スポーツ×たこ焼き×お酒で市街地活性化に挑戦!

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南三陸町に移住し起業活動をおこなう「地域おこし協力隊」隊員を紹介していく連載企画。第3回は、スポーツ×たこ焼き×お酒で志津川市街地の活性化をねらう、井原健児さん。これまでの経歴を活かし、子どもから大人まで誰もが楽しい、にぎわいあるまちづくりに挑戦しています。

志津川市街地ににぎわいを生み出す、“市街地活性化支援員”

志津川を流れる大きな川、毎年サケが遡上することでもおなじみの八幡川。それをまたぐ汐見橋もいよいよ開通し、国道45号・国道398号が交差する、志津川市街地の重要拠点となる大きな交差点が完成しました。週末には多くの人でにぎわうさんさん商店街も位置し、町の人も町を訪れる人も集う、活気ある市街地が再興されつつあります。

町の復興計画や、著名な建築家、隈研吾氏のグランドデザインにおいて「観光・商業エリア」と位置付けられているこのエリア。そんな一等地の交差点に、見慣れぬ木製の“箱”が置かれているのに気づきましたか?

この「トレーラーハウス」を用いて、さらなる市街地の活性化を図るため、2018年1月に地域おこし協力隊“市街地活性化支援員”に着任したのが井原健児さん。これまでの経歴で培った「お酒」と「料理」の知識とスキルに、元々の趣味であった「スポーツ」を組み合わせ、飲食店×スポーツ交流拠点“Oct-VIN369(オクトヴァン・サンリク)”としての起業を図ります。屋号の由来は、タコの「オクトパス」と、ワインのフランス語読みである「ヴァン」、に三陸の「369」を加えたもの。現在はいろいろとあって、トレーラーハウスでの営業が困難になっているとのことですが、その辺も含めていろいろなお話を伺いました。

「初めて南三陸に来た時に、町で遊ぶ子どもの姿を見かけなかったんです。復興は進んでも、町の景色として子どもが遊ぶ景色が必要だと思います」と、初めて町を訪れた時の印象を語ってくれた井原さん。他の様々な地域で見た、スケートボードやバスケットゴールなどがあるストリートスポーツ施設が目に浮かんだそう。

現在はバスケットゴールを町の方から譲っていただき入手したほか、スケボーのランプ(スケボー用の半円の斜面施設)の設計も進めているとのこと。日本ではあまり広まっていないスポーツの導入も狙っていて、最近検討しているのはテックボールというスポーツ。サッカーと卓球を混ぜたようなスポーツです。色々なスポーツが気軽に楽しめる、そんな場所づくりの実現を目指しています。

カジュアルにスポーツが楽しめる空間には、大人も子どもも大好きなファストフードがつきもの。閃いたのは、町の特産品である“志津川タコ”を活かした、たこ焼きでした。

「志津川市街地にはバス停があって高校生をたくさん見かけますよね。私が高校生の時なんて、体力は余るし、とにかくいつも腹は減ってるし、学校の帰りやバスを待ってる時にその両方を発散できる場所があったら良いかなと。スマホいじって待つより、体動かして人とコミュニケーション取る方が健全ですしね」。

一方でオトナはお酒を飲みたいもの。昼のたこ焼き営業に加え、夜は本格的なバー営業を目指します。

「町に夜お酒を飲めるお店が少なかったり、洋酒を飲めるお店も少ないですよね。本格的なお酒をカジュアルに、たこ焼きと一緒に楽しめるような、ワイワイと飲める場所をつくりたいんです」ととても楽しみな展望を描いています。映画上映やスポーツのパブリックビューイングなども計画しているそうで、楽天戦や東京オリンピックで盛り上がる景色が目に浮かびます。

まずはたこ焼き屋から営業を開始、と意気込んだものの、実は計画していたトレーラーハウスでの営業が、宮城県のルール上できないことが発覚。未だオープンが出来ず、現在はイベント時の出店などで振る舞っています。トレーラーを活かしつつ開業をする方法を模索中とのこと。

「トレーラーは無くなるかもしれない、場所や店の箱が変わってしまうかもしれない、多少時間がかかるかもしれない、でもなんとかしてやり遂げます!」と強い意志をお持ちです。

バーもストリートスポーツも、一見ハードルが高いイメージ。それを崩すような入口の場所、好きになる・興味を持つきっかけになれるような場所が、井原さんの目指す空間だそう。

「そういうことやってみたいと思っている子も少なからずいるはず。そういう人たちが集えて、仲間をつくれるような場所にもしたいんです」と、いきなりの困難に直面しながらも意気込みを見せてくれました。

