解説!南三陸町バイオマス産業都市構想とは?

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平成25年度に南三陸町が掲げた「バイオマス産業都市構想」 南三陸町に関わる方なら一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。環境にやさしいだけじゃない!南三陸の目指すまちづくりをご紹介します。

バイオマスはBIO(生物資源)MASS(量)の略

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志津川にあるバイオガス施設「南三陸BIO(ビオ)」

バイオマスとは、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」を指します。石油のような化石資源は、再利用が困難であったり、燃焼によって地球温暖化の要因となる二酸化炭素を排出したりしますが、バイオマスは再生可能でカーボンニュートラル(排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量)な資源です。

バイオマスは大きく分けて3タイプ!

  1. 【廃棄物系バイオマス】廃棄される紙や家畜排泄物、食品廃棄物、建設発生木材、製材工場残材、下水汚泥などを利用する廃棄物系バイオマス。
  2. 【未利用バイオマス】稲わら・麦わら・もみ殻などを利用する未利用バイオマス。
  3. 【資源作物】さとうきびやトウモロコシなどエネルギーや製品の製造を目的に栽培される資源作物。

環境にやさしく災害につよいまちづくりのシステム

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南三陸町バイオマス産業都市構想の概念図

バイオマス産業都市とは、経済性が確保された一貫システムを構築し、地域の特色を軸とした環境にやさしく災害に強いまちづくりを目指す地域のことです。

現在国では、2013年度から5年間に約100 地域(各都道府県に2 地区程度)のバイオマス産業都市構想を目指し、関係府省が共同で地域を選定して支援する予定です。(関係府省:内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)

南三陸町では、震災以後ともに持続可能なまちづくりを考えてきたアミタホールディングス株式会社とパートナー協定を結び、主に2つの取り組みが進められています。

一つは生ゴミからバイオガスと液肥を製造し、エネルギーや畑の肥料として還元するというバイオガス施設での取り組み。

もう一つは、木質ペレットを使う生産し、ボイラーやストーブ用などに供給して熱利用していく取り組みです。南三陸町は8割近くが山林で、放置されている山が多いため、課題となっていた利用されていない資源が豊富です。

資源の持続可能性と地産地消型のエネルギーを考えることは地球規模での課題であり、災害時にも役立つ備えとなります。

生ゴミがエネルギーと肥料に!バイオガスの仕組み

2015年10月、バイオガス施設「南三陸BIO(ビオ)」が完成しました。町内の家庭や事業所から出る生ごみや、し尿、汚泥などを発酵処理し、バイオガスと液体肥料を生成するリサイクル工場です。

分別された生ごみは回収され、南三陸BIOに持ち込まれます。ここにはメタン菌という菌がいて、その菌の働きでバイオガスと液肥が生まれるのです。

住民一人ひとりの分別からエコタウンを作っていく取り組みはなかなか実施しにくく、南三陸町民の意識の高さは全国でも先進例として注目されています。

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南三陸の生ごみ分別の表 住民の協力により、南三陸BIOでは異物混入率1%という高い精度で動いている

生まれたバイオガスは南三陸BIO運営に必要な電力をまかない、余剰分は非常用電力として蓄えたり売電したりすることができます。今後、温室ハウス、足湯・温浴施設、ロードヒーティング、農産物等の乾燥施設などの近隣施設で余剰温水を活用していくことも視野に入れています。

また、同時に生まれる液肥は、化学肥料とは全く異なる地域循環型の肥料です。そうして栽培された農産物は、循環型・環境保全型の農産物としてブランド化を図っていくことができます。

循環型エネルギー!木質ペレットの可能性

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木質ペレット 木材を乾燥させて細かく砕き、圧縮して成型している

南三陸町には、FSC認証も受けた立派な森林があります。その町の資源を活用できるのが木質ペレットです。燃料となる木材は、今まで使われていなかったものや森の保全のために出た間伐材など。昔は間伐材も売れましたが、今は木の価格が下がっていて間伐作業も経済的に苦しい側面がありました。

木質ペレットの生産・供給により地産地消型の新たな産業が生まれることで、森林の保全の後押しになり、さらに新たな雇用にもつながっていくことが予想できます。

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引用:南三陸町バイオマス産業都市構想の概要 平成25年12月19日より

そうして生まれたペレットは二酸化炭素の排出が大きな問題になる化石燃料などに代わる、エネルギー源と成ります。町ではエコで災害に強いストーブとしてペレットストーブの普及し始めました。ペレットからの軽射熱による遠赤外線効果と炎による癒し効果で心も体もあったまるという嬉しい作用も期待できるようですよ。

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町役場や病院、宿泊施設など公共的な場に設置されており、一般家庭での購入も進んでいます

バイオマスがもたらす町の未来

バイオマスによるまちづくりは、単なる自然環境保全の取り組みではありません。

これまでコストをかけて処理していた廃棄物をエネルギーと資源に代え、町内の使われてなかった木質資源を財に代え、地域内で資源と経済が循環する地産地消のエコシステムが生まれています。今後は、酪農や養殖の分野でもバイオマスによる取り組みが進んでいきます。一次産業の基盤ができれば、産業、観光といった分野で、まちの付加価値を高める取り組みとしてブランド化を仕掛けることも可能です。

そして何より多様な主体や町民一人一人の協力で成り立つ自立分散型のまちづくりの姿は、これからの世界をリードするライフスタイルとなっていくことでしょう。

まだまだバイオマス産業都市構造の取り組みは始まったばかり。何世代にも受け継がれていく町の文化として成熟していくことを、楽しみにしています。

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