば部屋を減らして小さくしたり、不要な部分だけを別の場所に移して、倉庫にしたり別荘にしたりも可能です。

「人も気軽に移動するし、合わせて家も移動しちゃうみたいな、住み慣れたプライベート空間をずっと使い続けられて、でも1カ所にずっと住み続けなくてもいい、そういう気軽で多様なライフスタイルがあってもいいと思う」と平山さんは考えます。数十年のローンを組んで“不動の財産”をもつこれまでの価値観に違和感を持っているそう。

さらに平山さんが狙うのは、せっかくの移動性を活かしたエネルギー自給生活の提唱。つまりは、水道管や電線に頼らない暮らしです。「社会的な環境問題を考えると、現代の暮らしはエネルギーの消費が多すぎると思います。なるべく自然エネルギーに頼ることで環境的なメリットと、電気代や水道代がかからなくなる経済的なメリットもあります」とその魅力を語ってくれました。「森林資源を活用したモジュールハウスで、自然エネルギーを活用した暮らしをする、そういう試みや考え方が、環境への配慮や意識につながると思っています」と、社会に大きなインパクトが起こることに期待が膨らみます。

まだ4月に着任し移住したばかり。パートナーである協力隊員の羽根田さんと、モジュールハウスの企画や開発に、販売やレンタル、さらにはこれを活用したグランピングなどの事業での起業を狙っていますが、まだまだ課題は山積み。「ソーラーエネルギーや井戸・湧き水に雨水、薪ストーブやペレットストーブなど、これらを使って快適な暮らしができるのか、まずは自分が挑戦してみたい。空き家とか空いている建物があれば紹介してほしい」。モジュールハウスの試作品製作にも取り組んでいるそうです。

ゼロから挑戦する町に魅力を感じ、移住を決断

―――場所も職種も、がらっと変わった

そんな平山さんは、埼玉県大宮市(現さいたま市)出身の29歳。祖父母の家が仙台にあり馴染みはあったものの、東北での暮らしは初めて。「身寄りも知り合いもいないし、若い人もいないイメージで、人口も少ないお店も少ない、そんな場所でビジネスが成り立つのか不安はありました」と不安を抱えつつも移住に踏み切ったのはなぜでしょうか。

茨城県つくば市の大学に在学中、東日本大震災を経験。つくば市も被災地の1つであるため震災のことには関心があり、閖上や陸前高田には数回ボランティアで足を運んだそうです。大学では国際関係学を専攻し、問題解決型ビジネスや社会性の強いビジネスを学んでいたそうです。「地域や地方のような小さい単位のコミュニティや、そういう場所でのビジネスや起業をすることに元々興味がありました」。

卒業後は、海外で働ける可能性やデザインの仕事、またベンチャーに惹かれ、広告関係の仕事に4年間勤務。しかしこの頃から転職の準備は始めており、特に立体や空間などのデザインをもっとやってみたいと感じていたそうです。そんな中、知り合いを通じNextCommonsLab南三陸の起業家募集を知り、未経験ながらも建築に関わるプロジェクトに興味を持ちました。「採用までに3~4回ほど南三陸を訪れましたが、意外と若い人たちがたくさんいることを知りましたし、ゼロからいろいろなことに挑戦したり立ち上げをできることに魅力を感じました。他のラボメンバーなど、なにかをやろうとしている人たちがたくさんいることも心強かったです」と、応募を決意した理由を聞かせてくれました。

今までの経験と地続きではない転職、住む地域も職種もがらっと変わった、平山さんの新しい挑戦が始まりました。

町の魅力にどっぷりとハマりたい

―――まだまだ町のことを何も知らない

現在は一時的に戸建て住宅を借り、志津川に住んでいる平山さん。「庭の小さな畑から野菜を収穫したり、スーパーで買う食材も都会よりも安いので、自炊をするのが楽しいです。野菜もたくさん食べられて健康的です」と、移住ライフを楽しんでいる様子。出店の経験も持っているほどカレーづくりが得意で、人に振る舞うのも好きとのことです。ぜひ味わってみたいですね。健康にとても気を使っていて、元々の運動好きも相まって、ジムに通ったり職場まで徒歩で通勤したりと、体づくりにも余念がありません。

景色がいいところが好きで、お気に入りはホテル観洋の露天風呂だそうですが、まだ来たばかりであまり町を巡ったりもできていないそう。「景色のいい場所や町の楽しい遊びなど、いろいろ町のことを知りたいし教えてほしいので、どんどん町の人たちから声かけてほしいです。養殖のお手伝いとか、やってみたいことはたくさんあります。」と、まだ見ぬ町の魅力にも期待満点です。

―――人も地球も健やかな暮らしを目指して

「まずはモジュールハウスの試作品をつくって、オフグリッドのシステムを実現させてみたい。自分がその暮らしに挑戦できるといいですね」と、当面の目標を語る平山さん。そんな地球にやさしい暮らしのスタイルと共に実現したいのが、自身も健やかな暮らし。

「せっかく海のそばに住み始めたので、夏までに腹筋を割って、だらしなくない恰好で海に遊びに行きたいですね。通勤の行き帰りを徒歩で、仕事が終わったらジムに通って、食事制限をしっかりする!」と、この記事が掲載される頃には結果が目に見えているであろう、わかりやすい目標を掲げてくれました。

ジムで見かけたら、腹筋のチェックをしつつ町の情報をいろいろと教えてあげてください。豊かで健やかな地域と社会をつくっていく、期待溢れる若者です。

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