大正大学の学生が自主的に企画・運営して実施した「南三陸スタディツアー2023~持続可能な取り組みを学ぶ旅~」。学部も学年も異なる学生12名は、極寒の2月、雪降りしきる南三陸で、いったい何を学び、何を感じたのかに迫ります。
防災・コミュニティ・森里海、南三陸は「学べる町」として最強の環境です。
南三陸町は、震災復興と同時に「学べる町」としてのノウハウを蓄積し続けています。震災前からおこなわれてきた自然と共生する取り組みや、震災以降ゼロから再スタートしたコミュニティ形成を通して、座学では到底得ることの出来ない感覚的・総合的な学びを提供するまち南三陸は、教育旅行など研修旅行での訪問者が後をたちません。学生にとっては「人生の価値観」をも変えることのできる、そんな魅力的な場所なのです。今回は大正大学の学生が企画・運営して実施した3日間のスタディツアーについて、その成果と魅力をお伝えします。
「防災ってなんだろう?」
大正大学の学生は、東京近郊の都市圏で生活する学生がほとんどです。テレビや授業などで「災害」「環境」「地域」と聞いても、津波も来ない、森も無い、隣近所との付き合いも希薄な都市部では、その言葉の本質はおろか、感覚を掴むことすら難しいのです。
ツアー初日は、「南三陸311メモリアル」での体験学習と、バスでの解説付きの町内視察を通して、「率先避難」の大切さや、日頃の「避難計画」の重要性を学びました。
戸倉地区にある五十鈴神社では、小学校の屋上は危険と判断して神社避難に変更したとっさの判断力や、二次・三次避難計画の重要性、老若男女が孤立した高台で一夜を過ごした苦労に思いをはせ、「自分だったら」どう行動していただろうか、と学生なりに意見や感想を出し合いました。
本来はメモリアルでの映像学習と祈念公園のみ訪問予定でしたが、映像内で紹介されていた五十鈴神社に「行きたい」という学生の意見から、訪問が実現しました。
「防災を自分事化する」とは
大災害に見舞われることの少ない都市部では、「津波」がどう怖いのか、「避難」という行為自体も、なかなか実感することができせん。そんな学生にとっては、現地を訪問することが防災の「自分事化」に繋がります。
どんなに災害に強い都市部であっても、ひとたび首都直下地震が発生すれば、建物の倒壊や火災、帰宅困難者といったリスクに見舞われるといわれています。少なくともこのツアーに参加した学生は、自分の街でも「率先避難者」となって、ひとりでも多くの命を救える存在になれればと感じました。
「伝えること」の難しさ
今回のツアーでは、後述のフィールドワークで学んだ事を全員の前で発表する機会を設け、質疑応答や意見の共有をおこないました。学習成果を「まとめて発表する」というプロセスを経て学びを深めることが目的ですが、3日間のツアーの成果を短い時間で人に伝えることは想像以上に難しいと感じました。
私たちの3日間の学びは、座学では味わえない「実際に参加しないと得ることが出来ない学び」であると自負しています。これは南三陸という町自体にも、同じ事がいえるのではないでしょうか。簡単には人に伝えることの出来ない努力や苦労を、少しでも「伝えようとしてくれる町」、それが南三陸町なのではないでしょうか。これからもこのご縁を大切に、スタディツアーという形で継続訪問したいと思います。
後編の記事では2日目に実施したフィールドワークについて、いったいどんな学びを得ることが出来たのか、3つの班に分けて具体的にご紹介していきます。
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(寄稿者)園部豊大
大正大学仏教学部3年、実家は真言宗豊山派の寺院、東京都出身。いま・ここ・自分をモットーに、大正大学では「鴨台観音さざえ堂御朱印浄書」等の学内活動に尽力している。中学生の時、朝ドラ「あまちゃん」がきっかけで東北沿岸部を訪れるようになり、高校時代は趣味の鉄道旅行に奔走。大学入学後は「サービスラーニング」や入試学生スタッフ等での学部や学年を超えた学びに興味を持ち、本スタディツアーでは有志団体の部長として活動。学生主体の学びを継続することで、人に「気づき」を与えられる存在になることが目標。