様々な飲食経験を経て

井原さんは北海道小樽市の出身。父親の転勤の都合で東北各地を転々とし、秋田以外の5県は制覇済みとのこと。東日本大震災の当時は、仙台の飲食店で店長をしていました。

「ビルの高階にある店だったので、とても揺れましたし、お客さんや従業員の安全対応などに無我夢中でした。記憶にないほどですね」と当時を思い起こします。スパニッシュにフレンチ、イタリアンにメキシカンまで、様々な飲食店での勤務経験もあります。色々な料理の経験がデータとして蓄積されて、それらがミックスされたり、和風へのアレンジをしてみたり、地域の食材とマッチする工夫にも期待が膨らみます。

そんな経験から、自身の飲食店をいつかは持ってみたいという想いを抱いていたさなか、知人からとある人物を紹介されます。先にも出てきた志津川地区グランドデザインを手がけた建築家、隈研吾さんの子、隈太一さん。東京都神楽坂にて飲食店として使われていた隈研吾氏設計のトレーラーハウスを南三陸に移設し、なにか面白いことに使ってほしいという打診を受けました。

「仙台にはいろいろな飲食店がすでにあって、何をやっても被ってしまったり埋もれてしまう中、南三陸でだったら豊富な地域の食材を活かして、新しいものを生めそうと感じました。これまで暮らしてきたところも海辺が多くて、海のある町には縁があるなと言う気もして」。井原さんと南三陸の出会いでした。

何度か町へ足を運び、たこ焼きというイメージを得てからは、仙台のたこ焼き屋さんに勤め始め、バー勤務との掛け持ち修行を開始しました。どちらも朝までやっているようなお店で、1日の半分を働いて過ごすような怒涛の生活へ突入します。

「たこ焼きは作り方自体はシンプルだけど、実は奥が深くて、美味しいと喜んでもらえるような味わいにするにはいろいろな工夫が必要なんです」。

たくさん焼くことで経験値を積んだ井原さん。大きなたこ鍋(鉄板)だと場所によって火の回りも変わってきたりと技術も必要だそうで、最近ではだんだんそのコンディションも読めるようになってきました。

たこ焼きを軸に、市街地活性に向けて取り入れるのがスポーツとお酒。学生時代のサッカー部の経験や、ストリート系のカルチャーが趣味だった経験が活きます。バーでの勤務経験からお酒に関する知識も深く、「ワイン検定シルバークラス」「テキーラマエストロ」「ラムコンシェルジュ」と様々な資格も持ちます。

町に来て早半年

現在は志津川でアパート暮らしの井原さん、8月には戸倉の公営住宅へ転居の予定。下見を兼ねてドライブをよくしているそうです。

「移住前に思っていたほど不便じゃないし、今は比較的にぎやかな地区に住んでいるので楽しく暮らしています」。

仙台の街での暮らしから一転、海や山に気軽にアクセスできる環境も気に入っていて、休みの日は海水浴場でのんびりしたり、最近は田束山登山にも行ってきたとのこと。また仕事を越えて趣味でもある料理が、毎日の楽しみになっています。

町での心地よい暮らしの中でたくさんの人と知り合い、たくさんの発見を得て、どんどんやりたいことも増えてきているという一方、半年が過ぎ感じてきた悩みもあります。

「自分の中でまだよそ者感がぬぐえなくて、地域の中にもっと自分から入って行きたいと思っています。地域イベントに積極的に参加したり、すでに町内でスポーツの活動をしている人たちとコンタクトをとってみたり」。

体育会系のノリの中にいる方が性に合うという井原さん。

「見た目は少しおっかなくて、ストリート文化とかやっているようなチャラそうな人、だけどめちゃくちゃ良いお兄さん、みたいなポジションを目指したいですね。あとはイケイケの漁師さんと知り合って、仲良くなりたいです」と、確かに見た目は少しチャラそうですが、発言からは人柄の良さがにじみ出ます。町の若い子たちにとって、良いお兄さんとなってくれそうな人です。

今年度の目標をお伺いすると「まずは早く自分の思い描くスペースを始めたい」と、もどかしい気持ちを語ってくれました。

「今まで夜型の暮らしだったのが逆転して、身体がまだ慣れないですね。21:00の防災無線でスイッチが入っちゃうような。早く夜営業はじめたいですね」。

確かに、早く夜営業を始めてほしいですね。

活動に共感してくれて、一緒に空間づくりをしてくれる仲間も募集しているとのこと。

「1つスタートしたら、他にやりたいことがどんどん出てきそう。そういう時に、1人でも2人でも、一緒につくっていける相棒がほしいです」と、今後のますますの活躍も予感させてくれました。

これまで町にあまりなかった、「スポーツ交流拠点」「ファーストフード」「お酒を楽しめる場所」という3本柱で、志津川市街地のさらなる活性化を図る井原さん。町に暮らす老若男女、たくさんの人たちにとって喜ばれる空間になりそうです。

夏場は様々なイベントにたこ焼き屋さんとして出店予定だそうですので、まずは絶品たこ焼きを味わってみてください。

共感してくれた方は、ぜひ一緒に空間づくりを。みんなで楽しい町をつくっていきましょう。

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